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第14話 初めての友達(5)

空のように澄んだ青色の瞳と、飴細工のように輝く金色の髪を持つ美少女が、穏やかな笑みを浮かべていた。背中には金色の翼が広がり、彼女が天使であることは一目でわかる。


身体が思うように動かず、これは夢なのだとすぐに気付いた。


目の前の彼女は、今まで見たどんな生き物よりも美しく、その存在感に圧倒される。視線をそらすことすらできない。整った顔立ち、青い瞳の奥に浮かぶ静かな光…。まるで彼女そのものが、この世界の光そのもののようだった。


何やら彼女と楽しげに会話をしているようだが、内容は全く理解できない。ただ、その声は耳に心地よく、柔らかな旋律のように心を包み込む。


ふと、彼女の顔が誰かに似ている気がしてきた。だが、その「誰か」が誰なのか、どうしても思い出せない。必死に思い出そうとするが、何も掴めないまま、視界が次第に暗くなっていく。


――まだ思い出せていないのに!


その強い思いを抱いた瞬間、目が覚めた。


「誰に似ていたんだろう…?」


ぼんやりと天井を見上げながら考えるが、思い出せない。仕方なくゆっくりと身体を起こすと、視界にぐっすり眠るコルナスの姿が入った。昨日あれだけ眠っていたのに、まだ熟睡しているなんて…。


起こさないよう、慎重に身支度を進めていると、コルナスがもぞもぞと動き始めた。


「嬢ちゃん、もう出るのかい?」

「おはよう、コルナス。もうそろそろ行こうと思ってるけど、どうする?部屋でゆっくりしてる?」

「ゆっくりしたいが、腹が減ったのとトイレに行きたいから外に出るよ。」

「そう、じゃああと少し待ってくれる?まだ準備が終わってなくて。」

「おう、ゆっくりで大丈夫だ。」


コルナスの言葉にうなずき、急いで準備を終わらせた。


「お待たせ、行こうか。」


コルナスの前にポーチを開けると、彼はおとなしく中に入った。その小さな身体と、ぷりぷりとした尻尾が妙に愛らしい。


「何見てんだよ。やらしい目で見るんじゃねえよ。」

ポーチの中からコルナスが目を細め、ふっと馬鹿にするような視線を向けてくる。


「見ていません!」

じっと見ていたのは本当で、つい顔が熱くなる。慌ててポーチを閉じると、気を取り直して部屋を出た。


昨日と同じように私は鍛錬、コルナスは食事を各々していたが、コルナスが慌てて私の方に来た。


「出た!またあいつだ!」

走ってきた方を見ると、地面にカラスが一羽降り立っている。

私はコルナスを肩に乗せながら、カラスの方へ一歩近付く。


「嬢ちゃん!まさか俺を差し出すんじゃねえだろうな!」

「そんなことしないわよ。」

私はもう一つのポーチから用意していたパンを取り出した。初めての友達が食べられてはいけないと思い、事前に準備していたのだ。


「これで大丈夫なはず…ほら。」

私はパンを小さくちぎり、カラスの足元に投げた。カラスは警戒しながらもパンに興味を持ち、つつき始めた。


「ほら、食べてるよ。」

「俺が食われない保証はどこにもねえ!」

「大丈夫だってば。」


カラスは少しずつ警戒を解き、もっと欲しいとばかりに「カア!」と鳴き声を上げた。そのたびに私はパンをちぎって投げる。食べ終わると、カラスは満足げに頭上の木の枝に飛び、じっとこちらを見下ろしている。


「お腹いっぱいになったんじゃないかな?これで大丈夫だよね?」

「お腹いっぱいでもなんでここにいるんだ!どっかに行けってんだ!」

コルナスはカラスに向かって威嚇するように口を開けるが、カラスは微動だにせず、じっと見つめ返している。その視線の先は、どうやらコルナスのうろこの輝きのようだ。


「…うろこがキラキラしているからかな?」

「は?なんだそりゃ?」

「カラスって光るものが好きって聞いたことがあるから、コルナスのうろこを宝物だと思っているんじゃない?」

「ちっ…そんなくだらねえ理由かよ。」

「でも、遠くに行かなければ私が助けられるから、安心してね?」

「…今回は様子見だな。俺も警戒するぜ…。」


その日から、カラスが鍛錬場に現れるのは日課になった。コルナスはカラスを気にしながら狩りを始めるものの、どうにも集中できないようだ。


「ねえ、コルナス。あのカラス、名前をつけてみるのはどう?」

「は?名前だと?」

「いつも来るし、ただ『カラス』って呼ぶのもなんだか味気ないから。」

「どうでもいいけど、変な名前にするんじゃねえぞ。」

「うーん…『アビー』なんてどうかな?」

「アビー?…まあ、悪くねえ。」


そうして、カラスはアビーと名付けた。アビーは相変わらずコルナスのうろこを見つめているが、それ以上何かをすることはない。その姿に少し愛嬌を感じる私は、アビーのために小さなパンを用意することにしている。


コルナスはまだ警戒しているが、「アビー」と呼ばれるたびに少しずつその存在を認め始めているようだった。


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