表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7.倒れる午後

午後静心堂薬局前、春の日差しは柔らかく街路を照らしていた。しかし、その光景の中に、ひとつだけ違和感があった。

歩道に、制服姿の男の子が倒れている。手には空の薬のシートを大量に入れた袋が握られ、顔色は青白い。吐き気で身体を小さく震わせている。

私は咄嗟に走り寄った。「大丈夫ですか!」

男の子は小さく目を開け、ぼんやりと私を見る。

「……薬……」声はかすれ、言葉にならなかった。

薬の空袋が大量にある。

——過量服薬。状況は深刻だ。

私は冷静に状況を確認する。

* 呼吸は浅く、脈は速い

* 嘔吐の可能性あり

* 近隣に人通りはあるが、通行人は遠巻き

「救急車を呼びます」私は救急要請をした。

「午後3時半、清心堂薬局前で高校生が倒れています。服用した薬の種類は睡眠薬と抗不安薬、量は不明ですが袋があります。呼吸は浅く、脈は速い、意識は朦朧」その間も男の子の肩にそっと手を添え、落ち着かせる。

「大丈夫、大丈夫だから。ゆっくり息をして」小さな声で繰り返す。彼女はかすかに頷くが、意識はまだ朦朧としている。

「お名前は?」「……優……」声が震える。

私は彼の頭を支え、吐き気があれば受け止められるようにタオルを準備する。「大丈夫、ここにいます。救急隊がすぐ来ます」

男の子は震える手で私の手を握った。「怖い……」その声には、薬だけでなく、孤独や過去の痛みが混じっていた。

数分後、救急車のサイレンが聞こえた。私は手を離さず、静かに安心を伝える。隊員が到着すると、私は状況を簡潔に説明する。「過量服薬、意識朦朧。服用した薬は袋に入っています」

男の子はストレッチャーに乗せられ、救急隊に連れて行かれる。手を振る余裕もまだないが、私の目をほんの一瞬だけ見て、かすかに頷いた。

薬局に戻り、深呼吸をひとつ。午後の光は変わらず差し込んでいる。しかし、薬局前での数分間の緊張は、静かに胸に刻まれた。

——薬局は、ただ薬を渡す場所ではない。ここは、誰かの命を守るための拠点でもある。一歩、一歩、少しずつ支えるための場所。

男の子が安全に搬送されるその背中を見送りながら、私は心の中でつぶやく。「怖くても、大丈夫。少しずつ、支えるから」

午後の静心堂薬局には、今日も静かな光と、誰かを守る時間が流れていた。

若者世代のオーバードーズ増えていますよね…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ