15もうゲームじゃありません
「……やっぱいるのかよ」
玄関で待っていた俺に対しての
今日の開口一番の四堂君の台詞は
言葉とは裏腹に苦笑さえ孕んでいた。
一見相変わらずの毒舌の言葉に
みえても以前とは比べ様にならない程
言い方も表情もやわらかい。
「えへ。来ちゃった」
「えへって……男でもソレ使って良いのか?」
「さぁ、どうだろうね?」
「ったく、アンタが言うと妙に
しっくりくるから何か腹立つな」
ゲームは投降した、と告げてからも
俺はこうやって毎朝彼のお迎えに
参上している。
理由は二つ。
これまでの謝罪。
そして、四堂君と友達になったという
俺なりの表明行動。
「三つ目が真意だろ?」
「三つ?」
「うちの母親目的」
「ハハハ、ないない」
「どうだか」
四堂君の中で俺は無類の女好きに
なってるんだろうな。
……それ自体は間違ってないけど。
「来るの迷惑?」
「そう思ってたらとっくに学校行ってる」
「待ってて……くれてるって事?」
「ホラ早く、遅刻する。
アンタの高校の方が遠いんだから」
この質問には答えないんだね?
ホント可愛いな。
しかも俺の方の遅刻の心配とか
何気に嬉しいんだけど。
「あ、アンタ……」
「え?」
「わっ!!痛っ!!」
「そのまま行くと電柱にぶつかるって
言おうとしたんだけど……」
――そういう事、
早く言おうね?四堂君。
「こっち見てニヤニヤしてるから
言えなかったんだよ」
そんな顔してましたか?スミマセン。
ぶっきら棒にいう言い方が照れてるのか
呆れているのか未だ判断に迷う。
俺が頭を擦っている間、気の所為かも
しれないけど、彼は何か
言いたげにこっちを見ているようで
それも少しだけ気になった。
学校行事の為、授業が早めに終わった足で
久々彼の下校時間に間に合う事ができた。
「じゃ、またなー四堂」
「バイバイ、四堂くん」
その光景を見て思わず笑みが零れる。
校門出て暫くしてから
俺を発見したその目が一瞬戸惑っていた。
道すがら学校の話や他愛のない話を
しつつ、珍しく公園に寄って行きたい
という申し出を断る筈もなく従う。
そこは割と大きめの公園で緑に囲まれた
良い感じの所で、もう少し早い時間なら
きっと親子連れで賑わってる事だろう。
時間帯が夕方に差し掛かってる事もあり
流石に人も疎らで、ジョギングしてる人や
犬の散歩の人にシフトチェンジされてる
ようだけど。
ベンチに腰掛ける彼に続いて
その横に座った。
「学校楽しそうだね?
友達沢山いるみたいで何より」
笑った俺を不雑そうに見返す彼。
「四堂君、この間から思ってたんだけど
何か俺に言いたい事あるの?」
「それはこっちの台詞だ」
「え?」
「何をした?」




