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ユリスの花嫁と魔騎士  作者: 椙下 裕
第一章 異世界へようこそ
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 私がどうしてこの世界へ来たのか。どうやったら帰れるのか、誰に連れて来られたのか。

 

 レイがあんまり自信満々に持論を展開するもんだから一瞬そうだったらどうしようとか心配になっちゃったんだけど、冷静になって考えればそれはないよね。私怨に利用される為だけに連れて来られたなんて。

 そんなの私が不憫過ぎるもの、有り得ない有り得ない。

 

 私の使命とやらを見つける手っ取り早い方法は消去法だと思う。今出ている候補の中から可能性の低いものから順に削っていくのだ。

 そんなわけで、この国の生きる歴史書ことソレスタさんにお話をお聞きしました。

 

「神以外が異世界から人を呼び寄せる方法? ないわよ、そんなもの」

 はい、レイが自力で私を連れてきた説消えた。ディーノお疲れ様でした。

 ほら見た事か! ふふんと勝ち誇る私をソレスタさんが不思議そうに見ていた。

「ディーノかレイ辺りに妙な事言われたのね。気にしないのよ、あいつ等デリカシーなんて持ち合わせてないんだから」

「ほんっとですよね!」

「それに……これはアタシの意見だけど、仮に神を介さずに異界から人がこちら側に流れてきたとして、それは只の人よ。聖剣に触れる事も他者に力を与える事も出来やしないわ」

 私がレイに施したのはユリスの花嫁だからこその力。だから貴女はそんな心配しなくていいのよ、と言われた気がした。何百年も生きるこの美青年には私の悩みはちっぽけで、分り易過ぎるものなんだろうか。

 それなら、ともう一つ質問してみる。

「じゃあ、聖騎士以外がユリスに願って、こっちに人を送ってもらうっていうのは?」

 ディーノの案は却下されたので次はレイのを。ちょっと身を乗り出す。

 ソレスタさんは顎に手を添えて暫く考えていた。

「これまで何度かユリスの花嫁を召喚したとか、自分こそが異世界から来たとか言い張る輩は稀にいたけれど、当然全て偽だったわ。でもその中には実際に空間を繋げる事には成功している者もいたし、きちんとした手順で儀式を行っていた者もいた。だから召喚に最も必要不可欠なのは聖剣だろうとアタシ達は踏んだんだけど……実際のところは不明ね」

 神様の考えなんて所詮人間には掴めないのよ。なんて賢者様に言われてしまうと小娘の私には何も返せない。

 つまりここはグレーゾーンという事らしい。確信を持てなくて憶測の域を出ない。

「しかも今回は特に……」

「特に?」

「いえ、何でもないわ」

 何でもないってこたぁないだろーっ!? 分りやすく意味深な発言しやがって、気になるじゃないの!

 ソレスタさんの綺麗な白のローブを握りしめてグイグイ引っ張る。皺になろうが知ったこっちゃない。

 吐け、吐けー!

「や、やめなさい!」

 分かったから、言うから! と慌てて私を止めたソレスタさんは口元を手で覆った。

 揺さぶられて気持ち悪くなったようだ。結構軟弱だなぁ。

「まぁ貴女にも知る権利はあるわよね。いいわ、アタシが教えてあげる」

 バチコンとウィンクされたので、大袈裟に避けた。なんか良くないものが投げつけられた気がしたから。

 失礼ね! とぷりぷり起こる美形お爺ちゃん。


「この世界の人は光か闇、どちらかの属性を持って生まれてくるの」

「あ、レイに聞いた事あります」

「そう。それで聖騎士はそのどちらかの力の突出した人が選ばれているようなのよ」

 私もそうだし、基本神様っていうのは無属性なので聖騎士だからといって光属性の人ばかりが選ばれているわけではないらしい。どっちに傾いているにしろ、他者より大きな力を持っているのが条件だという。

「ディーノは光、レイは闇。それぞれ尋常じゃない力を持ってるわ。……どちらが聖騎士に選ばれても不思議じゃなかった。もうずっと幼い頃からあの二人は次に聖剣が現れたら聖騎士にならなければならない、そんな強迫観念を植え付けられて生きてきたのよ。選ばれなかった場合の末路は、知っての通り」

 過ぎた力を危ぶまれ、神殿の地下の薄汚い牢屋に閉じ込められた。

 あの牢は、入れられた者の魔力を奪う特殊な呪が張り巡らされていたようだ。ホズミが魔が満ちていると言っていたのは、放出されたレイの魔力が蔓延していたからだった。

 あのまま全ての力が奪いつくされたら……レイは死んでいた。

 もしも聖剣に選ばれたのがレイだったなら、あそこに入っていたのはディーノだったに違いない。

「でも結局選ばれたのはディーノって結果は出てたんだから、レイには聖騎士の資格はないですよね?」

「それもちょっと微妙なの」

 ソレスタさんは眉を下げて困ったように苦笑した。どう説明したものか迷っているのか、自分の口から伝えてしまっていいのか思案しているのか。

「……私をここに呼んだのがディーノじゃなくレイであってもおかしくはない?」

「そうねぇ、可能性としては低い、とは思うけど無いとは言い切れない」

 グレーゾーンだ。果てしなくグレーな男、その名はレイ。そういや髪の色もそんな感じだしな! 正確には灰というか銀なんだけど。

「グレーって何者なんだろう」

「グレーって誰よ」

「あ、間違えた。レイ」

「間違えようがないでしょうその二単語!?」

 にたんごってへんなたんご。あ、煮卵食べたくなってきた。日本食から遠ざかって久しい気がするなぁ。

 こっちの世界に来てそろそろ二週間が経とうとしている。

 カレー食べたいなぁ、あれカレーって日本食?

「ちょっと、今全然関係ない事考えてるでしょ」

「バレた! ちょっと飽きてきたのバレた!」

「人を呼びつけておいてよくもまぁ」

 ごめんなさいよっと。私足を負傷してて部屋から出られない身ですのでね。

 少しでも歩き回ろうものなら、目ざとい侍女様がチクチクどころかグサグサと小言言ってくるのでね。

 ルイーノは将来嫁姑問題が勃発しても勝ちそう。

 

 うん、色々と情報が頭の中に入ってきたのでちょっと整理してみよう。

 まずルイーノは最強。これは揺るぎない事実。後は

「私を召喚したのはディーノだと思われるけどレイの可能性も否めない。でもユリスを介さない限りはこちらに通って来れないので、牢屋に閉じ込められてて儀式を行えなかったレイが個人的な術で私を呼ぶのは不可能。つまり私をタダのレイの使い捨ての駒扱いしたディーノの予想大外れ! ざまぁバカディーノ!!」

「ハルちゃんの中のディーノの株が大暴落してるわねぇ」

「デフレスパイラル!!」

 今はディーノの事を考えれば考える程腸が煮えくり返りそうになる。まさに負の螺旋!

 ディーノの全財産つぎ込んで日本の景気に光を! もう私何言ってんのか分かんない!

 ふぅふぅ、エキサイトしてしまった。

「そうだ、あと一つ聞きたいの残ってたんだった。どこぞの人格破綻者が私が元の世界に戻れる条件は、レイかディーノのどちらかがこの世から消える事だと言いやがりましたが、これについてどう思います?」

「発言者に対する悪意が見え隠れする言い方ね……隠してるはずなのに、誰が言ったのか透けて見えるわ」

 そりゃそうよ、該当者なんて一人しかいないんだから!

 ディーノの株が下がったからって自動的にレイの方が浮上してくると思ったら大間違いだ。

「なんて言うか、極論過ぎて返事に困るわねぇ」

「あの人は、その為に私を連れてきたんだって言ってた」

「前にも言ったと思うけどユリスはバランサーよ、世界の均衡を保つのが役目なの。だからたかが人間一人の命の為に使いを送るなんて有り得ない、のだけれど……」

「だけれど?」

 溜めるなぁ。ソレスタさん焦らすなぁ。流石賢者。話術を巧みに操りよるわ。

 ごくりと唾を飲み込んだ。

「レイもディーノもお互い力が強すぎる。どちらかが失われるだけで、バランスが崩れるとしたら」

「そ、そんなに!?」

 見くびってたわ! あの人達ってそんなすごい力持ってたんだ!?

 一人は聖騎士だしもう一人は賢者の弟子だし、そりゃあ一般人とはかけ離れてるだろうとは思ってたけど。ソレスタさんから見てもあの二人は規格外らしい。

「もしくは、どっちかが死んだその後に起こる事態に備えてのユリスの花嫁なのかも」

「どんな事態!? 嫌だよそんな後味悪いの!」

 事後処理班って事ですか!? 絶対やだ、人が死ぬとかそんなの考えたくもない。

 自慢じゃないが、知人にも身内にも未だ不幸は訪れてないから、私はこの歳まで一度もお葬式にも行った事ない恵まれた人生を送ってきたのよ。

 そんなのはとても縁遠いものだと思っていたのに。

 またしてもレイの持論はグレーゾーンだった。マジでこれからグレーさんって呼ぼうかな。

 

「他に質問は?」

「今のところはない、かな」

 結局何が分かって何が分らないのか、それさえ分らないというややこしい状況はあまり変わらないけど。

 人に話して意見を聞いてみて少しすっきりした。

 優雅にソファに座るこの大賢者さんでさえ、曖昧な答えしか出せないこのイレギュラーな事態を、私なんかが謎解けるわけもない。名にかけるような親族もいません。

「また何か疑問が出てきたら呼びなさい」

 煌びやかに微笑んでソレスタさんは部屋から出て行った。あれでなかなか多忙な人なんだ。

 お忙しい中本日は本当にありがとうございました。

 

 さってと、今日のノルマは達成したな。うん、ソレスタさんの話聞いてただけで頭パンクしそうだ。

 これからどうしよう。

 ホズミの散歩がてら塔の周りをうろうろしてみようか、図書館で借りてきてもらった本を読破するか。

 どうするかはホズミに決めてもらおう!

 


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