第1話
コミュ障&陰キャで素人なろう系作家の俺が小説家の卵が集まる某チャットに参加してみた
俺は素子電茶。
コミュ障で陰キャで、小説家になろうの底辺を這いずってる。
いや、這いずってるって言い方もなんか違うな。
這いずるほどの体力もないから、実際は転がってるだけだ。
で、さっきまで。
小説家の卵が集まるって噂のチャットに、勢いで参加していた。
「創作仲間がほしい」とか、そんな前向きな理由じゃない。
なんか寂しかったからだ。
入室した瞬間、画面が蠢く。
「よろしくお願いします」
「はじめまして」
あと、なんか可愛いスタンプ。
……なんだこれ。
俺だけ文化圏が違う。
酸素の濃度が違う。
陽キャの巣窟に迷い込んだモグラの気分だ。
みんな明るい。
声が聞こえるわけじゃないのに明るい。
文字から光が溢れるようだ。
反応が鈍いと思われたくない。
とっさに、
「よろしくお願いします」
と打ったつもりが、
「よろしくお願いsます」
になって送信されてしまっていた。
とりあえずログを見る。
大喜利?
主人公が絶対に言わない一言?
無理だ。
俺は即興で面白いことを言えるタイプじゃない。
じっくり練って、削って、書き直して、
ようやく“まあ読めるかな”くらいの文章になる。
大喜利なんていう、瞬発の暴力は持ち合わせていない。
だが、
黙ってるのも怖い。
空気を壊すのも怖い。
明るく振る舞わねば。
(でもなんも思い浮かばねえ……。)
スマホを握りしめたまま固まる。
脳内で何かが渋滞してる。
高速道路で事故が起きて、後続車が全部止まってる感じ。
いや、この例えも面白くないな……まあいいか。
その間にもチャットは流れる。
「○○ってw」
「そのワード強すぎw」
俺はただの見学者。
いや、見学者ですらない。
爺ちゃんちの壁のヒビくらいの存在感だ。
その比喩だと意外とあるな。
少しでも存在を示そうと空回りする。
空気をぶった切って自作品のリンクを貼ってみた。
勇気を振り絞って。
貼った瞬間、心臓が変な跳ね方をした。
……五分後。
PVは増えない。
まあ、そんなもんだよな、と諦めかけたところで反応があった。
微増した。
おお……読んでくれた……!
胸がじんわり温かくなる。
この瞬間だけは、創作やっててよかったと思える。
と思ったら、続けてメッセージ。
「ちょっと説明多いかも。そのわりに何言ってるかよくわからない」
刺さる。
いや、正論なんだけど。
正論ほど痛いっていう。
俺の心は豆腐なんだ。
木綿じゃなくて絹ごしのほう。
「うん、参考にします」
と返したけど、指は少し震えてた。
そのあと、チャットの流れは、また明るいテンションに戻っていく。
俺はついていけない。
いや、ついていく気力がもうない。
(なんか俺だけ浮いてる……)
(空回った……? 自己主張しすぎた……?)
(いや、してないか。むしろ何もしてないか……)
頭の中がぐるぐるして、
でもチャットを閉じる理由も見つからなくて、
結局、俺はこう打った。
「明日は朝から仕事なんで、そろそろ寝ますね。おやすみなさい」
無職だ。
眠くもない。
むしろ目は冴えわたってる。
でも、これ以上ここにいるのは、
なにかいたたまれない気がした。
布団に潜り込んで、スマホの画面を伏せる。
暗闇の中で、さっきの「おやすみなさい」がじわじわ恥ずかしくなってきた。
明日、日曜だぞ。
早朝から仕事がある奴がこの時間まで起きてるか?
ちょっと怪しかったよな。
でも逃げたかったんだよ。常連たちの光が眩しすぎた。
……明日、チャットを開く勇気があるかどうかは、明日の俺に任せる。
今日の俺には、もう無理だ。
カクヨムにも掲載してます。




