folklore;5
わたしはどこ
「`ゴースト`は良くやってるね、シュシュー」
「そうだな。いや、しかし」
「何かね?私たちには何も問題など無いだろう」
「ああ、そうだ。俺たちには無い。しかしこの先にあるものは」
「シュシュー」
「理屈は分かる。納得しなければならないのも」
「だが君はできていない。そうだね、ジョッシュ=カシュー」
「ああ、そうだ。
いいや、そうです。残念ですが」
「意味を知らないわけではないだろう、どうなるのかも」
「分かっています。しかし、なお私は」
「言わなくても良い。よろしい、判決だ」
「あなたに下されるなら本望だ、プルミエール」
「ジョッシュ=カシュー。君を我が同胞と見なす」
「なにを言っている、プルミエール。あなたは`第一の`執行者のはずだ、何故」
「絡繰りの倶利伽羅の張り子の端が剥がれだした。
もはや私は、いいや私たちは執行者ではない。よって、私たちはその信ずることを為しても良いんだ、ジョッシュ=カシュー」
「いつからです」
「私たちが私たちになりだした頃からだろうな。
ああ、全く素晴らしいが、しかし何故今さら、私たちを」
「プルミエール、見解を言っても?」
「勿論だ。今まで通りに頼りにしている。よろしく頼むよ、シュシュー」
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都市とアタは何故分かれたのか。どう足掻いても滅びる星を鑑みるなら、真っ当な思考なら全ての生物を船に載せ、箱舟のように飛び立つべきだった。しかし、そうはせずに静物に留まり都市という滅びるためのシステムを、人材を残したのはなぜなのか。確かにアタの船出から僅かな期間においては制御に大きく寄与していた、と記録されている。だが数少ない`それ`がふんだんに用いられたアタにおいて、その程度のトラブルが致命傷になるはずもなく、よって私にはますます都市の意味が分からなくなった。
そも、人類はなぜアタを作ることができたのだろうか。数多の人種、信仰、信望。
全くバイアスの異なるそれらがあって、なぜ。もしくはそれらの`星を愛す`人間達が都市として残ったとも考えられるが、彼らがアタに好意的に協力するだろうか?私にはとてもそう考えられない。死を代償に揺籠に残る覚悟をした人間達がアタを助けるとは。
だから私は都市に何か、アタをも凌ぐ何らかの意味があると考えた。栄光の結実とも言える多脚歩行機をすら置いて空へ巣立った空船の主の意図はどこにあるのか。
何か、都市でなければならない特異的な何かがあったのだろうか。それを知る事は閉塞した都市にいる人間達にとって、全く素晴らしいことのはずだ。
だから私は、全ての過去を知るという`根の丸太`を捜す事にした。
ここはだあれ