8. 午後の薬局と小さな笑顔
午後の静心堂薬局は、柔らかい日差しに包まれていた。窓越しに通る風が、待合のカーテンをそっと揺らす。外の世界は慌ただしいけれど、この薬局の中には静かな時間が流れている。
ドアが開き、母親と小さな男の子が入ってきた。母親は疲れた表情をしているが、子どもを優しく抱きかかえながら笑顔を見せた。「こんにちは、今日もよろしくお願いします」
「こんにちは。今日は○○くんのお薬ですね」私は笑顔で応じ、カウンターに座るよう促す。
子どもは少し恥ずかしそうにしながら、椅子に腰を下ろす。「今日はね、学校で忘れちゃったんだ……」母親が小声で謝る。
私は薬袋を取り出しながら声をかける。「大丈夫です、忘れた日は調整できますよ。今日は飲めるかな?」
子どもは小さく頷き、母親に手を差し出す。「でもちょっと、いやなんだよね」その声には、緊張と照れが混じる。
「じゃあ、一緒にやってみよう」私は子どもの目線に合わせ、笑顔を見せる。「このお薬は、○○くんが元気に過ごすためのお手伝いをしてくれるんだよ。飲んだらどんなことができるか一緒に考えようか」
母親も少しほっとした表情で微笑む。「そうね……ありがとう、今日も支えてくれて」
私はお薬を手渡しながら、服薬のタイミングや注意点を簡単に説明する。「朝は学校に行く前、夜は寝る前に飲むと安心です。眠気やお腹の痛みが出たらすぐ教えてください」
子どもは小さく笑いながら、手を伸ばして薬を受け取る。「うん、わかった」
母親も少し安心したように息をつき、子どもの肩に手を回す。「今日も一緒に頑張ろうね」
私はカウンター越しに二人を見送りながら、心の中でつぶやく。——こうして日常の中で、小さな一歩を支えることが、薬局の役割なのだ。
ドアが閉まると、静心堂薬局には再び静かな光だけが残る。午後の柔らかな時間は、今日も穏やかに流れていた。




