14誰しも悩みがないわけじゃありません
前から思っていたけど
一体どこからの情報?
なんかその場にいないと得られない
個人情報満載だよね?殆ど。
そう石川に詰め寄ってやっと
「俺の弟が同じクラスなんだよ、実は」
と暴露されたのが数日前で。
それから、初めて四堂君の
口から真実を教えて貰ったのが先日。
で、今日再び石川との昼休み談合。
無論、聞いた事の全てを
石川には話した訳じゃない。
俺だけに明かしてくれた
彼のプライベートを他人と共有する
つもりはなかったから。
「んで、うちの弟さ真面目じゃん、
俺とは違って。
学級委員長だから先頭きって
仲良くして欲しいと担任達に
頼まれて他の奴よりは少し
多めに情報を貰ってるらしい」
ああ、確かに前にあった時
深々とお辞儀された記憶あるかも。
あの子か……。
兄の石川のテキトーにしながらも
絶対に赤点を取らない要領の良さ
で世渡りしていくタイプではなく
出された課題は絶対自力で解くだろうと
思わせるには十分な印象が残っている。
「四堂君だっけ?イジメられてるとか
そういうのじゃなくて、
弟曰く、浮いてるんだと」
「浮いてる?なんで?」
「ホラ、子供心にあるじゃん。
コイツ何か自分らと違うって。
ただでさえ、六年の二学期からいきなり
転入してきてるんだぜ?
もう周りは固まってるってるから
そら、浮くわな」
「へぇ?」
見た目凄いキレイな子だから
女子とかに人気だろうって
思っていただけに意外だった。
「しかもな、
家から一応学校側には留学の事とか
箝口令をお願いしてたみたいだったけど、
担任がたまたま休みだった時に
副担が英語の授業中、
『四堂くんはアメリカ帰りで英語
ペラペラだから発音してもらいましょう』
とか、うっかり言ったみたいで
教室中がザワザワってなって」
その光景が頭に浮かぶ。
うーん、隠していた事をいきなり
皆の前で言われた時の心情って……。
「英語喋れるとかさ、
俺達みたいに中・高とかになれば
必須だし、教えて貰えればラッキーとか
お近づきになりたいとか思えるかもだけど」
「…………うん」
「小学生って妙な仲間意識が強すぎて、
突如現れた余所者って意識しないフリしつつ
凄い観察するじゃん遠巻きにさ。
それでいて仲間にも入れ難い、まぁ
子供なりに色々あるわけよ」
なんとなく分かる。
「英語の授業、それから一言も
喋らないそうだぜ」
「…………」
その副担ちょっと問題じゃないのか?
と思わずにはいられない。
石川弟曰く、悪気はなくって
全ては皆に馴染めるように配慮しての事
らしいけど……。
聞いてる限りじゃ
多分全部裏目に出てる気がする。
ちょっと四堂君にとってキツイな。
「放っておけばれなりに上手くいくこと
だってあるだろうに変に情報ながすから
おかしくなってるんじゃないのかな」
「弟は四堂君とやらを気にしてるみたいで、
いつも構ってるみたいだけどな。
てか、お気に入りっぽいな。
真っ直ぐで良い奴だって家でいつも言ってるし」
「そっか、弟いい子だね」
ちゃんと見てる子が一人でも
いるっていうのは唯一の救いか。
「兄から見てもそう思う」
……にしても、
彼は俺が想像していた以上に
大変な思いをしてきたんだと思う。
向こうでもこっちでも。
支えてあげたいな……。
俺、何か力になれないかな?
今まで不謹慎な接し方をしてた
そのお詫びににもならないけど。
気になるんだよね。
だから、
「石川。降りるよ、このゲーム」
「あー負け認めんの?
ま、小学生の男じゃなぁ、OKOK。
じゃ今度女の子とのコンパの
セッティング宜しく」
「了解。いくらでも」
四堂君にもいずれちゃんと
謝らなきゃな。
それから―――
それから……。




