19毎回タイトルに困ってるわけじゃありません
「その先生が……さ」
岡本がおずおずと何か言ってる。
「ん?」
「すっごい形相でこっち睨んでますけど?」
岡本の言葉を受けて指差す方に
振り向くと四堂センセイがこっちを
というか俺をピンポイントで睨んでた。
「あれ?とっくに帰ったはずじゃ?
学校は?今日は戻ってなかったの?」
今日で臨時講師は終わって
いつものように昼過ぎで帰ったと
思っていた。
声を掛けても無言が怖い。
「えーと、四堂センセイ?」
“先生”という言葉に反応した女の子達が
「え?え?先生?この子が?
えー何の先生なの?ヤダ可愛いぃ!!」
「私にも教えてーぇ」
四堂君を取り巻いてキャーキャーと
興奮で大騒ぎ状態。
暫し微笑ましく傍観してたけど、
四堂君が段々揉みくちゃにされる様子を
見ていられなくて助け舟を出した。
「もうその辺で解放してあげて、
俺達の大事な先生なんだ。
それに可愛さでは君達も負けてないよ、
遊びに行くんだよね?そろそろいこうか」
「もう桐江君てば、口上手いんだからぁ」
「口だけじゃないよ、試してみる?」
キャーどういう意味?とか悲鳴が上がる。
こういうあけすけな事にすぐさま反応して
くれるノリが面白くて言っちゃうんだけど。
「桐江……てめー独り占めすんな」
「そだそだ」
ヤバイ、また変なゲームに巻き込まれたら
大変だ……自重しなければ。
素でついポロって出てしまった。
俺も大概学習しないな。
「それに、子供いる前で卑猥な事
サラッといってんじゃねーよ」
あ、そうだった。
すっかり忘れてたマズイ!
「あーっと、今のは覚えなくて良い事だから。
と、さっきはゴメン、痛かったんじゃない?」
慌てて四堂君の頭を撫でながら
大人の会話だから気にしないでと
苦しいフォローを入れてはみたが。
てっきりウンザリした顔で見られてる
と思いきや、四堂君は何とも
形容し難い表情をしていた。
「四堂くん?
……じゃ俺ら行くけど、またね」
さてどこ行く?
そう鈴木や女の子らと話しながら
歩き出したその背に、
「Czekaj」
「え?」
「Kobieciarz!」
例の聞き覚えのある言葉を
叫んだと思うや否や
俺の手を引っ付かんで四堂君は走り出した。
「オイ!桐江!どこ行くんだ?」
「えーと、分かんない。
今日はパスって事で皆で行ってきて」
一斉に女子からのブーイングに対し
鈴木らの満面の笑みときたら……
「おう!女の子達は任せろ!」
そう言うと思ったよ。
所でどこに行くんだ?
グイグイ引かれるまま連れて行かれた所は
見た事も無い絶対人が来なさそうな場所。
「どうしたの?四堂君」
はぁはぁ息切れしている四堂君を
見ながら静かに話しかけた。
「驚いたよ、
この間から思ってたんだけど
……初めて会った頃と何か変わったね」
「アンタの所為だ」
意外な返事にこっちが驚く。
「俺?」
あーゲームの所為でってこと?
「その、ゲームの事は以前にも
謝ったけどやっぱ足りないよね、ゴメンね」
「違う。違わないけど違う!」
普段、理路整然とモノを言う彼には
不似合いなほど不明瞭な言い方に驚いた。




