Dogging;1
あるいはたたかい
踊る踊るは殻の中。
希薄な軌跡の霧の中、彼らと僕らは触れ合って。
温さと冷さに煽られて、何時逸までもじゃれ合って。
先のことなど分からない、逆には未来を見れぬから。
さらば一粒飛沫上げ、命の川に跳ねましょう。
誰のものとも知らぬれど。
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<<アルビノ3、撃墜>>
<<フェイタルサイン。残戦力20%切りました。Linkage率低下。撤収を推奨します>>
<<敵性攻体反応、依然健在。AWAGDSからの通信強度低下。索敵へシステムリソースを優先的に廻します>>
<<敵性攻体反応、反応量増大。暫定戦力レート36:1。子機を使用しての単機撤退を勧告します>>
<<包囲ルート、狭窄していきます>>
<<子機4基の使用で方位314への暫定ルート確保可能。撤退可能時間カウント開始>>
<<Last3min>>
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あるいは意地だったのかもしれない。
'それ'に勝てないことは彼には、というよりも彼らに僅かに触れた人間なら全てが分かっていた。
けれど少なくとも彼は自らの意思で空を飛ぶことを選び取り、故に自らの意思以外のものに屈すことは他ならない彼自身が許さなかった。だから、彼は思ったのだ。他の連中が'それ'に勝てないと云うのだとしても、俺は諦めない、と。
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【AD2062.5.7 AM 5:26:36】
「こちらアルビノ2、現状での撤退は困難と鑑み、敵性攻体に対して出来うる限りの反撃を行う」
そう報告するも反応はなく、残り時間はカウントダウンを続けている。だが、彼には基より退く気などないのだから、その数字には何の意味も無いようだった。彼の目線が機械にその意思を告げるサインとなる。
<<Slave1-6,Standby>>
彼の視界に緑の文字が這えた。彼の乗るものは空を飛ぶもの。それが開発されて200と半世紀を経たそれは、最早人が動かしうる限界を超える機動をすら可能にしていた。よって人は人でないものにその制御を預けるようになり、人はただの付属物であるはずだった。しかし唯に一つもありえない機械の「反乱」を恐れた人間は、その首輪に人身御供の人を差し出した。すなわち、「誤作動」を起こさないための「エンジニア」を無人機と共に出撃させるようになったのだ。
その実それは足手まといにしか過ぎなかった。論理的に最適化されたそれら無人の手は相手が人類の作り出した航空物ならばその全てを圧倒することが出来るのだから。
しかし、だからこそ、時ここに至りようやく「エンジニア」はその意味を持つ。
'それ'らによって最初に制圧されたのは無人機たちだった。簡単に、いとも簡単に掌握されたそれらは'それ'らの手の先となり弓を引いた。ほんのわずかな例外を除いて。
<<Slave_mode assist>>
6機の無人機が敵へ向かっていく。同型の同胞へ。そうしてその場で唯一の異形たる彼が手足従え向かうのは、光点に溢れたる中心の空虚だった。
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もしくはこうせつ