10興味本意じゃありません
「彼のお母様と仲良いんだって?
流石は、桐江ってとこか。
相手間違えんなよ?」
横に座り込んで石川はパンの袋を開け
一口で半分近くかぶりついた。
「迎えに行った時、たまたま話してる
だけだし、ちゃんとお父さんとも
面識あるからご心配無く」
「まずは両親からって訳?
外堀を埋める手を使うとか、凄いな」
褒めてるとは言い難い適当な言い方。
「てゆーかさ、桐江ギブしないの?」
「していいの?
それ、自分達が困るんじゃない?
噂じゃ女の子達とかなり遊んでる
って聞くけど?」
俺の言葉に途端ゲラゲラ笑い出した。
「困る困る、すっげー困る!
お前に相手にされないって女がこっちに
流れてきて俺らもウハウハなんだから」
「石川っ!」
「バーカ。んなわけねーじゃん。
俺達そこまで悪人じゃないって。
今回の事はお前を少し困らせてやろうと
いう目的があったのは確かに否定しないさ。
一人の女落とすなら流石に
そっちに集中してくれるだろうし。
加えてお嬢様と知り合いになれる
橋渡しになってくれれば
漁夫の利もあるかなって軽く
考えていたんだわ。悪かったな」
驚くこともない、
良くは思われないって事くらい
初めから分かってた。
「だけどさ、まさかあんなの
出てくるとか思わねーじゃん?
こっちもとんだ誤算だぜ?
アイツ等の手前お前にギブしろとは
言えないけど、別に恋愛しろとも
頼まねぇよ、降りるのは勝手だ。
桐江、お前だってこれはゲーム、
そう割り切ってんだろ?」
笑いながら言う石川に不快感を抱く。
「…………」
釈然としない。
子供巻き込んでゲームとかいう時点で、
罪悪感が常に脳裏から離れない。
その中心にいるのは他ならぬ
俺自身だというのに。
「まぁ、イイじゃん。
あ~~これが同じ男子高生とかなら
別の意味で面白い展開に
なりそうだから、煽るけど。
いくら普通じゃないっていっても
子供じゃなぁ」
石川は、まだ自分が墓穴掘った事に
気が付いてないみたいだ。
彼に特別な何かがあると
今、そう口にしたのを。
「うん、普通じゃないよね」
すかさずそこを付くと、
「……あ」
あっけなくしまったという表情を見せた。
しかし、それは一瞬で、すぐさま
元のポーカーフェイスに戻る辺り
食えない石川らしい。
「その彼、昨日のテスト問題の間違い箇所
チラ見しただけで即答きたんだけど?」
既に観念したのか、今度は
顔色を変えずに、大口でパンを
かじりながら、だろうなとだけ答えた。
俺がすんなり引かないのは
プライドというより……。
「そろそろネタばらし、
してくれて良いんじゃない?
――――彼、何者?」




