2黒歴史
「なぁ、桐江。プライベートはどう?
変わらず不特定多数の女と遊んでる?」
「いや流石にもうそれは無いね」
「へーじゃ特定の彼女いんのか?」
「いた。でも最近別れたばっかり。
仕事の所為もあるけど長く続かなくて」
「仕事ねぇ……
お前が他の女の子にもモテるから
彼女として心配で、それがキツイんじゃね?」
「俺、そこまで適当じゃないよ。
彼女いる時は浮気は絶対してない」
「それとこれとは別ってことだろ?
お前はそう思ってても
女って邪推してくんじゃん。
見てくれが良すぎるのも良し悪しか……」
それからしばらく
仕事の事、学校の事、鈴木や他の悪友の
その後の話で散々盛り上がった後、
不意に石川がその話題を口にした。
「そいういえば、四堂って子、覚えてる?」
「え……ああ。何となく」
そりゃ覚えてるよ、忘れるわけがない。
あんな強烈な体験。
当時、ゲームと称して
小学生、しかも男の子相手に
恋愛ごっこみたいな事をして
本当、今考えてもどうかしてたとしか
思えない苦い記憶。
「あの頃はホント馬鹿みたいなこと
やれて楽しかったよなぁ。
お前は振り回されて大変そうで」
傍から見ていた分にはそりゃ
楽しかっただろう。
思い出したように笑う石川に若干の
殺意が芽生えそうになったけど。
そうだな……
確かに全てが悪い思い出ばかりじゃない。
最初こそあんな出会い方だったけど
俺自身、あの子といて楽しいと
思ったことの方が多かった。
就職してからは忙しくて
考える暇もなかったけど
どうしてるんだろうか。
四堂君と最後に会ったあの日から
一度も会っていない。
というか連絡先交換してすらしてなかったし。
「そうか、全然会ってないのか」
「うん。まぁそりゃそうだろ、
彼と俺とじゃ元々住む世界が違うしね。
向こうは年齢的には高校2?3?年生
くらいだよね。
勿論、向こうじゃとっくに卒業して
活躍してんだろうね」
「ふーん、そっか。
うちの弟とはたまに連絡取りあってるみたい
だけどなぁ。去年の夏休みは向こうに
遊びに行ったとか言ってたっけか」
「……へぇ」
そう……なんだ。
俺には連絡すらしてこないのに
学級委員長だった石川の弟とは会ってる?
あれ?俺石川の弟より存在的に下?
俺の事、好きだとか言ってなかったけ?
あ、そっか成程ね。
――それが原因だな、きっと。
良い思い出と勝手に思ってるのは
こっちだけで、向こうは違うんだな。
それこそ若気の至りって事で
黒歴史である俺とは関わり合いを
持ちたくないっていう訳か。
まぁ分からなくもない……
そもそもこっちだって本気になんて
してなかったし、あっちだって
きっと今頃は女の子と色々遊んで
忙しいだろうしね。
本当――懐かしい想い出だ。




