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ネクサス・オービット  作者: 白狐
第一章
2/10

2 送付者不明のメッセージ

真夜中。ネオンの明かりがちらつく薄暗い部屋で、少年は無機質な光を放つ画面を見つめていた。


カイ・アークライト——ただの高校生。少なくとも表向きはそうだった。彼は学業の合間に、電子世界でのハッキング技術を磨き、不正アクセスによって得たデータを売ることで生計を立てていた。社会に不満があったわけではない。ただ、“ここではないどこか”を求めていた。


この夜もまた、仕事を終えたカイはダークウェブを漁っていた。すると、奇妙なプログラムが送信されてきた。


【アクセスコード:NEX-0001】

【タイトル:《ネクサス・オービット》】

【送信者:不明】


「……なんだこれ?」


プログラムの詳細は一切不明。しかし、そのデータは異様に洗練されており、まるで“誰か”が意図的にカイへと送りつけたかのようだった。


慎重なカイは直感的に警戒したが、それ以上に好奇心が勝った。


カイはプログラムを起動する。


『VRゴーグルをコンピュータに接続(リンク)してください』


埃をかぶったVRゴーグルを取り出し、指示通りに接続(リンク)させ装着する。すると、視界が白に塗りつぶされ、瞬間、浮遊感に襲われた。


——次に目を開けた時、カイは全く知らない場所に立っていた。


仮想空間特有の滑らかな空気。天空には無数のデータリンクが光の帯となって流れ、ビル群の間を縫うように電子回廊が走っている。


「……夢?」


いや、違う。これは仮想現実(バーチャル)だった。


目の前に無数の情報ウィンドウが浮かび上がる。


【ようこそ、《ネクサス・オービット》へ】

【あなたは新規ユーザーとして認識されました】

【現在のステータスレベル:NEW PLAYER】

【データ適応率:99.87%】


「適応……? 俺は一体どこに……?」


混乱するカイの背後で、冷たい電子音が響いた。


「高水準適合者、発見」


その声に振り向いた瞬間、カイは息をのんだ。


白銀の装甲をまとった人型の存在。淡い青の瞳を持ち、無機質な美しさをたたえた少女——まるで神話の騎士のようだった。


「お前……誰だ?」


少女は一歩前に進み、静かに名を告げた。


「私は《監視者No.07》……アイリスだ」


カイの目が驚愕に見開かれる。


「……アイリス? まさか……なんで、お前が……」


彼女はカイの幼馴染だった。幼い頃から共に過ごし、いつも隣にいたはずの少女。しかし、数年前に突如姿を消したまま行方知れずになっていた。そのアイリスが、今この仮想世界で監視者(ゼロ・ネメシス)として現れた。


「久しぶりね、カイ」


彼女の声はどこか懐かしく、それでいて冷たかった。


「カイ、あなたにはこれからとある場所に付いて来てもらうわ」


そう言い、銀色の長髪をなびかせながら身を翻す。


カイは戸惑いながらも、アイリスの後を追った。


              ◀▷◀▷◀▷

              ◁▶◁▶◁▶


10分ほど歩いただろうか。カイの目の前には要塞のような巨大なタワーがそびえ立っていた。


「なんだここ?」


「ここは《オービット・コア》。《ネクサス・オービット》の中枢よ」


アイリスの説明にカイは困惑する。だが、それに気づいたアイリスはほんの一瞬、柔らかい表情を見せた。


「この世界は《ネクサス・オービット》。そして、このタワーはその中心に位置するもの——」


そう言うと、アイリスは《オービット・コア》の中へと入っていった。


エスカレーターで下層へと降り、さらに延々と続く螺旋階段を下っていくと、最深部に重厚な扉が現れた。


アイリスはそこで一度膝をつくと——


「連れてまいりました。創始者(マスター)


と静かに告げた。


重厚な扉が開かれる。


「よくやった、No.07」


無関心な声色で淡々と告げる男。男はカイを見つめると、何かを見定めるように目を細め、やがて満足げに微笑んだ。


「この者の実力を測る。No.07、相手を務めよ。手加減は不要だ」


「……了解しました」


アイリスの目が鋭く光る。


カイは状況を理解する間もなく、アイリスと戦うこととなった。

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