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理由がいるなら、いくらでも  作者: 采且ウサギ
王子、大人になる
29/79

8真面目

「どんな子だろうな」


「ギリ十代ってとこで

大学生くらいでしょうか?」


ベレスフォード氏から俺だけで

大丈夫だと言われたものの

取引先のトップが来ると分かっていて

流石に一人で対応する訳にもいかず

同じ部の千葉さんを伴って来ていた。


今俺達の話題は無論今日来るであろう

日本人学生の子と十代CEOの事で

二人でアレコレ想像論に花を咲かせ

目的の店に到着。



店に入って俺達は一瞬足を止めた。


「え?」


クライアントが先に来ている……?


お茶でもしながら作戦立てるか、

ってノリで二十分以上も早めに来ていたのに。


この店はうちがよく打ち合わせに使う

顔馴染みで、いつもの場所をと予約していた

その席に通されているという事は必然的に

今日の取引相手、つまり

『Updraft=Faust』の関係者だ。


「千葉さん……先方さん

既にお見えのようですよ」


「みたいだな」



店の人に一応確認を取るとやはり

伝えておいた取引相手に間違いないとの事。


やられた……先に来られるとは

思わなかった。



「お待たせしてスミマセン」


足早にその後ろ姿に声を掛ける。


途端、その人物が

椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり

頭を下げた。


「いえ!自分が勝手に早く来たんです!

約束の時間までにはあと十八分余りあります」


「え?……あ、いえ」


そうですね、と思わず言いそうになったのを

無理やり飲み込む。


そして漸く上げられた顔に俺達は

驚いた。



若っ!


若すぎる。


着ているスーツが逆にその若さを

引き立てている。


ようは着慣れてない感全開って事。

童顔という訳じゃないけど

とても大学生辺りには見えない。



しかも――


「お久しぶりです」


「へ?」


そう言ってもう一度深々と頭を下げた

その顔に正直心当たりはなかった。


登場から挨拶の仕方、顔、もう

全て持っていかれてる。


これが掴みというなら君、何か

持ってるよと言いたくなる一連の流れだ。



(……ん?まて、今確か“久しぶり”という

フレーズが含まれていたような……??)


でも……会釈というレベルでは無く

しっかり身体を折り曲げたこの角度には

覚えがあるような……ないような。


うーん、思い出せない。


「いつも兄がお世話になっています」


兄?お辞儀……兄、お辞儀、兄?


このお辞儀の仕方……見覚え……



…………ある!!!!!!!!


「も、もしかして君、石川弟クンだったり

する?」


「ハイ。その‘弟’で合っています」


やっぱり!しかもこのマジメ口調

間違いない!


「石川 零一と言います」


「な、何で此処にいるの?」


「何でと言われましても、今日

『RーGG』の方と打ち合わせに

来たのですが」


「は?」


(えええええええ!?)


って事は『Updraft=Faust』の

唯一の日本人学生社員がよりによって

石川弟とか……こんな偶然ってある?



「知り合い?」



千葉さんが俺達のやり取りを

見ていて口を挟んできた。


「友人の弟さんです」


「ああ……それで」


俺はこの時の千葉さんの言葉は

“友人の弟”って意味だと思っていた。


(この子、高校生ですよ)


と小声で言うと普段動じない千葉さんさえ、


(……マ・ジ・か?)


と驚いた声で返答が返ってきた。

それでも表情に一切出てないところが

流石千葉さんだけれど。



あ、ヤバイ。


いくら知り合い、目下の学生といえど

これは仕事だ。


「えと、改めまして私、担当の桐江。

こっちは同じ部署の千葉です。

今回は弊社と取引頂きありがとうございます」


「千葉です。うちの桐江が色々お世話に

なっております」


二人揃って頭を下げ名刺を手渡した。


「わざわざご丁寧に有難うございます。

僕も生意気ですが名刺お渡ししても

宜しいでしょうか?」


「是非」


「それと僕は明らかにお二人より目下です。

しかもこういった立場で来てはいますが

未だ社会人としても確立してもおりません

故に、どうぞ敬語など使わないで下さい、

お願いします」


堅苦しい言い回しは昨日今日の

付け焼刃では無いのがその言動から

よく伝わってくる。


あの万事調子良い兄の石川とえらい違いだ。


長いので分割。続き明日0時更新予定。

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