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第4話 いえ、どうやら姫様に鞍替えしそうですよ

(三人称)


「アレの行方は?」

「またしても撒かれました。王子殿下の魔力は妖精族にも勝るようでして」


 金とエメラルドの繊細な縁で出来た鏡に向かって問う女と、問われた鏡の中の男。


 妖精族は人族よりも遥かに魔力が多い。逃亡した人族など単純な魔法破り(魔力のゴリ押し)でも、手数の多さでも、何でも使って簡単に見つけ出せる。


 だが、彼らが探す王子は正に化け物と言って差し支えない程の魔力量だった。


 鏡の中の男は妖精族だ。

 彼は酷く苛立っていた。種族的に自分の方が圧倒的に優位なのに見つけられない事に。

 その上嫉妬で憤ってもいた。目の前の王妃は、自分では無くあんな小僧しか見ていないから。己の見目は良いと、彼は自負している。それに妖精族は長寿だ。この王子が面食いだと分かり切っているが故に、いつかは老いるあの人の子よりも己の方がやはり優れているじゃないか! と、1回付いた嫉妬の炎は、なかなか消えない。


 ━━━━どれ、今度こそ成功させてやる。あの王子の居場所を映せ。


 すると、奇跡的に王子の姿を鏡は映した……と、思った。


 映ったのは、黒檀のような黒髪に抜けるような白い肌を持つ、この世の宝石や美術品を全てかき集め固めたような、神秘的な美しさの少女だった。


 彼は呼吸が止まった。彼は美しい物が好きなのだ。

 少女を見た後では、途端に目の前の王妃が、酷く醜悪なガラクタに思えた。

 幸い、王妃は気付いていない。気付かれれば自分の今居座っている鏡は破られてしまうだろう。


 嗚呼、欲しいな。あの子が欲しい。しかしどうすれば手に入る? あの子は何者だ?


 欲しい欲しいと、醜い欲望がぐるぐる渦巻く最中、彼女の隣の男の姿を確かに鏡は捉えた。


 ━━ギリィッ、と。意図せず奥歯で異音が鳴った。

 またお前か……という気持ちが、彼を暴走させる。


 ━━━━絶対に殺してやる。幸いにもあの少女には、小指の爪ほども魔力が無い。王子は追えずとも少女は追える。


 少女を追いかける。王子は追い詰める。


 そして(王子)に、普通の死など与えてはやらない。地獄という地獄を味わわせてやる。


 彼は王妃に何か言おうとした。

 だが刹那、ジュッ! と。脳みそが焼け爛れる音と共に、彼の意識は真っ黒な場所に沈んだ。


「おや? またか鏡……最近よく話の途中で眠るのぉ」


 ただの壁掛け鏡となったソレの前から、王妃はピッタリと体のラインが強調されるドレスの裾を尾鰭のように、優雅に揺らして立ち去った。




 ***




「さーて……お楽しみの国落としについてですが……」


 人生で一度きりの初体験を終えて早くも数日経過。

 クソ王子ことリシュアレン・ノエリカ・サフィ。長いのでリシャと呼ぶ事にした男に、森の中(※小人は出ない)を進んでいる内に聞く事にした。


「リシャは王様になった後ドラゴン要ります?」

「王は兄がやる。……が、待て。それは軍で飼ってるドラゴンの解放か? それとも絶滅させるという意味か?」


 神妙な面持ちで聞き返されてしまった。

 解放出来るのか、へぇ……。

 こんな質問をしたのは、リシャの故郷であり私の性奴隷エンドを呼び込む悪き国━━セルテトリアフィノート国(舌噛みそう)が、史上最強と言われる伝説の生物……ドラゴンの調教に成功し、人を乗せられる個体を3体有しているからだ。

 一回だけ見た事があるけれど、ヤバいなと思った。

 まずサイズがでかい。人間一気に3人くらい丸呑みに出来るよねって思った。

 なのに滅茶苦茶早く飛ぶし、火とか毒を吹くんだよ。反則が過ぎる。


 戦車も飛行機も揃ってる私の国にとって、唯一邪魔な存在だ。だから先に消しておきたいんだけど……。


「人間に懐いてるドラゴンて、そう易々と懐いてる対象から離れられますの?」


 正直、解放なんて出来ると思って無かったから殺処分の方向で聞いていたのだが、生きたまま人の手から自由にしてあげられるならば、そっちの方が俄然良い。


「アレは魔法の角輪で洗脳しているに過ぎない。角輪さえ取れば簡単に逃げる。……俺のドラゴンがそうだった」


 実体験か。表情が暗くなったし……可愛がってたのかなぁ。


「聞かんのか?」

「残念ですが、貴方の過去にそこまで興味が湧くほどの情がございませんわ」


 1、2回……嘘です倍以上です。詳細は言える訳が無いが、同じ布団で寝起きしたからって、絆されたと思わないでほし━━とか思っていたら滑った。


「わっ!」

「お約束みたいな女だな」


 トンと、背後にリシャの体があり、抱きしめられるような形で支えられた。上から覗き込む笑みが、無駄に余裕があって優し気で、……ちょっとムカつく。


「…………有難うございます」

「このまま抱えてやろうか?」

「足を挫いたりはしていませんから」


 だから離してほしい。近いんだよ。

 でも良い匂いするな……いやいや、私ってば変態かよ。


「姫様って『おもしれー女』フラグ乱立させるの好きですね」


 止めろ鏡。急に出てきたと思ったら不穏な事を言うな。


「兄の干渉があった為、一応ご報告です」


 鏡の台詞に、リシャの目が鋭くなった。

 リシャには既に、鏡の妖精についての説明を済ませてある。


「兄はリシュアレン様に嫉妬の炎メラメラですね」

「熟女なんぞ喜んでくれてやるのに」

「いえ、どうやら姫様に鞍替えしそうですよ」


「━━はぁ?」


 地を這うような声が聞こえた。直後、


「ぐえっ!」


 ちょっとー!? 私の腹と肩に回した腕とか手に力込めないでー! 潰れる吐く死ぬー!


「リシャ……っ」

「すまん」


 腕の力が緩んだ。良かった。


「アレは美しい物が好きなんです。白雪姫様は、ガワだけなら冗談抜きで世界一ですからね。中身アレですけど」


 やっぱりこの鏡破ろうかな?


「姫様の追跡をしようとしたところで脳が焼け焦げましたから、その衝撃で忘れてくれていると良いのですが」

「脳が焦げても死なない妖精族って最強では?」

「人間や獣のように致命的な部位では無いだけです。まぁ、繰り返し焼け焦げればどんどんアホにはなって行きますけど」


 淡々と「もう底辺を限界突破したアホなので問題ありません」等と、鏡は凄い言葉をさっきから言い続けている。


「私は念の為もう少し妨害工作に徹しますので、姫様は引き続きリシュアレン様と森林デートをお楽しみくださいませ」

「デートではありません」

「あ、未来が見えました。右に進むとトロルEND(意味深)、左に進むと魔女狩END(意味深)です。じゃ!」

「不穏な予言だけ残して消えんなコルァアア!!」


『魔女狩END(意味深)』って何!?

 ていうか、どっちでもENDするなら進めないじゃん!


「……仕方ないな」

「へ?」


 気付くと体の向きを変えられて、リシャに真正面から抱きしめられる体勢になった。

 あ、やっぱり良い匂いする。これ好きなヤツ……なんて呑気にしてらんない! 何々!? 急に何なの!?


「瞬間移動を使うから、シッカリしがみつけ」


 いやあの! アンタもう抱え上げてるよね!?

 しがみ付くしか選択肢無いし! ていうか耳元でその声やめろ、いつもの癖で腰にキちゃう! って何考えてんだ私!?


「先に言っておくが、瞬間移動は魔力を大量に消費する。今夜は手加減出来んから覚悟しておけ」

「待て待て待て。今まで手加減してたの?」

「…………」


 ニッコリ微笑むだけのリシャに、顔が引き攣る。


 この直後について、語れる事はほぼほぼ無い。

 私達はセルテトリアフィノート国内に無事到達出来たが……、どんな大らかな女の子でも、最低5日は断固会話を拒否する仕打ちを受けたとだけ、言っておこう。


「白雪━━」

「…………」 ((プイッ


 使わないでって、使わないでって言ってのに……! ((ワナワナ


 途中で治癒魔法と浄化魔法、

 馬鹿みたいに使ってぇぇええ!!

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