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6.家族がつなぐ薬

午後の静心堂薬局は、静かな空気が流れていた。棚の間を歩く足音、カウンターの紙の音、全てがゆっくりと耳に届く。

自動ドアが開き、50代前半くらいの女性が入ってきた。肩までの髪を軽くまとめ、淡い色のブラウスに落ち着いたカーディガン。少し緊張した様子で処方箋をカウンターに置いた。

「こんにちは」私は微笑む。「今日は息子さんの薬を受け取りに来られたのですね」

女性は頷き、目を伏せたまま少し息を吐く。「はい……本人は体調が悪くて、どうしても来られなくて」

私は薬歴を確認しながら、薬を棚から取り出す。処方は、リスペリドン と睡眠薬。統合失調症の患者として、量は標準的だが、家族が管理する必要がある量だ。

「服薬のタイミングや副作用について、少しお話してもよろしいですか?」女性はわずかに肩をすくめたが、頷いた。

「まず、毎日決まった時間に服用することが大切です」私はカウンター越しに説明する。「副作用として眠気や口の渇きが出ることもあります。もし体調に変化があれば、必ずメモを取ってください」

母親は少し眉をひそめる。「……でも、本人が拒否したらどうすれば……」不安そうな声が漏れる。

私は優しく答えた。「最初は本人も飲みたくない日もあるかもしれません。でも、家族のサポートで少しずつ習慣化できます。無理強いせず、声をかけながら見守ることが大切です」

私は薬を袋に入れながら、母親に提案する。「もしよろしければ、次回は診療情報提供書を持って再評価してもらうと安心です。薬の効果や副作用も整理できます」

母親はうなずく。「わかりました……ありがとうございます」

薬袋を受け取り、母親はゆっくりと薬局を後にした。午後の光が、彼女の背中を優しく照らす。

静心堂薬局には、今日も誰かを支える時間が流れている。患者だけでなく、家族も含めて。

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