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街での初めてのおでかけ、迷子の魔術師、そして変化の兆し

 (……さて、と。今日は、一体、どこへ、行こうかしら?)


 レイアは、ピンクのパーカーのフードを被り、赤いポニーテールを風になびかせながら、王都イグレシアの街を歩いていた。

 

 ……沈黙の谷から帰還してから数日。彼女の体は、まだ、疲労感を残していたが、それでも、街の活気は、彼女の心を、少しだけ、浮き立たせた。

 

 

 ……石畳の道には、様々な人々が行き交い、露店からは、香ばしいパンの匂いや、美味しそうな料理の匂いが漂ってくる。そして、その風景は、以前までは、ただ、騒がしいだけで、不快にしか、感じなかったはずなのに、今は、どこか、懐かしい、故郷の風景のように、思えた。

 

 レイアは、そんな風景を眺めていると、後ろから、ルイスの声が聞こえた。

 

 「レイアさん、こっちです!このお店は、鎧や武具が豊富に揃っていると評判です!それに、この店には、珍しい魔道具も、置いてあるかもしれませんよ。そして、もしかしたら、凄いものが隠されているかもしれない」

 

 ルイスは、キラキラとした目で、そう言い、レイアを、ある店へと引っ張っていった。その姿は、まるで、初めてお菓子屋さんへ行った子供のようであり、そして、その瞳には、古代文明の謎を、解き明かしたいという、純粋な好奇心が、宿っていた。


 (……ああ、もう。本当に、あんたは、興味のあることには、どこまでも一直線なのね。けど、そんな姿は、どこか、憎めない。それに、その知識は、きっと、役に立つはず。そして、私は、その知識を頼ることを、ためらう必要はないのかもしれない)

 

 「ちょっと、待って、ルイス。そんなに急がなくても、どこにも行かないわよ。それに、私は、別に、魔術師ごっこをするつもりはないんだけど」

 

 レイアは、ピンクのパーカーのフードを被りなおしながら、そう言った。

 

 ……そして、彼女は、少しだけ、笑った。それは、かつてのような、皮肉な笑みではなく、どこか、優しさに満ちた、微笑みだった。

 

 ……そして、二人がたどり着いたのは、街の一角にひっそりと佇む、古びた武具店だった。

 

 店の中は、所狭しと、武具や鎧が並べられていて、まるで、小さな博物館のようだった。古びた木製の棚には、様々な種類の剣や盾が飾られており、そのどれもが、使い込まれた、良い雰囲気を醸し出していた。そして、その店には、使い込まれた武具の匂いと、少しだけ、古い本のような、紙の匂いが、混じり合い、どこか、落ち着いた、そして、懐かしい、雰囲気を、醸し出していた。

 

 「……レイアさん、この店はただ古いだけでなく、職人の腕も一流なんです。きっと、あなたの力を最大限に引き出せる武具が見つかるはずです。それに、この店には、珍しい魔道具も、あるかもしれません。」


 ルイスは、熱心に武具を見始めた。彼の瞳は、以前よりも、輝きを増し、まるで、自分の求めるものを、見つけようとする、子供のようだった。


(……ああ、もう。けど、そんな、彼の、純粋な好奇心も時にはいいわよね。そして、もしかしたら、本当に、この先に、私が、求めているものがあるのかもしれないし。)

 

 ……レイアは、大剣を背負ったまま、ゆっくりと、店内を歩き始めた。そして、彼女の目は、すぐに、一つの武具を、捉えた。

 

 ……それは、黒い革製の胸当てと、腕当てのセットだった。その胸当てには、赤いラインが、施されており、それは、まるで、彼女の赤いポニーテールを、連想させるものだった。

 

 「これ、試着してもいい?」

 

 レイアが、店員に尋ねると、店員は、にこやかに頷いた。

 

 

 一方、ルイスは魔術書を広げ、熱心に何やらブツブツと呟いていた。その姿はまるで、子供がおもちゃを見つけたときのように無邪気で、そして、どこか、微笑ましかった。そして、それは、レイアの心を、少しだけ、和ませた。


 (……まあ、いいか。私も、早く、新しい装備を、手に入れないと。それに、もしかしたら、ルイスは、本当に、何か、見つけてくれるかもしれない)

 

 レイアは試着室に入り、新しい装備を身につけようとした、その時だった。

 

 突然、ルイスが奇声を上げた。

 

 「レイアさん! レイアさん! どこですか!? 私が、見えなくなってしまいました!?」

 

 (……え?どういうこと?また、何か、やらかしたのかしら?)

  

 レイアは急いで試着室から出た。

 

 ……すると、そこには、パニック状態のルイスの姿があった。彼は、あたふたと、周囲を見回し、まるで、子供のように、不安な表情をしていた。

 

 ……どうやら彼は、店の中で迷子になったらしい。


(……ああ、もう本当に、めんどくさい。けど、まあ、それも、彼の魅力なのかもしれない)

 

 「ルイス、落ち着いて。私はここにいるよ。何も慌てる必要はない」

 

 レイアは、できるだけ、優しい口調でルイスにそう言った。

 

 「レイアさん! よかった。あなたが見えなくなってしまって、どうしようかと思いました。それに、なんだか急にこの店が広くなったような気がして、それに、この店の魔道具から感じる魔力が、私を混乱させたようで、本当に怖かった」

 

 ルイスは、そう言いながらレイアの腕を掴んだ。その手は、わずかに震えていた。


 (子供みたいね。けど、もしかしたら、何かを感じたのかもしれない。この店には、普通の人間には、感じることができない、何かがあるのかもしれない)

 

 「ルイス、まずは落ち着いて。深呼吸をしなさい。そしてゆっくりと周りを見渡してみて。そうすれば、きっと道に迷うことはない。それに、もし、また、迷いそうになったら、いつでも、私を頼っていい。」

 

 レイアはルイスにそう教えた。

 

 

 

 ……するとルイスは、少しだけ冷静さを取り戻した。

 

 

 

 ……そして彼は、ゆっくりと周りを見渡した。

 

 「レイアさん、ありがとうございます!おかげで道に迷わずに済みました。そして、レイアさんの、その言葉は力強かったです。そして、その言葉には、不思議な力が、込められているように、感じました。」

 

 ルイスは満面の笑みを浮かべた。そして、その瞳は、まるで、何かを、発見した、探求者のように、輝いていた。


 (……ふう、やっと落ち着いたわね。けど、こんな調子で、この先大丈夫かしら。それに、もしかしたら、この店で、私も何かを感じてる気がする。この、胸騒ぎは、一体、何?……)


 レイアは、少しだけ、自分の心が、ざわついていることに、気が付いた。

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