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Crust-接近-
12/25

conflict:3

飛んでいた。彼に写る景色とその認識、見えている数式がそう告げている。

眼下に地面。其れは彼方。それが24153ftなのだと、具体的な数値を伴い理解した。

彼が地で足を蹴る事を想像すると、それは任せたとばかりに背に出る(ほむら)で空叩き、正にその役に立つ速さで上の黒と下の白の狭間を駆け出した。

時間は迫る。急がなければ。

後ろには彼らがいる。彼と同じように背から火を吐き(あま)叩くそれらの姿は鳥のように見えた。鋭く尖った嘴を前に向け、黒く幅の広い翼をオオガラスのように堂々と後ろに広げるそれらは空を群れ渡り、彼が先陣をきる騎兵なのだとでも云うように見事なひし形の陣形を描いていた。

首輪(チョーカー)の綱を以てリンケージとは皮肉なものだと感じるが、どうやらその`綱`から伝わるに繋がれた彼らはパイロットを守る気など無いらしい。では何故ここに、と彼が思えば、見せるためだと返って来た。`それ`の特徴である主語の無い答にまた閉口-実際に口を開けてはいないのだが-し、彼は黙って仕事をすることにした。

その途端だった。網に水が落ちたように僅かな、しかし確かな何かの振動を感じた。直後、いいや同時に視界いっぱいを光が貫き、背後のひし形の三つが溶け落ちた。

貫いたそれの早さに追いつかなかった軌跡上の空が急速に濁り、そうして爆発が引き起こった。衝撃波は連鎖的に共振し、眼下に在った雲を残さず視界の端にまで追いやった。むき出しの地が目に映る。

これだけの威力をあの距離で受けて何故平気なのか。彼がそう思うなり。

≪変移成功≫

彼の脳裏にはそれが語られ、同時に目的の完遂-敵性機の殲滅-に最適の挙動が描かれだした。

同時にパイロットの認識する、知ろうとする全てはより具体性を帯びた抽象画に代わる。最初に見たのは自転と気象、或いは生物の巻き起こす気流だ。それは彼の目にはもはや薄く広がるヴェールのようだったし、同時にその内にあるあらゆる全ての粒と波の集合体だった。総ての色持つ万色の因子が一切の纏まりの無い、しかし人の理解せざるある規則を持つことを彼は見た。

そうしてそれら因子の彼方に、貫く光の残滓を辿り、その主を見つけだした。

それにパイロットが意識を向けると、それへ向けて自分から数多の色の波が飛ぶのを感じた。それは波が届く僅か前に球状の波を広げた。それは彼の出す波と押し問答を繰り返す。

≪lock on≫

それが戦闘開始の合図であると、いや、艦隊が攻撃され、自らがこれに載っている時点で戦闘はとうにに始まっていたのだと彼は理解する。ブレイク、の合図を待たずして背後の彼らは軌跡を鋭く代え、正面に未だ目視出来ない脅威へそれぞれのコースを取り始めた。

≪敵性飛翔体、化学レーザー発信器所持機を以後`ピアース`と命名。対象へのルート検索開始≫

万色の粒が波を象り、`貫く物`へ続く那由多通りの道を示した。


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