3見間違いじゃありません
「……という訳、OK?」
「……別に構わないけど」
何だか良く分からないけど、
それって‘賭け’って言わないような……。
数十分前、皆に連れられて、
どこに行くかと思えば普通の喫茶店。
「お前モテていいよなぁ、俺なんか
この間、女子に声かけてなんて
言われたと思うよ?」
……なんだろ?
「俺なんかこの間彼女に振られたし」
俺、どうしてこんな所で延々と級友の
悲しい話を聞かされてるんだろうか?
あ、もうコーヒー無くなった。
注文した方がいいかなぁ。
まだ終わりそうにないもんな……。
さっきからポケットのバイブが
鳴りっぱなしだけど、人と会ってる時に
携帯を触るのは好きじゃない。
だからといって他の人が触るのも
嫌だとは思っていない。
自分と他の人とじゃ価値観違うし
押し付ける事でもないから。
それに俺と違ってなにかその人に
とって大事な用事や用件かもしれないしね。
……でも、そういえば
女の子にそんな事された経験はない気がする。
取り敢えず後で返事すればいいか。
「―――そこでだ!」
「わっ?」
いきなりの鈴木の大声にびっくりした。
「我らが愛の伝道師こと
桐江直継君に是非、お手本を見せて
頂こう思いまして、ここにお招きした次第です」
「よッ!待ってました!!」
「はぁ……はぁ?」
ヤバイ、何の話だったっけ?
途中聞いてなかった。
「さて、桐江クン前をご覧あれ」
演技がかった大袈裟な仕草で
視線を誘導される。
俺達がいる場所から通りを挟んで建つ
建物は、門構えからしても立派で
いかにもお金持ちの子達が通っていそうな
雰囲気を醸し出している学校だった。
俺達と同じ私立といっても
格が違う感じで中々敷居が高そうだけど。
「……学校だね」
「そそ。
友禅北女学園、名だたるお嬢様校。
そこの子を落としてみせてよ」
「はい?」
脈絡が無い。
何時の間にそんな話の流れに
なっていたんだろ?
コーヒーのお代わりを頼んでた時かな。
「単なるゲームだって。
お前自分からあんまりいったこと
ないんだろ?
深く考えずに行ってみてよ。
俺達そういうノウハウ疎いからさ、
是非これを機にご教授賜りたいなって
話しさ、OK?」
「そうそう、桐江ちゃん頼むよ~」
石川や岡本が何を企んでるのか
知らないけど、と
3人の顔を見て内心溜息を付いた。
散々、女の子関係の愚痴を聞かされた
後じゃなんか断りにくくって。
「……別に構わないけど」
「よーし!いいね、そのノリ!」
いや、別にノッてる訳じゃない。
ただ、特別断る理由もなし、
最近じゃ自分からいく事は
無くなったけど、今まで狙って
落せなかった女の子はいないから
特に考えずにOKを出した。
「そうだな。じゃルール決める?」
「お好きにどうぞ」
「んじゃ……お、丁度向こうも下校時間
みたいだし、今から数えて10人目の子に
行って貰おうか?」
「了解、10人目ね」
「そ、もし生徒じゃなくて
教師でもいけよ?」
「大丈夫。
どんな相手でも必ず落とすよ」
「7……8」
「9!次だぜ、次!」
俺は三人がカウントダウンし始めた頃
再びコーヒーに口をつけながら
目を瞑っていた。
「10!……え?」
あ、決まったのかな。
「…………ええっっ!??」
ん?
顔を上げると皆が固まっている。
不思議に思って全員の視線の先を追い、
そして……俺も又、固まる一員と化してしまった。