第五話『敗北』
物語が始まる前にも、それぞれの物語がある。それを人は過去と呼ぶ。過去は消えない。変えられない。どこまでも追いかけてくるのだ。どのような形であっても、過去と向き合うまでは。
スタブレ 第五話
それは雨が街を静かに包んでいた日の事だった。傘のスピーカーで雨の音を聴くのが好きなその少女は行く当てもなく街を歩いていた。
『蜉ゥ縺代※……』
「……?」
そんな時だった。災害跡に近い公園で、不思議な声を聞いたのは。
普段なら災害跡地の近くは閉鎖されているが、今日はそうでは無かったらしい。いつの間にか迷い込んでいたようだ。
「どうしたの?」
声をかける。草木を掻き分けて公園に入ると、そこにはボロボロの鎧を纏った怪物が倒れていた。
あまりに現実離れした光景に誰もが悲鳴をあげるだろう。だがその少女は例外だった。怪物に駆け寄ると、自身の小さな鞄から包帯を取り出し、崩れかけている鎧の上からそれを巻き始めた。
『縺ェ縺ォ繧偵@縺ヲ縺?k?』
怪物が呻くも、少女は尚も懸命に治療を続ける。それに意味があるのかはもはや誰にも分からない。
「……手? 握って欲しいの?」
力無く持ち上げられた怪物の腕。その手には剣が握られていたが、少女は迷いなくその手の上に自身の手を重ねた。
「———っ!?」
瞬間、少女はあまりの冷たさに反射でその手を離す。触れた手は霜ついたように赤くなっていた。
『縺薙l縺ァ縺吶%しはマシになるか……』
「マシ? 何のこと?」
『……お嬢ちゃん、私の言葉が分かるのか?』
「何故か、急に」
『なるほど、こうすれば良かったのか』
怪物はゆっくりと起き上がる。ヒビ割れた鎧がカタカタと鳴っているが、包帯のおかげかまだ形を保っている。
「えっと……」
『ああ、すまない。……いや、こういう時はまずは礼を言うんだったな。ありがとう、助けてくれて』
「それは良いよ。怪我してるのに無視なんてできないし」
『お前は優しいんだな。皆はこの姿を見て、逃げて行ってしまったというのに。……お前は怖くないのか?』
「怖い? 何が?」
『私が、だ』
「見た目は確かにちょっと怖いけど、そんなの何でもないよ。きっと悪い人じゃないし」
『何故そう言える?』
「わたしの……直感かな。悪い人はもっと危ない感じがするもん」
怪物は困ったように俯いた。少女は焦って何か言おうとするが止め、口を開いて、また閉じてを繰り返している。
『……きっとお前が言うならそうなのだろう』
そう言うと、少女は安心したように笑った。怪物はそれを見て頷く。
『さて、お前に恩返しをしなくてはな』
「ええ!? いいよ、そんなの。そこまでの事はしてないし」
『そういうわけには。この星の民は“恩義には忠義で報いる”と言うらしいじゃないか。何もしない訳にはいかない』
随分と古風というか、偏った知識を持っているらしい。少女はこの怪物がいよいよどこから来たのか見当もつかなくなってしまっていた。そんな未知の相手から恩返しなどと言われても、困惑することしかできない。
困ってしまった少女を見て、怪物は思いついたように左手の指を立てた。
『ではこうしよう。お前が助けを必要とした時は必ず私が駆けつけよう。どこに居ようと、どんな状況であろうと、この恩に報いる事を誓う』
固まってしまった少女の手に、怪物はそっと自身の左手を添えた。
少女は驚いたように肩を跳ねさせたが、今度は最初に触れたときのような冷たさは無く、金属の無機質な肌触りを感じただけだった。
「……分かった。じゃあこれからは安心だね。あなたが見守っていてくれるって事でしょう?」
『ああ。必ずあなたの助けになってみせよう』
「そうだ、あなたの名前を教えて。もしあればだけど」
『……名前?』
「うん。わたしは沙耶っていうんだ」
『なるほど。であれば、確かに私には名前は存在しない。だから今、ここで付けよう』怪物は一呼吸置いてこう宣言した。『私のことはツルギと呼んでくれ。文字通りあなたの剣となり、必ずそのサヤに納まりましょう』
「ええ、よろしくね、ツルギ」
程なくして、包帯を巻いた怪物、ツルギはどこかへと去って行った。
後ろ姿を見届けたあと、少女も家路に着いた。見慣れない道に戸惑いながらも。
そしてその夜、空に穴が空き、何千もの剣が地上へ降り注いだ。まるで流星のように。
****
今日の教室は朝からやけに浮わついている。皆が何故かソワソワしている。星野はこの感覚をついこの間、体験したところだった。
「なんなの? 何かお祭りでもあるわけ?」
この雰囲気が初めてな如月は星野に不思議そうに問いかけた。星野が何と答えようか考え始めたタイミングで横から影が差した。
「また転校生が来るんだって、白刃ちゃん」
「意外とまともにやってる学校って少なくなってたりするのかな。こんなに来るなんて聞いた事ないけど」
神名と柊木が並んで如月の後ろから現れた。神名は座る如月の頭を抱いて撫でている。柊木曰くあれは“なでなでモード“と言うらしい。星野の理解からは遠いものだった。
「今度はどんな人が来るって噂なの?」
星野が問いかけると、柊木は前に出て星野に耳打ちした。
「あのね、白い髪の男の子だって。手に包帯してるって言ってたかな」
それを聞いて星野はある一人の人物を思い浮かべた。けどすぐにその可能性を否定した。そんなわけがない。どう見ても同い年なんて見た目では無かった。
「白刃ちゃんが来る時はもっとみんな落ち着き無かったんだよ」
「そうなの?」
「そりゃあそうだよ。黒髪美少女が来るって聞いて、ワクワクしない人なんて居ないんだから」
「悪かったわね、残念美少女で」
「そんな事ないよ。噂通り超可愛い子が来たんだもん」
神名の胸を枕にして如月はなされるがままにされている。
自分で自分のことを美少女と言うものなのかと星野は首を傾げていたが、すぐにそれ以上を考えるのはやめた。
「ほら白刃ちゃん、できたよ」
神名が如月に小さな手鏡を渡している。いつの間にか如月の髪型が変わっている事に星野は気付いた。
「あら、三つ編みおさげってやつ? なかなか可愛いじゃない」
「うんうん、白刃ちゃんはどんな髪型でも可愛いよ」
「そうだ」と如月はどこからかメガネを取り出してかけた。「やっぱりおさげにはメガネだと思わない?」
「わぁ、白刃ちゃん、メガネも似合うね」
神名は完全に全肯定モードに入っている。褒められて気分が良くなったのか如月は楽しそうに笑っている。それにしても何故誰もメガネがどこから出たのか気にしないのだろうかと星野は疑問に思ったが、とりあえず受け入れる事にした。
「おーい、席に着け」
そうこうしていると、教室に先生が入って来た。生徒たちは自分たちの席に戻っていく。
「みんなもう知ってるかもだが、また転校生が来たぞ。……よし、入れ」
先生の声に扉が開き、誰かが入ってくる。そして星野は自分の目を疑った。
その男はホワイトボードに自身の名前を書いて前に向き直って笑った。
「俺は神無月 剣人。よろしくな!」
服装が変わっただけでまるで別人のように映ったので、星野はもしかしたらと思ったがそうはならなかったようだ。
「如月さん、どういうこと?」
思わず隣の如月に星野は問いかけた。如月はしばらく放心していたが、「あ、忘れてた」と呟いた。そんなわけないだろうと言いたいところだが、事前情報が無かったあたり、本当に忘れていたのかもしれない。
「じゃあ神無月の席は……」
*
もちろん、転校生が来たら定番のイベントがある。それは転校生の周りを囲んで質問攻めにする事だ。如月の時はそんな雰囲気にはならなかったが、星野はだんだんあれは意図的だったんじゃないかと思うようになっていた。
それはさておき、神無月の場合は特に近寄り難い雰囲気も理由も無いので、休み時間になった途端に人だかりができていた。それを横目に如月は相変わらず席に座って本を読んでいた。今日は髪型も相まって特に文学少女らしい佇まいだ。
「あれ? 星野くん、今回は行かないの?」
そこに、柊木が星野の元を訪ねて来た。隣にいつも居るはずの神名が見当たらないと思って少し視線をスライドさせると、神無月と何やら楽しそうに話している姿が見えた。神無月は見るからに神名にデレデレな感じだ。
「いや、今回は大丈夫かな」
「そうなの? ……あー、まぁ確かに、あの感じなら大丈夫かも」
柊木もその姿を見たらしい。神無月はフレンドリーを体現したような人物だ。誰が見ても上手くやっていけそうだと思うだろう。如月の立ち振る舞いを見た後だと余計に。
「……ねぇ、如月さん。いつも何を読んでいるの? ずっと気になってたんだけど」
星野が如月の方を見ていたのを気にしたのか、柊木が如月に声をかける。如月は本から視線を外さずに素っ気なく答えた。「詩織先生の新作」
「あたしも興味あるんだよね。……そうだ。今日、一緒に本屋に行こうよ」
「は?」
如月は思わず柊木の方を見た。柊木はニヤリと笑う。
「大丈夫、愛理も連れていくから」
「そういう問題じゃ無くて」
「決まりだね。放課後にまた声かけるから」
じゃあ、と柊木は神無月たちの方へ行ってしまった。神名に今の話をするのだろう。如月はため息をつく。
「……如月さん、良かったね」
「何がよ」
「そうは言うけど、全然嫌そうじゃ無いよね」
星野が指摘すると如月は顔を赤くして目を逸らした。それを見て星野は自然と笑顔になった。
「あの二人なら大丈夫だよ。楽しんでね」
何故かこういう時に星野はお父さんのような事を言うなと、如月は複雑な気持ちになりながらも、素直に頷いた。
*
あっという間に放課後になってしまった。星野は結局、神無月に話しかけるタイミングも、如月に事情を聞くタイミングも見つけられなかった。
「白刃ちゃん!」
神名の声が聞こえたと思ったら、隣の如月が捕まっていた。あの泣く子も黙る包容力で掴まれたら、逃げるのは容易では無い。
「私は行くなんて一言も……」
「行かないとも言ってないもんね?」
「………」如月は黙ってしまった。
「星野くん、白刃ちゃんを借りてくね」
そのまま神名に半分引き摺られながら如月は柊木たちと行ってしまった。星野は手を振って見送った。
「そういえば……」
星野は神無月に話しかけるタイミングは今なんじゃ無いかと思い立ち、神無月の方を見る。と、神無月と目が合う。
「あー、いや、それはまた今度な! わりぃ、今日は先約があるんだ!」
クラスメイトから何か誘われていたらしい。クラスメイトたちが残念そうに教室を出ていくのを見届けた後に荷物をまとめた神無月が星野の方へ歩いて来た。
「待たせちまったか? ハジメ」
「ううん。むしろ、誘いを断らせちゃってごめん」
「何言ってんだ。このまま解散なんて、夢見が悪りぃだろ? 説明くらいさせろって」
「そうだね。……えっと」
「まぁとりあえず付き合えよ」
*
“流星の夜“で最も被害を受けたと言われている東都の中心地。そこから少し離れた場所。如月と星野が神無月を見つけた現場からほど近い住宅街跡地。瓦礫の山を見ながら星野は神無月と歩いている。
如月とのパトロールの中でも星野は感じていたが、この被害状況で“人的被害は少なかった“という報道は嘘なのでは無いだろうかと思ってしまう。それくらい凄惨な街並みだ。復興は絶望的と言って良いだろう。
「ここは俺の地元だ。少し前までは、この辺りに人がたくさん居たんだが……」
神無月は続きを話さなかった。この灰色の街からはとても想像できない。それに所々に折れた剣が突き刺さっているのが余計に嫌だった。少なくともそこが刃異人の墓である事は間違いないからだ。
「その、神無月、くん」
「剣人で良いぜ、ハジメ」
「……剣人くん」
「どうした?」
「如月さんから、剣人くんが戦うのは復讐のためだって聞いたんだけど、それって……」
「ああ、本当さ。その話をするためにここに来た」
神無月はふと足を止めた。まるでここが目的地だとでも言いたげだった。目の前には変わらず瓦礫となった廃屋ばかりだ。
「……ここが俺の家だった場所だ。剣が降って来た時はもう少し家の形をしていたもんだがな」
神無月は瓦礫を踏んで山の中に手を入れ、何かを拾い上げた。それは黒いシミが付いたぬいぐるみだった。
「これは沙耶の……妹のもんだ。もうこんなのしか残ってねぇ」
「なんと言うか、その……」
「気を遣わなくていい。あの時の俺が弱かったのがいけねぇんだ」
ぬいぐるみをそっと戻した神無月は自身の包帯が巻かれた拳に視線を移す。その右手には包帯越しにもわかってしまう歪な突起があった。
「俺は訳も分からずにあの怪物たち……バグって言うんだっけか? ……あいつらに殴りかかったんだ。他にも戦う意志を持ったやつらが何人か居て、そいつらと一緒にな。だが、みんなやられちまった。銃火器だろうが戦車だろうが、あいつらには全く歯が立たなかったんだ。……それが悔しくて、認めたくなくて、俺はそれでもひとりで戦い続けた。そんな俺を見るみんなの目が冷たくなっていくのが耐えられなくて、避難所からも飛び出して」
「……けど、僕たちと出会って、キミは力を手に入れた」
「そうさ! ずっと欲しかった力だ。これでようやく俺は、今を生きてるって言える。この力を使って俺はあいつらに復讐してみせる! ……そして俺は、俺が誇れる俺になる! 必ずだ!」
拳を天に掲げて神無月は高らかにそう宣言した。まるでそこに誰かを見ているようだと、星野も赤くなっていく空を見上げた。
「……だから、シラハには感謝してんだ。俺はアイツのおかげで生き返ったと言っても良い。学校まで行かせてもらって」
「ちょっと待って。それ気になってたんだ。どういうトリックなの?」
「そんな大した事じゃねぇよ。シラハが色々手配してくれたんだ」
「……まさか、学費とかも?」
「制服一式もだ。アイツの財力、どうなってんだろうな」
如月グループの令嬢。ついついその肩書きを忘れてしまうが、如月は謂わば良いとこのお嬢様だ。よく考えなくても個人持ちの人工衛星を所有している時点で格が違うのは明らかな事だ。
「俺は別にいいって言ったんだけどよ。学校とか別に行かなくても良いって。けどシラハが絶対に行けってうるせぇんだ」
「それで、ウチに?」
「まぁどうせ行くなら、せっかく知り合った奴が居るとこの方が良いだろ? ……ま、シェルターから通える学校なんて限られてるけどな」
なるほどと星野は心の中で頷く。てっきり神無月を監視する目的もあるのかと思っていたが、行く学校の選択権を譲渡しているあたり、その線は薄いと考えられる。彼女なりの気遣いなのだろう。
「出してもらう以上、俺に拒否権はねぇからよ。ま、そんなわけで、遅くなったけどよ。これからよろしくな」
「うん。僕にも手伝える事があったら言って欲しい」
「ああ、頼りにしてるぜ」
瓦礫の上の神無月と星野はグータッチをする。これまでの男友達とはどこか違う、深い絆を星野は感じていた。
「さて、感傷に浸るついでに、俺の地元を案内してやるよ。ガイドが居なきゃ、このあたりの景色は変わり映えしなくて飽きちまうからな」
皮肉を言いながら神無月は瓦礫の山から降りて歩き出す。星野はその後をついていく。
通りを出て広い道を横切ると、また別の住宅街跡が広がっている。どこへ向かっているのか星野には分からなかったが、神無月は迷わずに進んでいく。
「禁止区域って本当に誰も来ないんだな。車一台通りゃしない」
だがそこで、星野は風の音に混ざる金属音を捉えた。如月とパトロールに行った時に聞いた音とはまた少し違う。規則的で軽い音だ。
「待って剣人くん。何かいる」
「あ? 何かって……またバグか?」
「分からない。行って確かめてみようよ」
「良いぜ。そういう積極的な行動は好きだ」
星野は音のする方へ進んでいく。神無月がついていく形だ。路地を抜け、やがて大きな公園が見えてくる。何か聞こえてくる。
『女皇陛下のために! 人類共生のために!』
数十の刃禺が踵を踏み鳴らしている。金属音は鎧の擦れる音だったようだ。一定の間隔を空けて整列し並んでいる刃禺は、まるで兵隊のようだった。星野は物陰からその奇妙な光景を観察していた。
「なんだありゃ。バグってやつはあんな事もすんのか?」
「いや、あんなのは見た事ないけど……」
「てかよ、アイツらってあんな流暢に話してたか?」
「あれ? そう言えばそうかも」
「女皇陛下? なんのことだ?」
星野には見当もつかなかった。如月に聞いてみるしかないだろう。静かに首を振った。
「……まぁどうでもいいな。倒しちまおうぜ」
「え? いや、でもあれは新種だし、一度帰って如月さんに報告した方が……」
「あ? 新種だぁ?」
「これまでの刃禺はもっと怪物って感じだったけど、あれは背筋も伸びてるし、鎧も少し違う。それに流暢に言葉を話してる」
「だからなんだよ? バグに変わりねぇんだろ?」
「いや、でも……」
「はっきりしねぇなぁ! もういい、俺ひとりで行ってくる」
「あ、剣人くん!」
神無月は物陰から飛び出して、並ぶ刃禺の前に立った。突然の来訪者に刃禺たちは動揺している。
「———トーラス!」
空へ叫ぶと、大剣が真っ直ぐに神無月へ飛び込み、神無月の手に収まった。
『その刃の輝き! それも噂の星剣だと言うのか!?』
「うるせぇ! バケモノ風情が、人の言葉を話してんじゃねぇ!」
『ちょっと待て! 言葉が通じるなら話し合いの余地がある!』
「無ぇな!! 全く無ぇ!!」叫ぶと、神無月は星剣を空に掲げた。「———イグニッション!!」
瞬間、光が空を裂き、神無月を包んだ。暴風が刃禺たちを怯ませる。すぐに光が収まり、灰色の剣士が姿を現した。
「お前らは滅ぶべき、人類の敵だッ!!!」
大砲の弾のように真っ直ぐ刃禺へ突っ込んだトーラスは、その大剣を勢いのまま振り下ろす。
激しい金属音が鳴り、直撃を受けた刃禺が吹き飛ぶ。土煙をあげて転がっていく刃禺を見て、他の刃禺たちも諦めたように戦闘態勢に入った。
「———ぉぉおおおおおッッッ!!」
再び大剣が振り上げられる。恐ろしい速度で迫るトーラスを相手に、刃禺たちはなす術もない。星野は見ていてそう思っていた。
———ガキンッッッッ!!!
「なッ———」
『我らとて、倒されるわけにはいかんのだ!』
振り下ろされた大剣は刃禺の二本の剣で受け止められていた。刃禺同士が連携し、刃禺二人分のパワーでトーラスを抑えて見せたのだ。
『女皇陛下のために!!』
そしてトーラスの剣が弾かれる。大きくのけ反り、刃禺相手に隙を見せてしまう。
「———イグニッション!!」
星野は既に前に飛んでいた。
刃禺の様子がおかしい。これまでの刃禺とは異なる行動をしている。それに気付いた星野は悪い予感を信じてレオを起こしていたのだ。
別の刃禺がトーラスの懐に潜り込んだのを星野は見逃さなかった。
「させないッッ!!!」
星野は身体ごと刃禺に突撃し、トーラスから無理やり引き剥がした。その隙になんとかトーラスは体勢を立て直し、刃禺たちと距離を離すことができた。星野はさらに刃禺を突き飛ばしてトーラスと合流する。
「悪い、ハジメ! 助かった!」
「気を抜いちゃダメだ! コイツら、今までの刃禺とは全然違う!」
刃禺たちは隊列を組んで様子を窺っている。お互いをカバーできる位置取り。まるで訓練を受けた部隊のようだった。
「……みたいだな」
トーラス……神無月も剣を構え直した。これまでのようなパワー押しだけでは崩せそうに無い。何か対策が必要だ。星野は緊張状態の中で思考を巡らせた。
『何をしている?』
その緊張の糸を乱したのは別の誰かの声だった。一斉に声の方を向く。そこには毒々しい赤い鎧を纏った剣士が居た。
「……包帯?」
腕に巻かれた包帯に目が留まる。鎧の上から巻かれたそれは、まるで意味がないようにも見える。だがそれは、“誰かがそこに包帯を巻いた”という事実を示している。
『ツルギ様! これは、コイツらが先に仕掛けて来たんです!』
刃禺のひとりが叫んだ。ツルギと、あの剣士のことをそう呼んだ。名前を持っているらしい。星野は改めてその赤い剣士を見た。その鎧はどの刃禺とも違う。どちらかと言うとスターブレイダーの鎧に近い。
『控えぬか! 皇女の御前であるぞ』
ツルギと呼ばれた剣士が言うと、背後から出て来たのは小さな女の子。フリルのドレスで着飾られており、頭には小さなティアラまで乗っている。だがその表情は暗い。いや、全く生気が感じられない。
臨戦状態だった刃禺たちは一斉に跪き、首を垂れた。星野はその様子を見て、ある結論に至る。
「女皇陛下って、まさか……」
星野が呟いたのと神無月が飛び出したのはほとんど同時だった。星野は全く反応することができなかった。金属音を聞いてようやく、隣に居た神無月がツルギに向かって剣を振った事に気付いた。
『何奴? 不敬であるぞ』
ツルギは片手でトーラスの大剣を受け止めながら冷静に質問をした。姿勢が崩れる様子はない。
「……テメェら、何をした!?」
『む?』
「俺の妹にッ! 何をしたんだって聞いてんだッ!!」
「!?」
神無月は叫びながら体重をかける。跪いていた刃禺たちは立ち上がって狼狽えていたが、動揺したのは刃禺だけではなかった。
星野はもう一度、ドレスの少女の方を見た。あれが神無月の妹なのだろうか。殺されたと言っていたはずだが。
『私は忠義に従い、沙耶を助けたのです。まさか、あなたがあの“お兄さん”ですか?』
「気安く沙耶の名前を呼ぶんじゃねぇッ!!」
『そう吠えられても困ります。それに、感謝されこそすれ、恨まれる筋合いは無いと思いますが』
「ふざけんなッッ!! 他人の妹に手ぇ出しといて、よくそんな事が言えんなぁッ!?」
『ええ。今日この日まで彼女を生かしたのは他でも無い私です。彼女の、そして私たちの願いのために、彼女は生き続ける事を望んだ。その望みを果たしたのです』
「テメェ……いい加減にしろよ? アイツは……沙耶は死んだんだよッ!! 俺の目の前でッ!!!」
『なるほど……いいでしょう』
ツルギは神無月の剣を押し返して突き飛ばした。それも片手で。つまり、まだまだ余力を残しているという事だ。
『姫、あなたのお兄さんが来てくれましたよ。分かりますか?』
「…………」
彼女は何も話さない。死んだ目でこちらを見ているが、眉ひとつ動かさない。
「はっ、話すわけが無いだろ? 死んでるんだよ、沙耶は」
神無月が吐き捨てるように言うと、少女はゆっくりと首を傾げた。
『……誰?』
「———ッ!?」
鈴のような幼い声だ。それを聞いた神無月は煙を吹き出しながら変身を解除して生身の姿を晒した。
「沙耶……? 本当に沙耶なのか……?」
『———! お兄ちゃんだ。久しぶりだね』
「久しぶりなんて……そんなもんじゃねぇぞ! おい、どうなってんだこりゃあ……!?」
思わず駆け出した神無月の前に剣先が置かれ、神無月は急ブレーキで立ち止まった。
『お分かりいただけましたか? ……では、どうぞご退場ください。どうか、私たちの邪魔はしないでいただきたい』
「あ? 邪魔ってのはなんだ? テメェらは何を企んでる?」
『この状況でも全く引く気はありませんか。あなたは命が惜しくないのですか?』
「良いから答えろよ。ウチの沙耶がそこまでして、何を願ったって言うんだ?」
『……あなたのその気概に免じて、ここで殺すのだけはやめてあげましょう。下がりなさい』
神無月はゆっくりと後退し、ツルギから距離を取った。その間も神無月は剣先から意識を離さなかった。
『……あのね、お兄ちゃん。わたしは、人間と刃異人は仲良くできると思ってるんだ』
「———ッ!?」
『言葉も理解できるし、話もできる。見た目や生態が違うからって、何も争う必要はない。……確かに、乱暴な子が多いのは分かるけど、それは人間だって同じ事でしょう?』
「何を……言ってるんだよ、沙耶」
『共生を願っている子も居るんだよ、お兄ちゃん。地球が、何より人間が好きな子が居るんだよ。その子を否定して、何も聞かずに殺すなんて、おかしいと思わない?』
「…………」
神無月は何も言えずに俯いてしまった。だが星野は気付いていた。神無月がトーラスを握る手に力を込めていることに。
『ねぇお兄ちゃん。一緒に平和な世界をつくろうよ。人類と刃異人が手を取り合えれば、争いなんてなくなる。そうでしょう?』
「……そうだな。仲良しごっこをしてりゃあ、喧嘩なんて起きねぇよ」
『———! だったら———』
「———だが、それじゃあ争いは無くならねぇ。それは根本の解決にならねぇからだ」
『——————え?』
「例えば、世の中から犯罪を消したい。そんな時はどうしたら良い? もちろん、犯罪者を片っ端から捕まえるしか手が無い。犯罪をしないでってお願いして、それで解決するか? そんな訳ねぇよな?」
『…………』
「じゃあ、父さんや母さんを殺した刃禺どもはどうしたら良い? ———話し合いをしても、仲間を、家族を、殺された事実は変わらねぇ。刃禺が大人しく法廷に来ると思うか? ……バカバカしい。あのな、殺すしかねぇんだよ。一匹残らず」
『……それで、解決するの?』
「相手が居なくなれば、争いなんて起きっこない。簡単な理屈だろ?」
『そんなの、おかしいよ。だからって何の罪のない子も殺すって言うの? 横暴だよ!』
「だったらッ、俺の親に罪があったのかよッッッ!? お前に、罪があったってのか? あぁッ!?」
『———っ』
少女の顔が一瞬だけ歪んだ。星野にはその一瞬の感情は読み取れなかった。
「……そんな訳ねぇだろ。なぁ、沙耶。騙されんなって。そんなバケモノなんて相手にすんなよ。そんなやり方じゃ、平和なんて掴めない」
『…………』
神無月は一転、諭すように優しく語りかける。だが、もう星野にも分かってしまっていた。この兄妹喧嘩の結論が。
『……分かったよ、お兄ちゃん』
『姫……!』
『ごめんね、ツルギ。やっぱりあなたの言う通りだった。話し合いに持ち込むためには、誰にも負けない力で相手を納得させるしかないんだね』
少女は首の後ろあたりで何かを掴み、ゆっくりと腕を持ち上げて何かを引き抜き始めた。
空気の流れが変わり、地面が揺れる。空に雲が集まる。遠くで警報が鳴る。
「何をする気だッ!? 沙耶!!」
『ツルギ、あなたの力を少しだけ借りるね』
『分かっているのですか? その力を行使するという事は……』
『うん。……大丈夫。すぐに終わるから』
肌に焼けるような緊張感が走る。星野は叫び出したい気持ちを抑えて、ただこの場からどうやって脱出するかに思考を切り替えようとした。だが目の前の光景に目を奪われて、周りを観察する余裕がない。
「クソッ……!!」
神無月は咄嗟にバックステップでさらに距離を取り、再びトーラスに変身した。もう戦いは避けられない。その覚悟を決めたという事だ。
『———ウェイクアップ』
ようやく引き抜かれたそれは、一振りの刀。禍々しい真紅の刃が稲妻を纏いながら鈍く光っている。そして少女の身体にも変化が現れていた。腕や身体の一部分が結晶化しているのだ。鎧の代わりだろうか。どちらかと言うと、ドレスの装飾にしか見えないが。
『……見せてあげる、お兄ちゃん。わたしがどれだけ本気なのか』
———一閃。
それは一瞬だった。まるで世界が二つに切り裂かれたような衝撃と共に、少女の姿が消えて、再び目の前に現れる。
『———刀はもう、鞘よ』
瞬間、トーラスの鎧が爆散した。
「カハ——————」
血飛沫を上げながら、神無月が膝から崩れ落ちて地に伏せる。星野にはまるでそれがスローモーションかのように映った。信じられない光景だった。
「———ぅうぁぁぁああああああああッッツ!!!」
『ツルギ———』
激しい金属音が鳴り響く。剣と剣がぶつかり合う音だ。訳もわからずに飛び出した星野の一撃は、最も容易くツルギの剣で受け止められてしまう。
『私たちの邪魔をするのなら、容赦なく斬り伏せる』
剣を受け流し星野の体勢を崩すと、ツルギは足で星野の腹部を強く蹴り上げた。
「———がはッ!!」
続け様に蹴り飛ばされ、神無月の近くで地面に転がる。重い一撃は星野を行動不能に陥れるのには十分だった。
「クソッ……こんな、ところで……!!」
レオは何も言ってくれない。そのまま煙を上げて変身が解除されてしまう。星野は溢れてくる血反吐を吐き出して呼吸をしようと口を開く。
虚ろな視界の中で、ツルギが剣を納め、周りにいた刃禺たちに何かを命令しているのが見えた。彼らが近付いてくる。何も抵抗できないこの状態では、大人しく殺されるしかない。
そう覚悟を決めた瞬間だった。
「———スコーピオン!!!!」
地響きと共に視界が暗くなる。地面の揺れ方から考えるに、何かが近くに落ちてきたのだろう。だがその姿は見えない。
星野はなんとか顔をあげて、目の前の影の正体を掴もうとした。
「本当に、バカじゃないの? あんたたち!」
如月の声が聞こえる。拡声器を使っているような声だ。
そして何かが目の前で土煙を上げながら回転し、目の前の刃禺を蹴散らした。星野は咄嗟に顔を覆う。伏せていなければ、何かにぶつかっていたかもしれない。
「とにかく、逃げるわよ!! 転送するから、もう少し頑張りなさい!」
そう聞こえたのも束の間、スターゲイザーへ行く時と同じ浮遊感が星野を襲った。
あまりの眩しさに目を閉じる。
そして音が消えた。
***
「———はっ」
目を覚ますと、そこは緑っぽい液体の中だった。星野は慌てて口元に手をやると、何かが手に触れる。どうやらこれは吸気マスクのようだ。星野は息が吸えたのでマスクに手をかけたまま静止した。そして息を吐いた。
『意識の回復を確認。条件を満たしたため、強制終了を行います』
「え?」
何かが聞こえたと同時に、星野を包んでいた液体の水位が下がっていく。重力が戻り、星野は座り込んでしまう。
温風が舞い込んでくるが、濡れて重い服はそんな風では乾きそうになかった。
星野はまずはマスクを外してみることにした。すると、ガラスの扉が開き、外の空気が舞い込んでくる。外と言っても、ここが薄暗いどこかの部屋らしいことしか分からないが。
と、顔を上げた途端、扉がスライドする音と共に、光が差し込んだ。
「目が覚めた?」
如月の声がする。足音が近づく。星野がその方を向くと、ツインテールの如月が腕を組んで仁王立ちしていた。
「えっと……もしかして怒ってる?」
「はぁ……。とにかく、まずは着替えなさい。服はここに置いておくから」
言うなり如月はどこからともなく衣装を取り出すと、足元のカゴに乱暴に投げ入れた。
「濡れた服はそのカゴに入れておきなさい。それから、着替えたらブリッジに来て」
如月は言い終わると星野に背を向けて離れていってしまった。
「如月さん!」
星野が呼び止めると、如月の足が止まった。だが振り返らない。
「……その、ありがとう。助けてくれて」
星野は頭の整理が追いついていなかったが、とにかく伝えたかった言葉を口にした。飾り気のない素直な気持ちだった。
「ふんっ……お互い様でしょ」
言い捨てると、如月は部屋を出ていってしまった。残された星野はガラス扉から外へ出て、濡れた服を全て脱ぎ捨てた。
如月の用意した衣装には下着までしっかりと入っていた。わざわざ用意したのだろうか、なんて考えながら星野は新しい服に袖を通す。
「えっと、着替えてきたけど……」
自動ドアを抜けてブリッジに出ると、如月は中央の椅子に座ったまま腕を組んでいた。何かを咥えているようだ。
「それで、どういうつもり? 私が居ない間に勝手して、レオとトーラスを大破させて」
咥えていた飴を星野に向けながら、如月はため息をつく。星野はぼんやりと、如月の今日の服はどこか軍服を模した制服っぽいなと、組まれた足のブーツに目をやっていた。
「聞いてるの?」
「あぁ、いや、ごめん。服が……」
「服が何?」
思い返してみると、如月が用意してくれた衣装も、いわゆる詰襟と呼ばれるタイプの制服だった。学校の指定のものとは程遠い。コンセプトを揃えたとしか思えない。
「……似合ってるね、如月さん」
「はぁ……言ってる場合? まぁ、悪い気はしないけど」
こちらを睨みながらも如月が無理やり口をへの字に曲げて照れ隠ししていることは星野にも分かった。
「……それより、本当に何があったのか教えて。レオはともかく、トーラスがあそこまでされるなんて」
星野は神無月と侵入禁止区域に入って、彼の過去について聞いたことを話した。そしてそこで見つけたあの刃禺たちのことを。
「……なるほど」
如月は顎に手を当てて俯きながら考える。言葉を選んでいるのだと、星野は如月が口を開くのを待った。
「それはちょっと厄介ね。もしその沙耶って子とツルギってやつの言うことが本当なら、次にやる事は多分、デモ行為よ」
「デモ? 暴動じゃなくて?」
「最後にはそうでしょうけど、あくまでも話し合いで解決したいってスタンスなんでしょう? なら、まずは自分たちの権利を主張してくるはず」
「なるほど」
「まさか刃禺側に付く人間が居るなんてね。それに連携なんて、刃禺にどんな訓練したってのかしら」
如月は飴を噛んで腕を組みながらそっぽを向いてしまった。星野もあの光景を思い返してみる。人間との共生。あれだけの力の差がありながら、共に生きていくことは出来るのだろうか。
「……まぁ良いわ。とにかく、あんたたちが無事でよかった。レオとアテナからの通信が遅かったら、どうなっていたことやら」
レオが静かだと思っていたが、秘密裏に如月にコンタクトを取っていたのかと、星野は納得した。そんな機能があったことは知らなかったが。
「たち、ってことは、剣人くんも無事なの?」
「なんとかね。あんたと同じように治療ポッドに入れてるけど、しばらくは目を覚ましそうにないわ」
星野は胸を撫で下ろした。酷いやられ方をしたのでまさかと思っていたが、彼の持つ執念が彼を生かしたのだろうか。
「……とにかく、あんたも安静にしてなさい。レオもトーラスも修理しないといけないし、しばらくは私が刃禺に牽制しておくわ」
「うん。……ごめんね、如月さん」
「良いのよ。スコーピオンだって出番が来て喜んでいたもの」
「そういえば、あの時に呼んでたよね? よく分からなかったけど、あれはなんだったの?」
「星剣の中で最も特殊な剣、星剣スコーピオン。あの子はね、ジャンルで言うと重機なの」
「重機? クレーン車的なあれ?」
「まぁそうね。巨大ロボットなのよ、あの子」
「ロボット? 剣なのに?」
「だから言ったでしょ? 特殊だって」
星野は思い返してみる。確かにあの影は蠍の脚だったのかもしれない。刃禺たちを吹き飛ばしたのはおそらく尻尾だ。
「……そんなに凄いものがあるなら、最初からそれで良かったんじゃ?」
「良いわけないでしょ。あんなのを毎回呼んでたら、街への被害とか目撃情報とか気にしないといけない事が多過ぎて死んじゃうわよ」
如月はため息をつく。秘密裏に刃禺を処理すると一言に言っても、そこには星野には計り知れない程の苦労があるのだろう。
「……何はともあれ、これは私たちにとって決定的な敗北よ。けど、ここで終わるわけにはいかない。……少し時間をちょうだい」
そう言って如月は席を立ち、星野から離れて行く。
「えっと、僕はどうすれば?」
「先生に適当に言い訳しといて。神無月は念のため病院に入れるし。あとはよろしく」
「え? ちょっと!」
如月は振り向きもせずに反対側の扉の奥へ消えた。残された星野は何もできずに立ち尽くしていた。
『ご友人。よろしければ、家までお送りいたしますが』
見かねたのか、アテナが星野に声をかけた。
「……そうだね。お願いするよ。あと、替えの制服も送っといてくれない?」
『分かりました』
星野は敗北という言葉が耳に残ってずっと頭の中を巡っている事に気付いた。負けた事実が、ようやく重石となって星野を襲って来た。今は何もできないという無力感が、星野を俯かせた。
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第五話。文字通り、敗北回です。強大な敵、兄妹の仇。
刃異人の進化は留まるところを知りません。地球上に漂う人の魂を吸収し、どんどんと人間らしさを学んでいるようです。人の言葉を理解し、人のような見た目をし、人のように思考し、人のように願いを持つのです。人とは何でしょうか。鎧をまとう彼らと何が違うのでしょうか。
ちなみに、沙耶ちゃんは神無月くんに「久しぶり」と声をかけましたが、流星の夜に死亡したはずの沙耶が兄である神無月くんと別れてから、1週間と経っていません。毎日顔を合わせるのが当たり前だった兄妹だからこそ、2,3日会わなかっただけで「久しぶり」という言葉が出てくるのだと思うと、二人の家族として過ごしていた時間を想像してしまうのも無理はないことでしょう。なんだか泣けてきました。どうしてこんな目に……
さて、状況は絶望的ですが、幸いにもまだ時間はあるようです。最初から拳を振り下ろすのではなく、まず拳を振り上げて見せよ、と教えの通りにしてくれているようなので。その間に片付けなくてはいけない問題は山積みです。どうする、如月さん! 如月さんの明日はどっちだ! 次回をお楽しみに!