表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

第12話 初めての友達(3)

私は机の引き出しから小さなリボンを取り出した。それを手に持って近づくと、コルナスは警戒してしっぽを左右に振り始めた。

「おい、なんだそれは。まさか俺にそれをつけるつもりじゃ…?」

「そうよ。だって可愛いでしょ?爬虫類って苦手な人もいると思うけど、これを付けていればアデルもかわいいと思うかもしれないわ。それに触っても害がない子だときっと思ってもらえるわよ。」


「俺はそんなもんなくても十分かわいいし、十分いい子だ!」

コルナスは反発しつつも、私の満面の笑顔に逆らえない様子だった。


「ほら、じっとしてて。似合うかどうか確認するだけだから。」

私がリボンをコルナスの首元に軽く結ぶと、真っ白なうろこに鮮やかな青いリボンが映えた。

「まあ、似合ってるじゃない!」

コルナスはため息をつきながら鏡の前に向かい、自分の姿をじっと見つめた。


「くっ…悪くねえな。やっぱり元がかわいいからな!」

「でしょ?これならアデルもコルナスの良さがわかると思うわ。」

「まあいいさ、居心地よく過ごせればなんでも。」

コルナスはなげやりに言いながら、リボンを触らないように気をつけているのが微笑ましかった。


「お嬢様、失礼します。」

朝の準備のためにアデルの入室の許可を求める声が聞こえた。


「ええ、入って。」

「失礼します、お嬢様。」

台車を押しながらアデルが入室した。

私は少し緊張しながら、彼女の視線がどこに向かうのか注意深く観察する。

アデルはまず私の顔を見て、いつものようににっこりと挨拶したが、次の瞬間、私の手に乗せているコルナスに気づき、目を大きく見開いた。


「あ、あの…お嬢様、それは…?」

「今日の剣術の鍛錬中にね、カラスに襲われそうになっていたのを見つけたの。かわいそうで放っておけなくて…。とてもおとなしくてかわいい子だから、今日から私のペットにすることにしたの。」

少し照れながらも、努めて自然な口調で説明する。


「でも、令嬢が爬虫類をかわいがっているなんて噂が広がったら嫌だから、内緒にしてほしいの。」

アデルは恐る恐る私たちに近づき、じっとコルナスを観察した。

その間、コルナスはアデルの視線をじっと受け止めるように見つめ、首を傾けたかと思うと、舌をペロッと出してみせた。


「か、かわいいです…。」

「そうだろ?俺って魅力的なんだ!」

コルナスはアデルに話しかけるが、アデルにはその言葉はわからないみたいだ。


アデルは目を丸くしながら、もう一度コルナスに目を向けた。


「か、かわいいです…でも、お嬢様、本当に大丈夫ですか?爬虫類は時々噛んだりすることもあると聞きますが…。」

「大丈夫よ、コルナスはとってもいい子なの。ほら、全然おとなしいでしょ?」


コルナスはその言葉に反応し、少しだけしっぽを持ち上げた。

「フン、当たり前だろ。俺はただのトカゲとは違うんだぜ。」


アデルは驚いた表情で一歩後ずさりしたが、私の落ち着いた態度にほっとしたようだった。

「お嬢様がそうおっしゃるなら…でも、エサやお世話はどうされますか?」

「それについては心配いらないわ。コルナスが自分でどうにかするみたいだし、基本的にはお部屋で一緒に過ごすつもりよ。アデルには迷惑をかけないようにするわね。」

「かしこまりました。ですが、お嬢様が困ったときは遠慮なくおっしゃってくださいね。」

アデルはまだ少し戸惑いを残しながらも、微笑みを浮かべて一礼した。


「ありがとう、アデル。それじゃあ今日も一日よろしくね。」

朝の準備を終えたアデルが退室し、部屋に静けさが戻ると、コルナスが尻尾を揺らしながら机に移動した。


「へえ、あの子もなかなかやるじゃねえか。俺を見て悲鳴を上げなかったのは立派だ。」

私は苦笑しながら、リボンを整えてやる。


「そうでしょ?アデルは頼れる子なの。これからきっと仲良くできるわ。」

「けっ、そうだといいけどな。」


コルナスは窓の外を見ながら目を細めた。

「嬢ちゃん、俺はもう眠るから、そのハンカチと一緒に窓際に置いてくれ。」


私は言われた通り、ハンカチの上に乗せたコルナスを窓際へと運んだ。

日の光を浴びて、うろこがキラキラと輝いている。よほど眠いのか、まぶたはすでに落ちかけている。


「ごはんを食べてくるわね。アデルにはしばらく部屋に入らないように伝えるから、ゆっくりしててね。」

眠るのに邪魔だろうと、リボンを取ろうとすると、コルナスは首を左右に振った。


「邪魔じゃないから大丈夫だ。それに、これは俺のお守りだからよ。」

私は輝くうろこを人差し指で撫でながら、微笑んだ。


「おやすみなさい。」

もう寝ているのか、返事はない。私はコルナスを起こさないよう、静かに朝食へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ