Scene;5
ふってふられてふりまわし
2人にあてがわれた部屋はかなり立派なものだった。彼らの役目を鑑みれば当たり前といえば当たり前ではあったが、しかし`都市`において空間は最も貴重なものの一つで、故にその部屋はセントラルにとって最高級のもてなしに違いなかった。
「申し訳ないが相部屋で勘弁願おう」と、その部屋の前まで先導していたフラッグが言う。彼が開けた重厚な見た目のドアの先には、文化として絶えて久しい瀟洒な、手入れの行き届いたホテルの一室が広がっていた。
それだけすると、今時珍しい物理認識のキーを2人に握らせ、また後で、と去って行った。記録映像でしか見た事がないようなそのキーの役割を少しの思考の後に思い出してからその部屋を見渡すと、白とベージュを基調としたその部屋の内にはきらびやかなシャンデリアこそ無かったが、見事なしつらえの家具がちりばめてあった。
外を見る窓こそ無かったが、生活するのに必要がない程に高い、開放感のある天井。そうして地面へと視界を下ろすその途中にはほの明るく部屋を照らす、もはや失われて久しい電球。更に視線を下げると、重く汚れやすい、しかしそれ故に親しみの涌く、時を感じる数多年季の木の机椅子。その机上にひらひらと小さく燃える、`ウェスト`では遂に失われてしまっていた、火で香りを撒く麝香と蝋の-ご丁寧に使い捨ての-混ざりもの。足下に張られた落ち着いた暗赤色の絨毯の上には丁寧に磨き上げられた鈍色の金属のモニュメントが邪魔にならない程度に部屋の隅に置かれ、そうして驚くことには、その部屋にはベッドがあった。場所を食わない疲労分配器によって疲れを取る事が通例になっていた`都市`の住人の2人-特に都市の求めるルールを遵守するスペシャリストには-この横たわり身を休める家具はひどく無駄なものに見えた。
「嬉しいが、居づらいな、これは」
「まったくだな。いや、凄く気をつかわれてるのは分かるんだが」
「だが、こんな効率の悪いものがまだ残っているのだから、きっと何か理由があるに違いない」
モノはなんともいえない表情を浮かべると椅子に座り込む。すると、彼にしては珍しく驚いた表情をしてもう一つの椅子の腕掛けをトントンと叩き。
「イヌゴケ、存外いいぞ、これ」
と、呼んだ。その様子がまるで子供のようだったから、イヌゴケは笑ってしまった。
「なんだ?」
なぜ笑われたのか分からない様子のモノに、イヌゴケはまたくすりとしてしまう。
「いや、なんでもないよ」
とだけ返すと、勧められた椅子に座り。
「少し話さないか?どうせ明日から働き詰めだ」
背もたれに寄り掛かり、そんな風に持ち掛けた。
まいてまかれてまいちるの




