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作者: VISIA
掲載日:2012/11/22

安眠できていますか?

 妻は夫の事が心配だった。



 夫は、いつも夜遅くに疲れて帰ってきて、起きて待っている妻とも会話せず直接寝室に向かい、眠るように死ぬのだ。



 そして朝になると、夫が自らセットしたスマホの目覚ましでヨロヨロと起き上がる。



 妻は夫の事が心配だった。



 ある日、妻は内緒で夫の会社に休みの連絡を入れ、夫のスマホの目覚ましを解除して、少しでも元気になってもらおうとした。



 それから半日が過ぎて、妻が夫の様子を見に行くと、いつものように夫はベッドの上で冷たくなっていた。



 妻は、夫のスマホの目覚ましをセットしてそろそろ起きてもらおうとしたが、スマホがウィルスの影響で全てのデータが消えてしまっていて、夫の目覚ましの曲を鳴らせなくなってしまった。




 その目覚ましの曲が鳴らなければ、夫は永遠に起きないのだ。



 妻が夫の目覚ましの曲をネット等で探して1週間が過ぎた頃、夫が出社しないのを不振に思った会社の上司が家を訪ねてきた。



 そして、妻の言動に不自然さを感じて強引に家に上がり込み、寝室で冷たくなり動かない夫を見つけたのである。



 妻は警察に連絡され、連れていかれた。



 夫は死因を調べられたが特定は出来ず、結局そのまま火葬されることになった。



 親戚の見守る中で棺桶の蓋が閉じられ、炉の中へ移されて火が灯されたとき、親戚1人のスマホの゛着うた゛が鳴った。



 夫の目覚ましの曲と同じものだった。



 そのとき親戚全員が、




「ぎゃああああああああ」




という声を聞いたが、誰もが鳴り止まない゛着うた゛の音だと思った。



 孫に設定してもらったという親戚の゛着うた゛は、止めかたが分からない高齢者達を嘲笑うかのように、激しく大音量でいつまでも鳴り続けた。



 その曲はインディーズのへヴィメタで、



「燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろギャアアアアア」




という単調な歌詞が、絶叫に近い叫び声で繰り返される耳障りな曲だった。
















 炉から出された夫の体は、右腕全体の完全骨格を残して殆ど灰となっていた。



 意思を伝えたいという気持ちの現れなのか、握られた手の中指が立っていた。

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