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理由がいるなら、いくらでも  作者: 采且ウサギ
王子、大人になる
22/79

1喫茶店

「では、この企画でお願いします。

期待してますよ」


「ハイ。こちらこそわざわざ

お時間を割いて頂き有難うございました」


散々、アレコレと注文を付けられ

やっと完成したと思ったら、

やっぱり最初の案に戻して欲しいと

言われて相手の会社までその書類を

届けて漸く了承にこぎつけた。



いつものことだけど、この会社は

絶対ギリギリまで企変を粘る割には

必ず最初が良かったと言うんだよね。


まぁ、流石にもう慣れたけど。



腕時計で時間を確かめて

自社にこのまま直帰で良いか確認を取り

OKが出た所でネクタイを緩める。


(喉渇いたな)


駅を出て暫く歩くとふと

少し先に喫茶店が目に入った。


(あそこで休んでいくか)


戻る前にちょとコーヒーでもと

その店に入ることにした。










「アレ?桐江じゃね?」





「え?」




「わーやっぱりそうか!?

メチャクチャ久しぶりじゃん!桐江」



偶然、店で遭遇した石川は

屈託なく笑って俺の席に移動してきた。


「本当久しぶりだね」


高校卒業して振りだから

一体何年経ってるんだろう?



「お前スーツ似合うなぁ。

……しかも相変わらずモテそうなツラしやがって。

今なにやってんの?」


スーツを着崩した感じは

同じ新社会人には見えない石川こそ

“お前なにやってんの?”と

聞きたいくらいだったのに先を

越されてしまった。


「ざっくり言えば広告代理店の部類かな。

セクションが多岐にあるから

結構移動あるんだよ」


「会社何処?」


「RーGG」


「うおっ!業界人?タレント紹介して!」


いつもこの会社名を口にすると

大概同じ反応をされるけど

石川も然りか。


「何言ってんの?

出来る訳ないだろう。それに世間が

思うほど良いもんじゃないよ、実際は」


「あ、やっぱり?

でもさー何か女優とかと知り合いになれて

遊びまわってる華やかなイメージあるけど」


「まさか、地味だって。

やたら忙しいし雑務だらけで

制作部署なんか徹夜で家に帰れない

とかザラだよ。

俺も入社一年目だから

覚える事多くて案件が重なると

0時回っての帰宅あるしさ」


「何?ってことは制作の方じゃないの?」


「営業」


「あーお前ウケよさそう」


「そういう石川は?」


「S商事」


「あ、良いね。名刺渡しとくから

何か宣伝とかあったら連絡宜しく」


「さっそく営業かけんのか?

抜かりねぇな」


とか言いつつ二人で今更ながらの

名刺交換、とついでにメアド登録。


名刺見て本当に“S商事”なんだな。

と言った俺の呟きを耳ざとく聞きつけて


『コネクション在りきで』


そう悪びれる様子もなく話すあたり

要領の良かった石川らしいと

つい吹き出してしまった。



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