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第7話 ウェーイ! きーもちぃー!

(三人称)


 国内の人間達は、その大半が同じ話をしていた。

 顔も名前も経歴も互いに知らない。

 そんな人々の会話は、同じ席で話しているかの如く噛み合っていた。


「おい、聞いたか? また侵略の話が出てるらしいぞ」


 去る場末の酒場で男が言った。


「タダの噂だよ。王様が健在だった頃も何度か出てたが、一回も戦にゃなんなかった」


 ある家の食卓で、老婆が言った。


「3人も王子様がいるのに、あの王妃様がしばらく代理するってんだろ?」


 そう首を傾げたのは、客と話す肉屋の店員。


()()()()()なぁ……」


 苦笑を浮かべるのは、貴族の学生。


「なぜ王子様達は即位されないんだろう? 上の二人は成人してるだろうに」


 それは、とある役所勤めの新人の疑問。


「あら? 王子様って成人一人以外まだ未成年じゃ無かった?」


 スコーンを客に渡すパン屋の女将が、瞬きをすると、


「何言ってるんだね? ()()だろう?


 ━━━━汚点の第二王子様だよ」


 ぐるりと巡り巡って、酒場の男がニタニタと笑った。




 ***




「竜舎があるのは首都から少し南下した街だ」

「つまり此処からだと首都を突っ切るか、迂回しなければならない、という事ですわね」

「ああ、俺としては最短ルートで迂回したい所だが、…………お前は何故俺から距離を取っているんだ?」


 今まで居た北の街から首都へ続く街道を徒歩で進む私達。

 その間には、人間3人分くらいの間があった。


 お宅が今朝おっしゃった『好き』発言のせいですが何か!?


 ……なんて馬鹿正直に言い辛ぇ!


「いや……ちょっと、そういう気分で」

「馬車に轢かれるぞ。もう少しこっちに寄れ」

「……ん」


 一人分縮んだ。

 その矢先、私達は複数の気配に囲まれた。

 ━━否、気配どころの話じゃ無い。黒服を纏った輩に、既に包囲されていた。


「「!?」」


 リシャに向かって、杖や剣。抱きしめられるように拘束された私の首には、刃物が添えられる。


「リシュアレン殿下……随分と腑抜けにならえたのではありませんか?」


 そう口にしたのは、私の首に刃物を添える男。


「フィーベルか……」

「はい、元お守り役不勢がハネムーンを邪魔してしまい申し訳ございません。ですが、王妃様が殿下のお帰りを首を長くしてお待ちなのです」


 その声はとても楽しそうで、申し訳なさなんて欠片も感じられない。


「あぁ、お分かりでしょうが、下手に魔法を発動させない方が宜しいですよ。このお嬢様の首が、大出血しますから」


 髪の毛越しだが、頭に口付けを落とされた。

 リシャの表情は一見冷たい━━いつも通りのもの。

 眉一つ動いていない。

 けど、冷気を感じるから、かなり怒ってるな。


 ……まぁ、私もだけど。


 ガンッ!!


 という訳で、マジバから銃を秒で取り出した私は片手で背後の男のこめかみを撃ち抜いた。

 有難う、わざわざ撃ちやすい(キスする)位置に(ために)持って来て(屈んで)くれて。


 周囲が怯んだ隙を見逃さずメッタ撃ちにしていく。


 スガン!! ガガガッ、ズガンガン!!


 ウェーイ! きーもちぃー!


「……おい、その武器!」

「ああ、結界? そんなの一番最初に解決してますわよ」


 魔法がある世界だ。

 そして魔法に結界は基本的に見えない壁。そんなもん(見えない壁)の跳弾を対策せず飛び道具開発など、全くもって愚の骨頂(ナンセンス)


「……お前、もしかして自衛出来た……のか?」

「舐めんな、出来るわ」


 嘘だろコイツ。初対面グーパンで日が経たない内に椅子でぶん殴られたのに、私の事か弱いお姫様だと思ってたの? 吃驚仰天するわ。


「……」

「リシャ?」

「何でもない。行くぞ……」


 魔法が無数展開されると、地面に横たわる十の死体が、地面の中に溶け込むように消えた。


「うわーお、完全犯罪が成立してしまった」


 凄い光景に、貴族言葉が完全に抜けた。


「放って置いた所で野党に襲われた者として処理されるだろうが、一応な」


 あの服装だったら、襲ったけど返り討ちにあった野党側じゃないだろうか?


 歩き出そうとすれば、手を握られた。

 不意に思い出される、さっきまでリシャを避けてた理由。

 顔に熱が集まって手を引こうとしたけれど、リシャの力の方が強かった。

 そりゃそうだわー! 見た感じ20歳超えてるもんねー……厳密には何歳なんだろ?


「リシャって何歳ですの?」

「急だな。24だが」


 私とは6歳差か。て言うか、想定より少し年上だった。


「おい、離そうとするな」


 あらま、私ってば器用。

 年齢の事に思考が行ってても、手を離そうとする羞恥心と行動力は健在だった。


「ごめんなさい、つい」

「……自衛が出来るなら不要かもしれんが、さっきみたいに人質に取られるのは……癪だ」


 ……あ。凹んでる?

 目線を合わさず、顔ごと逸らして言われれば、それくらい簡単に察せられる。

 私が人質に取られたの、凄く気にしてる。


「言っておきますが、初めて会った時のクラーケンのような化け物は、私の手に負えませんわよ」

「あんなもの、そう易々と出て堪るか」


 ああ、うん。やっぱりイレギュラーだよね。北の海の、しかもあんな陸に近い場所に何で出たのかなアイツ?

 ていうか、やっぱり目線を合わさないままだ。


 ……意外と可愛いところ、有るんだな。


 リシャが立ち止まった為、私も歩みを止めた。

 どうしたのかと思ったら、私の方を見てる。

 もしかして今の、声に出てた?


「すまなかった」

「!」


 へ? はい? 何が!? ていうかリシャって謝れるの!? ←失礼


 困惑していると、リシャの指先が首に触れて、その部分が温かく感じられた。

 あ、これ……治癒魔法だ。


「ナイフの先が掠っていたようだ」

「有難う、ございます」


 私はもうローブのフードを被り直しているから、見え辛かっただろうに……。

 細かいところ、よく気が付くなぁ。


 怪我したら今みたいにすぐ治してくれるし。

 歩調は合わせてくれてるし。

 野宿の時、手際良く自分の分だけじゃ無く、私の分も手伝ってくれるし。

 狩って来た獣の肉処理してくれるし。

 ていうか、魔法で洗い物系(食器も洗濯も)全部一瞬でしてくれるし。


 ……魔素処理だけアレなだけで、リシャ有能過ぎる。

 寧ろ私が頼りすぎでは?

 王子様に何させてんの? てか頻繁な魔素処理の一因、洗い物が絶対含まれてるよね?


「リシャ、ごめんなさい」

「何がだ?」

「己を顧みて反省しましたのよ。リシャには、いつも凄く助けて貰っていますわ」

「……急にしおらしくなると恐怖を覚えるな」


 シャラップ! と、思っても今は我慢だ。

 ここで感謝を伝えられないような女は、ハッキリ言って糞だ。


「━━いつも、貴方の魔法には助けられています。有難う」

「…………」


 え? む、無反応? ホワイ? 何故?

 あ、よく見たら無反応って訳でも無いか。目がほんの少し見開かれてる。


「ど、どうかしました?」

「…………俺が魔素を溜め込む毎に抱き潰されてる女から、そんな台詞が出るとは思わなかっただけだ」

「抱き……ッ」


 いやもう今更ですけど!? そんな直球で言うなし!!


「姫様、少々お耳に入れたい事が御座います」

「⭐︎¥@*+●◇*%#@!?」

「何処から発してる音ですかソレ?」


 ここ最近静かだった鏡が、際どい発言が出たタイミングで現れた事に驚いた私だが、咳払いをしてどうにか取り繕う。

 ゲフン! ゲフン!


「か……鏡、生きてましたの?」

「勝手に殺さないでください」


 いやもう本当に、丸3日は静かだったのだ。

 何でも私に鞍替え希望のアホの兄貴が執拗に私の行動を観察(ストーキング)しようとするので、セキュリティのバージョンアップで忙しかったらしい。妖精のセキュリティって何なんだ……。


「この先ですが、【3匹の子豚】が居ます」

「あら、夕飯と保存食に丁度良いですわね」

「いえ、ガチの豚ではありません。食べないで下さい」


 ガチの豚では無い【3匹の子豚】って……もしかして━━、


「ひゃん!」


 何故かいきなり、数メートル先の街道に女の子が転がっていた。


「ぃ……痛いですぅ」


 女の子座りで目を潤ませる女の子は、私と同い年が少し下くらいに見える。しかも、中々の美少女。


 だが、その頭には前方向にペタンとした豚の耳。


 成る程……。


「鏡。豚耳っ()の調理方法」

「アレ見て尚食べようと思うんですか? チャレンジブル過ぎるでしょう」


 (Si●i)は調べてくれなかった。

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