18この学校大丈夫じゃありません
聞かなくっても分かる。
間違いない、これを仕組んだのは、理事長だ。
今の理事長一族が元々この学校を
設立したのと、私立ということもあって
かねてよりやりたい放題。
しかも関西人でノリが半端じゃない。
楽しいこと変わったこと大好き人間だ。
とはいっても、生徒からは絶大な人気で
斯く言う俺も嫌いじゃないんだよね。
だけど先生達はいつもお祭り騒ぎに
振り回され本当に大変だと
常日頃から思っていたが、
まさかここまでやるとは。
――いやマジでこの学校大丈夫かな。
頭真っ白のまま授業は終わり、
事の真相をと四堂君に何度も話をしようと
試みるものの野次馬に囲まれて近寄ることすら
ままならない感じで。
みんな物珍しい人事に夢中。
しかも本来の学校もあるからと
彼自身、昼過ぎにはもう此処にいない。
……参ったな、全然話せない。
そうこうしてるうちに残り一日と
なった日、漸く校門で彼を
捕まえる事に成功した。
「四堂君!やっと捕まえたよ。
明日で最後だよね?」
ゆっくり振り向いた彼はスーツ姿に
ランドセルという不思議な格好をしている。
「うん。時間限られてるし、
それ以上は無理だった」
「貴重な時間を削ってまで
何でこんな事してるの?
楽しみだったんでしょう?小学校行くの」
途端ニカッと笑って、
「それもちゃんとこなしてる。
こっちは別件」
「別件?」
「うん。
理事長とうちの父さんがたまたま知り合いで
学生にとって刺激になるから
ここの講師やってみないかって言われて来たら
たまたまアンタの学校だったって訳」
刺激どころか……。
「たまたま?」
「そそ、たまたま」
アレ?何か最近こんなやり取り
なかったっけ?
「それに、アンタ最近うちに来なくなったから
どうしてんのかなって思って」
「……そっか」
嘘が下手だね、四堂君。
さっき“たまたま俺の学校だった”って
言ってたのに、本当はわかってて来てくれたんだ?
頭は物凄く良いのに、駆け引きは未だ拙い。
でもね、そいうトコ凄く可愛いと思う。
「今日、学校早く終わると思うから
そっち迎えに行ってもいい?」
長い沈黙の後、小さく頷いてくれた。
今日最後の授業を終えて、四堂君が
帰っていくのを昨日みたいに
校門まで見送った、その放課後、
「あ、来た来た。桐江くーん!」
「イヤーン、久しぶりっ!」
見覚えある女の子達が校門で
こっちに手を振ってる。
「昼にさ、放課後遊ばねぇ?って
メールしといた」
得意そうに言う鈴木に岡本、石川両名が
“でかした”等と言っている。
「桐江も行くだろ?」
「そうだね、久し振りに遊びますか」
「おうおう、
あの理事長の訳わからん
遊びに一週間も付き合わされたんだ。
やっと解放されたし俺達も楽しまないと」
「しっかし例のチビッコ先生、凄かったな。
俺らあんなので遊ぼうとしてたとか
考えただけでゾッとするわ。
お前のゲーム、うやむやになってて
良かったぜ、マジで」
鈴木が呑気なセリフを吐く横で
俺と石川は顔を見合わせた。
全部、あの子に俺達の事バレてるって事
わざわざ今更言う必要なんか無いか。




