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悪次と善児  作者: 幸せ泥棒
5/5

5話「万能の張りぼて」

其の日は、朝から冷たい雨の降る日だった。


雨の日は、僕の耳に入るその街の喧騒(けんそう)が、心做(こころなし)しか鈍く聴こえる。

僕の耳には雨音が大きく響いて、煩わしい。いつもは心地よいリズムを刻むそれが、


僕の耳には...それは、きっとあの事が関係している筈。


其の日は、今日と同じ、雨の日だった。


その日も、早朝トレーニングの後で、趣味の日々の日課の街のゴミ拾いをする。


耳に響き渡る其の雨音は心地よく、耳に響いて、僕を愉しませる。

そして今日も今日とて、合羽を着込みごみ袋とトングを片手に街を歩く


馴染の赤松さんに挨拶をして、いつも通り、打音検査をして、

行きつけの大衆食堂へと向かう其の途中で、変わった格好の男性を見つける。


頭は爆発に巻き込まれた漫画のキャラクターのように、ふっくらと膨らみ、

牛乳瓶の底の様な丸メガネをしてる。所々汚れた白衣を纏った其の人を


僕はおやぁ?


一体どうたのかな?と声をかける。


ぐでぇ~っと道端(みちばた)に倒れ込み、見ると大事そうに何か大きなカバンを抱えてる。


「どうしました?」と、そう僕は声をかけると、


グゥぅぅぅぅ~っと、大きなお腹の音を響かせ返事をする。


お腹へった...バタンッと倒れ込む、其の男性に、うーん僕は何をすれば良いのかな?と、

思案したあと、馴染の大衆食堂(たいしゅうしょくどう)へと連れて行く。


「お腹へってるなら、おごりますよ?」と声をかけると


ぐでぇ~っと溶ける様に座るその男性の目にも光が戻る。


うーん、好きなものは何かなぁーっと聞くと、今にも死にそうな声で、おすすめを...


心得たとばかりに、おばちゃんに焼き魚定食を2つ、注文して、


魚が焼き上がるまで待つ。


奥まったカウンター席で横に並ぶ僕は、


その間に、彼に問いかける。


「なんであんなところで生き倒れてたんですか?」


「……。」


グゥ~っとお腹がなって、うん!話しはご飯を食べてからにしましょう!と、


そんなこんなしている内に、焼き魚定食が2つお待ちと、おばちゃんの声が響き


ボンバーヘッドの彼は、無心に焼魚定食に齧り付く。


僕も負けじと、いつもどおりにゴールデン・トライアングルを形成して食べ始める。


もぐもぐ、


もごもごと


咀嚼音(そしゃくおん)が響く


あらかた食べた後に


「で、ところで、あそこで何してたんですか?」


「う~~ん、研究所(けんきゅうじょ)を爆破されて、財布もなんもかんも、持ってない状態で数日逃げ回ってたら、(この)の有り様で、助かりました。」


「公園の水だけじゃ、足りずに、はぁ~生き返ったぁーありがとうございます。」


「へぇーそうなんだ?」



(。´・ω・)ん?なんぞ、


いま物騒なキーワード挟んでなかったかな?


「なにかよくわからないけど、物騒な話しだねぇ。アンタの相棒に相談してみたらどうだい?」


「猫の手って、良く知らないけど、何でも屋なんだろ?」

「猫の手?なんです?それ?孫の手の類友(るいとも)ですか?」


「いやいや知らない方にこれ以上の迷惑は?出来れば交通費だけ貸して頂ければ!」

「助けを求める(あて)はあるんです。ただ足が、交通費がなくて。」


「おやぁ?でも交通費だけなら、交番か駅員さんに借りることが出来るはずですよ?」


当たり前の豆知識で指摘すると、


う~ん、それはそうなんですけど、追手が(あらかじめ)め張っていて、近づく事も出来ずに。

にんともかんとも?!


「んーそっかぁ、じゃぁ、目的地まで、タクシーで送りますよ。」


「場所はどこですか?」

場所は...其処まで逃げれば安全だと...そう告げた場所に、僕は吃驚(びっくり)する。


そしておばちゃんも吃驚する。


何故ならば、次の瞬間に、大衆食堂(たいしゅうしょくどう)の出入り口が、吹き飛び、覆面(ふくめん)をかぶった男たちが、雪崩(なだれ)込んできた...


何かのハンドサインを繰り返しつつ、接近するそれらの人物たちは、


その手には拳銃を持ち、こちらに向かって二発ずつ、発砲し、接近してくる


放たれた弾丸が、出入口側の僕の胸に命中、一発が立ちすくむ、おばちゃんめがけて飛来する。


倒れゆく僕の目には…


其の一撃が、おばちゃんの頭部に命中する瞬間に、


何を思ったのか、持っていた中華鍋を盾に銃弾を弾き、そのまま手に持ったフライパンを投擲(とうてき)して、


一人の頭に命中。


昏倒(こんとう)させる。


膝から崩れ落ちる暴漢(ぼうかん)を他所に


「うちの客になにすんじゃい!!!」


「善児くん?!大丈夫かい?」


僕は衝撃でグルグル目を回して、胸が痛い。そう言えば、これをいつも来ておけと、良く伸びるらしいパーカーを悪次さんから押し付けられていたんだっけ?


僕の傷の具合を心配しつつ。おばちゃんが、調理道具(ちょうりどうぐ)を駆使して、暴漢達(ぼうかんたち)に応戦する。


眼の前で発砲寸前の拳銃の銃口におばちゃんが投げつけた包丁がシュバッと突き刺さる。


そこで繰り広げられる騒ぎに、僕以外のお客さん達が、店のテーブルの下に隠れ、


ボンバーヘットの彼も、手に抱えた荷物を持って地面に伏せる。


僕も、なんとか復帰して、荷物の中から背負い紐付きのアタッシュケースに手をいれると、

半自動的に、其の手に多目的手甲、ビリビリ君2号が、装着される。


圏魂君(けんこんくん)2号を掴み、手でグルグルと回しはじめると、

その怪しげな動きに、危機感を抱き、僕に向かって拳銃の弾丸が、飛来する。


とっさに右の手甲を盾にして、受け止め次の瞬間、手甲が弾け、エアバックが発動。

簡易的な盾となって、銃弾を一発、二発と防いでいく。


「おばちゃんごめん!!店が傷つくかも!!」と、言って、


圏魂君(けんこんくん)2号を左手から投擲。内部に内蔵されたギアが周りグルグルと回転


店の壁と壁を弾きながら、ジグザグに回転し、跳ね跳び上がりながら、


暴漢たちの拳銃を弾き飛ばして、そのまま駆動音を響かせながら、善児の腕へとすっぽり収まる。


「あんたら!事情は、わからんけど、その子つれて、裏口から逃げな!」


「そろそろ赤松の旦那が来る頃だしここは良いから!」


そう告げられた時に放物線を描き、手榴弾が投擲される。


不味い?!と思い。つかもうとした瞬間。おばちゃんが調理場から飛び出し、


フライパンを振るい。


常連のお客さんが手慣れた様にファァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!と叫ぶと、


狙いはあたわず。暴漢共(ぼうかんども)の足元に弾かれ、慌てて一散り散りに逃げた瞬間爆発。


其の隙に爆速で、二人の食べ残しをオニギリにして、これを持っていきな、と手渡し、サムズアップ。


ノッシノッシと、おばちゃんがフライパンを片手に出入り口の暴漢へと向かっていく。


心のなかでおばちゃんごめん、ありがとうと、つぶやきながら、僕は裏口から彼を連れ出し逃げ出す。

其の背後では、馴染みの、おばちゃんと、いつのまにか現れた赤松さんの怒号が鳴り響いていた。


・・・


・・・


・・・


「Burglar 3, give me a sitrep,Over」(バーグラー3、現状を報告せよ、以上。)


「I’m under attack by Auntie and Samurai, need reinforcements!」

(おばちゃんと侍に襲撃されている、応援を求む!)


「Man down!」「Man down!」「Man down!」(負傷、負傷、負傷)


「Help! I’m under attack!」(救援求む。攻撃を受けてる)


「What’s up?」(どうした?)


「Burglar 3, is the target secured?」(バーグラー3、目標は確保したか?)


「Burglar 3, respond,Over」(バーグラー3、応答せよ、以上)


「Burglar 3, respond,Over」(バーグラー3、応答せよ、以上)


「Burglar 3, respond,Over」(バーグラー3、応答せよ、以上)



僕らは其の場を逃げ出し、早朝の朝の街を駆ける。


僕らは手を繋いで、街を走り、


どうする?どうする?事務所まで、逃げるには?事務所なら、


悪次さんのガジェットで奴らも追ってこれない筈?


はぁはぁと息を切らせながら二人は走る。


ボンバーヘットの彼は、その手をはらって告げる


「これ以上は、巻き込めません!!別行動にしましょう。」


「それはダメだよ。」


「そもそも関係ないじゃないですか?!」


半分泣きながらも、其の手を話そうとする。


「絶対ダメだよ。関係あるよ!だって、君の目的地って、僕の職場だもん!!!」


「「えっ?」」


・・・


・・・


・・・


髪は相変わらずのくせっ毛に、ボサボサ頭の寝癖。


その表情は、何故か若く見える童顔?なのか、全然、貫禄とか大人の男性とは、見えない。

表情は暗く、顔もどこにでもいそうで居て、どこにも居ない。


特徴はあるはずなのに何故か、影が薄そうで、人混みに紛れたら、どこに居るか分からなくなる。

そんな特徴のない顔の彼を眺めて


いつもの習慣通り、インスタントコーヒーを(すす)る。


んー?おかしいないつもなら善児の奴は、来てる時間だが?遅れる時は必ず連絡する奴だし、

さては、なにかあったな?


と、XーIX(テンナイン)多目的特殊警棒の具合を確かめ、


昨晩作った、新作ガジェット類をまとめて、背負い紐が付いたアタッシュケースに突っ込む。


スマートフォンを操作しながら、事務所を施錠し、駐車場に停めてある


ワンボックスカーへと乗り込み、車のエンジンに火をいれる頃に、けたたましくスマートフォンが鳴り響く。


急いで電話にでると...



「悪次さんですか?平賀です?!」そう勢い込んで、掛かってきた電話は、善児では無かった。


ん?どうした?


「何かトラブルか?平賀さん?」


「数日前に、研究所が何者かに襲撃されて、君から預かって居た、素材を一部奪われてしまった。」


「娘も、巻き込まれて、所員の誘導で、逃げる事ができたのは確認できたが、携帯も何もかも持たずに逃げ出したので連絡が着かない。」


「探して保護して欲しい。」


「其れは良いが、あんたらは大丈夫なのか?」


「悪いが、以前教えてもらったセーフハウスを使わせて貰ってる。」


(ああ、俺使ってない俺の家の一部か?)


「それは構わないが、そこに連れていけば良いんだな。」


(・д・)チッ、なんてこった。厄日だな...と、電話を切り、


まぁ、良い。善児には気付いたら連絡しろとメールを打って置いてと...


他にも会報を送信ッと。


早速、平賀の娘を探すべく街へと車を進ませる。


・・・


・・・


・・・


池袋某所(いけぶくろぼうしょ)


徒歩で、逃亡していた、二人は、道すがら捕まえたタクシーに乗って、


一路、猫の手の事務所へと向かう。


「それで、えっと、そう言えば名前聞いてなかったですね。」


「あっそういえば、私、新日本機巧(しんにほんきこう)開発(かいはつ)研究所(けんきゅうじょ)所属(しょぞく)平賀恵(ひらがめぐみ)と良います。」


「よろしくお願いします。」


彼の話しを聞く限り、どうやら父親が、知り合いから預けられた、素材、マテリアルを元に


エネルギー問題を解決する為の重水素(じゅうすいそ)による核融合炉(かくゆうごう)の研究をして居たが


数日前に研究所が襲撃され、一部の素材と共に研究結果を奪われてしまったらしい。


残りの素材は自分が持ち出し逃げ続けて今に至ると。


それで、父親にもしもの時に頼る様に言われていた探偵事務所(たんていじむしょ)へ助けを求める所だったそうだ、


(。´・ω・)ん?


ということはこの人のお父さんの知り合いって悪次さんなのかな?


「まぁ、でも(この)(まま)事務所に付けば、一先ず安全は確保出来るよ。」


「事務所には依頼者(いらいしゃ)以外辿り着けない様になってるからね。」


そう言って一息ついて、おばちゃんが握ってくれたオニギリを


二人して頬張(ほうばって)っていると、その時に、


後方から接近する車の音を、善児の耳が捉える。


いそいそと片付けるながら振り向くと、


「Go, go, go!」(行け、行け、行け!)


「Don’t let them escape」(逃がすな!!)


「Dead or Alive」(生死は問わない)


「Dead or Alive」(生死は問わない)


「Engage the target!」(目標を攻撃せよ)


「Take them down!」(奴らを倒せ!)



不味い?!カチリと、トリガーを引く音が響き、


其のすぐ後に、突撃銃アサルトライフルを掲げて、後方から左右同時に接近し...


不味い。車のボディの板金じゃ、アサルトライフルの弾は防げない。


当然、僕が来ている防刃防弾パーカーも怪しい。


となると、取るべき選択は…。


「運転手さん!!!追われてるからスピード上げて、そして後ろを振り向かないで!!!」


次の瞬間銃火の雨が、タクシーの後部を貫き、三人の身体に襲いかかる。


硝子が割れ、カンカンカンっと、板金の板を貫く銃火の音がする。


うわぁぁあああああああああなんだ?と運転手が叫び。


僕は、両腕に装備した多目的手甲、ビリビリ君2号の手甲部分を盾にして、


エアバックを発動。(ふくれ)れ上がった。防弾防刃繊維(ぼうだんぼうじん)に、


ボスボスと命中し、その銃弾の雨を防ぎ切る。


そして...相手がリロードの為に、車内に戻った瞬間。


「運転手さん!!!スライドドア開けて!」


開かれたタクシーのスライドドアから、身を乗り出し、圏魂君(けんこんくん)2号を回転しながら、


回転によりギアが組み合い稼働(かどう)し、其の勢いのまま投擲する。


追跡者の突撃銃アサルトライフルに命中後、


衝撃が吸収され、加速そのまま新たに装備された飛去来器翼(ひきょらいきよく)により、ブーメランの様にその手に戻って来る。


1投2投と繰り返し、追跡者のその牙を圧し折り続ける。


「運転手さん、無線で助けを呼んで!!警察を」


心得たとばかりに運転手は無線を起動するが、砂嵐が延々と続き連絡が出来ない?


「あれ?おかしいなんでだ?!」


こうなったら、追跡者を振り切るしか無い。となれば次に狙うのは…


「運転手さん!?車をターンで後ろ向きに出来ますか!?!」


タイミングは一瞬


「一瞬!一瞬だけで良いんです?!」


「任せて置け!よく分からんが、Uターンで、後ろに向けば良いんだな?!これでもF3で鳴らした腕を魅せてやる!!!」


アクセルを吹かせて一気にスピードを上げる。それに合わせて、善児も圏の投擲準備(とうてきじゅんび)を開始して回転させる。


ハンドルを急激に切り、ブレーキを踏みつつ、車を180度回転、


車の後部をスライド。その勢いのまま、善事は圏魂君(けんこんくん)2号を投擲。


狙いが、後方から迫ってきていた1台の前輪に命中、飛去来器翼(ひきょらいきよく)がタイヤをズタズタに切り裂き、


バーストさせ、タイヤが破裂する音が鳴り響く。


後方で、二台の追跡車が衝突し、其の足が止まる。


車が180度回転すると、すぐに前進ギアに入れ、進行方向に向かってアクセルを吹かし加速し、一気に引き剥がしにかかる。


「あんちゃん?!やったな?ところで、今の奴ら何だったんだ?!」


「巻き込んで、ごめんなさい。修理代金は...」


そこにタタタと、銃撃の雨が跳び、残った後部座席の硝子を割り、車内に飛び込んでくる。


とっさに恵を庇って、再度のエアバックが発動、銃火を…。


とっさにガードするが、流れ弾がドライバーを貫く


タクシードライバーのおっちゃんが、血を吐き倒れる...


運転手を失った、タクシーは、進行方向が大きくずれて、道路のアスファルトを越え、


路肩へと突っ込んでいく。


衝撃とともに路肩を突き抜け横転したタクシーから、エアバックに包まれて、


平賀恵と善児が這い出してくる。


タクシーのおっちゃんは...どうしよう?!


携帯で、救急車を呼ぼうにも、当たり一面では、通信障害なのか?


電話が繋がらない...


どうしようと?逡巡(しゅんじゅう)していると、遠くから何か素早い人影がシュンシュンと近づいてくる。


(。´・ω・)ん?


なんかあの動き、見た覚えがある?!なんだろう。


しゅったっと到着した一人の女性は...


あっ?!咲姫さん?!どうして?!


【悪さんに探してって頼まれた...頼まれた...頼まれた...頼まれた。頼まれてストーキング、げっっふんげっふん】


【みんなが探してる...】


「えっみんなって誰?」


「あのーどなたとお話してるんですか?」


「あっ?!咲姫さん!とりあえずタクシードライバーさんの傷を直して貰ってもいいですか?」


「あと、すぐにここから離れないと!」


【すぐに離れて、此の人は私が助ける。】


【悪さんもこっちに向かってる筈だから、合流して。】


遠くのほうで、パトカーのサイレンが鳴り響いている。どうやら、銃撃戦を見ていた誰かが、


通報したのかも知れない。



早速、僕たち二人は、咲姫さんとドライバーさんを残して、南に向かってひたはしる。


事務所からこっちに向かっているって事は、此の道を南に行けば...


それに悪次さんには、常在戦塵(じょうざいせんじん)(いつも其処(そこ)()る)がある。既に動いてくれているなら、きっと間に合う筈。

追跡してきた、残りの1台から、数人の男たちが降りてきて、こちらに向かって、走ってくる。


距離は、まだ少し離れている。

手甲のエアバックで銃火を防ぎつつ、応擊の圏の一撃を繰り出すが、

命中せずに大きな弧を描いて戻って来る。


此の儘、牽制を続けて、なんとか悪次が到着する時間を稼ぐかと...


周囲を見回すと、神田川が見える。確かこの先には...警察署があるはず。


ここで応援をまっていてはと...橋を渡り、進んでいくと、


大きな十字路に差し掛かり、


続々と後方からパトカーが到着し、銃を抜いて、僕らと、追跡者に対して、警告の言葉を上げる。


周囲の通行人が、何事かと振り返り、銃声を聞きつけて散り散りに離れていく。


(。´・ω・)ん?


「あいつ?!悪次といつも一緒にいるやつでは?」と、呟くも、


拡声器(かくせいき)を取り出し、警告の一言を告げるが、そこに帰ってきたのは


突撃銃アサルトライフルの銃弾の雨だった。

何発かの銃弾が、警察官たちの身体を掠める。

致命傷じゃなかったら、咲姫さんの力で治せるけど…。それに制限は無いのか?もし一日の治療回数(ちりょうかいすう)に制限があったら...


そうこうしている内に、警官隊と追跡者たちの銃撃戦が始まる。

そのドサクサに紛れて、其の場を離れようとすると、道を渡って、東へと逃れると其処には、



「Burglar1,Fire at will!,Over」(「バーグラー1、思う存分撃て、以上)


「Engage! Start!Move!Move!Move!」(突撃!始め!動け、動け、動け!)


何か仰々しい、黒光りする獣の顔を刻印(こくいん)されたマスクにヘルメット。

手足の関節部からモーターの駆動音が響く分厚そうな西洋鎧の装甲に

手に持った突撃銃アサルトライフルや、軽機関銃ライトマシンガン

擲弾筒グレネードランチャーを装備した。


数名の集団が道に伸びている都電の線路上に待ち構えていた。


ギョッとなって、どうしようかと逡巡していると、攻撃開始のハンドサインを下し、


警官隊の横から、銃撃と擲弾筒グレネードランチャーによる、砲撃を敢行し、


警官隊が散り散りに、逃げ惑い。


軽機関銃ライトマシンガンの射撃を受けて、盾にしていたパトカーが、爆発炎、一回転して、吹き飛んでいく。


不味いと、手に持った圏魂君2号を加速して、遠投する。


回転するギアの機巧で加速した一撃が、直立するそれらの兵士に命中するが、其の体を揺らす程度で、


反撃の銃撃が、エアバックシールドに突き刺さり、戻ってきた圏を受け取ったその手に一筋の血が流れる。


不味い今の掠った一撃で手が痺れる。


心配そうに恵がこちらを見てくる。


大丈夫だよと、ニッコリ笑って、エアバックを盾にして、必死に時間を稼ぐ。


ジリジリと装甲服をきた、集団が二組に分かれて銃撃を撃ちつつ、にじりよってくる。


何故かこちらには擲弾筒グレネードランチャーを撃ってこない…。恐らく、彼が持ってる素材が破損する事を懸念してるんだろう。


だけど、ジリ貧なのは変わらない。接近して、スタンナックルを食らわせるか?でも一撃で斃れなかったら?


もし絶縁処理されていたら?


そこで終わる。


常在戦塵(じょうざいせんじん)(いつも其処(ここ)()る)~


其処に車の加速する音があたり一面に響く、此の聞き慣れた音は?!


よく見慣れた、事務所のワンボックスカーが、警官達の後ろから飛び出し、


十字路を右に、線路に併設されるガードレールを突き破りながら、


装甲服の列に向かって突撃して行く。


何体かの兵士が、巻き込まれ車の下に引き倒され潰され、端の建物に衝突するまで其れは

続き、車の中から、凶相の男が降りてき来る。


足元の(たお)れた装甲服の兵士に向かい、パイルバンカーを起動したXーIX(テンナイン)多目的特殊警棒を突き出し撃発


射出された杭が、装甲服の上から衝撃を放ち、絕鳴(ぜつめい)の一声を上げる。


激高しながらナイフを振り上げ接近する。装甲服の男に対して、XーIX(テンナイン)多目的特殊警棒を、組み換えながら、


一本の変わった形のブレードを形成させる。そのブレードは奇妙に振動し、其の刃を振るい、


構えた突撃銃アサルトライフルとナイフごと、その腕を切断する。


その切断面は、奇妙な事に、まるで鏡のように美しい断面を魅せていた。


・・・


・・・


それは、装備品の整備途中の事、


おい、善児、XーIX(テンナイン)のその刃には、気軽に触れるな?


XーIX(テンナイン)多目的特殊警棒には、いくつかの形状と、使用用途が分かれていて


それを組み合わせて、色々な効果を魅せる。


これはそのうちの一つ、限界(げんかい)引張応力(ひっぱりおうりょく)ブレード。


言弾(ことだま)により、ブレードの素材の引張応力(ひっぱりおうりょく)を限界まで高めて


触れた物体を引張応力と振動により切り裂く。


良くある単分子カッターとはまた違ったギミックの代物だ。


扱いには気を付けてくれ。


・・・


・・・



絶叫を上げて倒れる仲間を見つめながら、道を挟んで十数mの彼我の距離を一心不乱に、射撃の雨を降らせる。


(・д・)チッ


とっさにワンボックスカーの影に隠れてやり過ごし、


ワンボックスカーに命中した弾痕は、突撃銃アサルトライフルの一撃は弾くが


軽機関銃ライトマシンガンのそれには耐えられず弾痕を刻む。


どうにか、善児と合流しないと…


...


...


...



えっ?悪次さんが、躊躇無(ちゅうちょな)く人を殺した?!でもこれで間に合った?!切り抜けかも?!!!


だが、一向に悪次が、言弾(ことだま)を使おうとしない。何故だ?


そこに、悪次が叫ぶ。耳を塞いで目を瞑れ!!!


瞬間、XーIX(テンナイン)から放たれた擲弾が、空中で炸裂し、


音響と閃光が破裂して、視界を潰す。



「「「「「shit!」」」」」(((((クソっ!)))))



強化装甲のヘルメットが一時的に、ブラックアウト。其の隙に、


走れ!と!叫ぶ。


善児達がこちらに迎える様に、その手から新作のガジェット、簡易エアバックキューブを投擲し、起動。


地面に杭打ちされた手のひら大のキューブが、エアバックを展開。空気と繊維の防壁を築き、二人の姿を目隠しする。


そしてXーIX(テンナイン)多目的特殊警棒を組み換え、銃形態(杭打ち)へと替えて


射撃を行い敵の注意をこちらに引き付け援護する。


撃ち出された金属製の杭が、西洋鎧の装甲に命中して、其の装甲の一部を削る。


決定打にはならないその一手に、苛立(いらだ)ち紛れ声が響く。


反撃の流れ弾が、ワンボックスカーと防壁に命中し、音を立てて弾かれる。


「クソッ」と、悪態を吐きつつ、這々の体で、合流した二人に向かって、


無事を確認し、安堵する。


「悪次さん!!!早くRe:word、言弾(ことだま)でまとめて、いつも通りやっちゃってください!!」


反撃の応射を繰り出しながら、答える。


「今は無理だ。奴ら日本語を話してない。さっき何度か試したが、反応が無い。」


「そもそも、もし言葉が通じても、複数の対象なら、精々一瞬動きを止めるぐらいしか出来ない」


「俺の言弾(ことだま)は、対象は基本的に会話している一人だけで、さらに話す言語が一致していないと、使用できない。」


「くぁwせdrftgyふじこlp;」


「くぁwせdrftgyふじこlp;」


射撃の端々に、英語らしき言語の罵声が飛び交う。


「万能の様に見えて、その実、出来る事は少ない。」


「多人数に囲まれ、互いにカバーしつつ撃たれていたら、話してる最中に撃たれて終わる。」


続く応射の音階が鳴り響き、装甲服の一段に命中するが、決定打にはならない。


「じゃぁ、どうしたら...?!」


【ううう...】


【くそったれが、俺の腕が...】


【サベージ1(コーディー)?!サベージ3(ポセ)とサベージ7(トミー)がやられた?!】


【行け!行け!行け!まだ二人共のバイタルは...生きてる。】


【サベージ2(ゲイズ)、サベージ4(シークイーン)、サベージ5(ハンツ)は、ここで奴らを釘付けにしろ。】


【俺と、サベージ6(ゼン)が回り込んで、二人を救出する。】


(。´・ω・)ん?


なんかさっきから誰かの唸り声が、僕でも悪次さんでも恵さんでも、誰でもない?


誰かの声が聴こえる


「というか?今まで外国人相手の時はどうしてたんですか?」


「そんなの決まってる。逃げ出してそれで終わりだ。その後は成り行き次第で、どうとでもなるが...?」


と、会話会話の途中で応射をするも手数の数が圧倒的に違う。

今はまだ盾にしているワンボックスカーが耐えているが...


【いつもは常在戦塵(じょうざいせんじん)(いつも其処(ここ)(いる)る)で不意打ちしてたが、今回は相手が多すぎる…。】


【もしも、お前のギフトが...俺の思っている通りであれば…。】


「今回は、それで終わりそうにも無いな...」


となれば...


...


...


...


「あっ悪次さん、さっきの相手がそこで(たお)れてるけど、まだ生きてるみたいです。」


「ああそれか?まだ止めは刺してないからな。」


そうなんだ...てっきり殺したのかと思ってた...


「それで向こうの二人が、サベージ1(コーディー)とサベージ6(ゼン)が回り込んで救出に来るみたいです。」


どうしましょう?僕が応戦します。とグルグルと(けん)を回して牽制(けんせい)を加えようとする


その手を止めて、悪次は、次の言葉を吐く。


「なんで、お前相手の名前を知っている?( ̄ー ̄)ニヤリ」


「えっ?だって声が聴こえるじゃないですか?」


すると、平賀恵(ひらがめぐみ)が、口を挟む。


「えっ?相手の人たち、ずっと名前なんて喋ってませんよ?」


「多分会話してるの罵声(ばせい)のスラングだけで、後は無線かなにかで話してると思います。」


(。´・ω・)ん?


(。´・ω・)ん?


(。´・ω・)ん?


・・・


・・・


・・・


「どんな依頼だったんですか?」


「それは言えないなぁ。守秘義務があるしなぁ。」


【猿の手って知ってるか?】


【ん(。´・ω・)ん?確か、海外の短編ミステリー小説の話ですよね。3つの願いを叶えるって?】


【あーそうだ、その猿の手だ。所謂(いわゆる)都市伝説(としでんせつ)に近い存在だが、現実にも存在する。

但し、それは、同じ名前を冠する何でも屋だがな?】

【姿は2mを超える大男で、夏場でもコートを着て歩く変人で、

話では、そいつも依頼人の願いを捻じ曲げて叶えるらしい。その事実を相手に隠してだが...】


【最悪、殺される以上の惨状(さんじょう)を撒き散らしながらな...だから奴は何でも屋でもなんでもない唯の殺し屋だ。】


【それと今回の依頼の話と何が関係あるんですか?】


【そうだなぁ、今回の依頼人の女性は、ストーカーに付きまとわれていて、その相手がどうやら

思いを遂げる為に、その猿の手に依頼をして願いを叶えようとしているらしい。】


【それって、今日会えなかったの可也(かなり)不味(まず)いのでは?】


【そうだなぁ、巻き込まれたら死ぬかもしれなぁ。俺には関係ない話だが。】


「兄ちゃんも余り深く聞いてやるなよ?探偵には守秘義務(しゅひぎむ)があるからな。」


「すいません...」


...


...


...


そこに、「探偵さん!!!!」


のほほんとした、青年がその場所に舞い戻ってくる。


何故、戻ってきたと訝しむが...


「さっきの女性は警察に保護して貰いました!!!もう逃げましょう。」


【だが...コイツを完全に止めないと?!奴には他人の願望を捻じ曲げて実現する力がある

ここで止めなければどうにもならん?!】


【もはやRe:Wordするしか無い!!だが最後のキーワードが足りない。

やつの存在を書き換えるその言葉が?!!必要だ!】


なにか無いか、なにか無いか?!と考え思考する。


ん(。´・ω・)ん?Re:Wordなんの事だろうと?!疑問に思う

善児を他所に悩む探偵眼の前に、一匹の黒猫が横切る(ΦωΦ)


【俺は猿の手、願望を叶える存在だ!!!

どこの馬の骨とも知らない名も無い貴様らにその邪魔はさせない。】


ん(。´・ω・)ん?


どゆ意味?


…。


…。


…。


「善児、お前、人の心の声が聞こえてるだろ?しかも、言語翻訳(げんごほんやく)()きで...」


「さしずめ。鳶耳兎耳(えんもくとじ)ならぬ。心耳心眼(しんじしんがん)って感じか?」


心を研ぎ澄まして、物事を深く理解したり判断したりすること。心の耳と心の眼を使って洞察するとの意から。

※事典から引用四字熟語辞典オンラインhttps://yoji.jitenon.jp/yojim/6873


「心の声が聞こえてるのはなんとなく理解っていたが...これで勝ち目がでてきた」


ノールックで放たれる、杭打(くいう)機巧(きこう)の杭が、装甲服の装甲を掠め、牽制(けんせい)する。


「相手の名前と特徴を教えろ!」


そして善児のその手を取ると…。


悪次の脳裏(のうり)に、その場の人間のあらゆる思考が、流れてくる。


【なんだあいつら?!また悪次の奴が、厄介事(やっかいごと)を持ち込みやがった...】


Savage(サベージ)3伍長ポセ・カルフォルニア…。】


【痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇ痛てぇくそったれが!】


【うぅぅぅうぅぅぅ、くそったれが、装甲服がバグった!再起動まで120秒…。】


【痛い。痛い。こんな仕事(警察官)なんて辞めておけば良かった。これが終わったら実家帰ろう×3】


Savage(サベージ)1分隊長(軍曹)...】


【コーディー・ウッドルックフォレスト...落ち着け、斃れた仲間はまだ救出出来る。】


【目標物は、目と鼻の先だ。仲間を救出して、任務もクリア出来る。】


【「奴らに遠距離からこちらの装甲服を破る手段は無いはず。接近しなければ問題ない各自、包囲射撃(ほういしゃげき)を繰り返し、徐々に輪を縮めて距離を保ったまま、仕留めるぞ。」】


【死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。】


【怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!お家帰りたい。】


Savage(サベージ)2ゲイリー・キューダス…伍長。了解。】


Savage(サベージ)4コーラル・クイーン...了解。二人共、油断がすぎる。】


Savage(サベージ)5ハンツ・ハイデェルカ...了解。ここで奴らを釘付けに、奴らに遠距離からこっちを仕留める手は無い。】


Savage(サベージ)6ゼン・ラン...了解。あーうっとおしい。終わったら…。一杯やりてぇ。クソデケェ面倒事こさえやがって。あいつらの尻の穴増やしてやる。】


【不味いな。車の下に居るやつが暫くしたら復活しやがる?!】


【【【【【【なんだと?】】】】】】


(・д・)チッ


【こっちの思考もダダ漏れか?これを今まで、処理しながら生きてきたのか?】


【なんで平気な顔してたんだ?こいつ】


【えっこれってみんないつも聞こえてるんじゃないんですか?】


【やけにみんな独り言多いなって思ってました!】


【こいつは思考の範囲を制御できないのか?】


【うーん試してみますけど?それよりいけますか?】


Savage(サベージ)1分隊長?此の声は、どこから聴こえる?】


【アンタが、隊長か?一体何が目的だ?】


キッン


迂回して接近しようとする。コーディーの動きがSavage(サベージ)1が、其の足を止める


?!?!?!?!?!?


【何だ?!此の音、身体が止まったぞ?】


【よし、一先ず一段階成功!善児、そのまま送れ。】


【此の声は...眼の前のターゲットからか?なんだ、通信機器をジャックされたのか?】


Savage(サベージ)2ゲイリー伍長。ステータスの診断を行え。】


Savage(サベージ)2了解。・・・診断結果。オールグリーン。異常なし。】


善児、ここで簡易だが、名付けを行う。奴らには聞こえない様に試せ!!


…。


…。


…。


言霊(ことだま)改め、言弾(ことだま)。紡ぐ名前は。


(ことわり)を読み解き、汝の断りを省き、我は難事を成す。》


《汝の名は、「言弾(ことだま)」、されど、その名の定義を今一度変える。》


《蛙の子は、孵る。》


《ならば、我が二つ名は、【バレットオブワード(bullet of words)】!!!!Re:Word(リ:ワード)!!!!》


《我は悪童悪次!!!悪事を成す!!!


Savage(サベージ)!!!お前らの目的を言え!】


バッン!!!


宙空に、まるで硝子の窓に、穿たれた弾痕の様に、


言葉の火箭(かせん)(線)の軌跡が刻まれる。


同時に撃ち抜かれた装甲服に


弾痕が刻まれ、機器がエラーを吐き出す。


【【【【【なんだ今のは?!?!】】】】】


【各自、損害報告(そんがいほうこく)を!】


【くっそ?何があった?!】


【何にか撃たれた。装甲の20%が破損。】


【こっちは、獲物が破損した。サイドアームに切り替える。】


【足の装甲の薄い部分を撃ち抜かれ、駆動部(くどうぶ)が破損した。】


【各自、ランダム回避。追撃に備えよ。】


・・・


散開する。装甲服のモノたちを他所に、善児たちは、追撃に入る。


・・・


・・・


言葉の弾痕により、射撃の切れ目生じ、その間に、


空いた手で、回し続けた圏を、投擲、割れた装甲の隙間に、ジグザグの軌跡を描きながら、


命中し、再び善児の手に戻る。


【取り敢えず会話をして、時間を稼ぐ。各自復帰したら包囲射撃を再開。】


【復帰したら、警官を足止めしてる。Burglar(バーグラー)1と、挟み込んで仕留めるぞ】


【言葉巧みに、話を引き伸ばして、挟み撃ちとは、良いご身分だな?】


バッン!!!


装甲服の計器類が、レッドアラートを鳴り響かせる。絶妙に、急所を外して刻まれる弾痕に、


何が起こったのかもわからないまま右往左往しつつ、方位射撃を再開する。


Savage(サベージ)1、擲弾グレネードの使用許可を!】


【ダメだ、ターゲットが破損する可能性がある。許可できない。】


【其れよりも何故だ?!こっちの会話が筒抜けだ。】


【そうか?お前たちの目的は、やはり研究所にあった。あの素材、マテリアルだな?】


【だが、それは、元々お前たちの物じゃない!?何故奪う。】


バッン!!!


銃火に晒される前に、言葉の銃弾が、応撃を許さず。装甲を剥がし始める。


【あれは、将来のエネルギー問題を解決するのに必要なモノだ。】


【それは、我々こそが相応しい。】


【それは相応しいかは、お前が決めることじゃねぇ。】


バッン!!!


【グッ!!?!】


【そもそもあれは、お前たちが思ってるような物じゃない。】


バッン!!!


徐々に弾痕が刻まれる度にその彼我の距離が離れていく。


(この)(まま)挟撃(きょうげき)された場合、こちらが不味い...


となると…。


【おい、兵藤。そっちに居る。襲撃者(しゅうげきしゃ)を死んでもこっちに向かわせるな。】


【こっちに流れてきたら、俺もお前達も死ぬぞ?!精々(せいぜい)気張れ!】


ん?な?


警官を指揮する。兵藤学(せいどうまなぶ)は、これは悪次の奴の声?!


ままよと、惑いつつ、部下たちに指示を出し、叱咤(しった)する。


…。



…。




…。


やはり、元凶(げんきょう)は…。


顔なじみの平賀に頼まれて…


Re:Wordと言霊(ことだま)で作った。


あれが原因か…。


続く言葉の応酬は、互いの主張を繰り返す、堂々巡りの不毛な会話。


【貴様らはなにも理解ってない。重水素(じゅうすいそ)による核融合(かくゆうごう)は、エネルギー問題を解決する。技術だ。】


【独占した者《国》が、他よりも優位に立てる。】


【どこの国の人か知らないけど、それは可笑しいんじゃないかな?】


【他人のモノを持ち主の人格を無視して、まるで、自分たちのモノの様に、無断拝借(むだんはいしゃく)して使おうとしてるけど】


【それって本当に正しいの?】


【確かに、自分の物の様に扱おうとしてるが、こいつの言う通り、其れは違うぞ?】


バッン!!!


どこからとも無く飛来する銃火に、接近すれば装甲服ごと斬られ、離れれば不可視(ふかし)の銃弾で回避行動を取ろうにも、回避出来ない。それは、そうだろうな、俺の言葉の銃弾は、言葉を伝えた瞬間に命中してる。


避けようが無い。


まぁ、其れ単品であれば、不発する手段は色々あるが...


今は、こいつのお陰で其の穴は塞がってる。


【自分たちで遣りたかったのなら、教えを請うなり、協力を求めれば良い。】


【それができないのは…。】【【狭量(せんりょう)なだけだ!!!!】】


【【話し合う事すら拒絶(きょぜつ)して、自らだけの理を考えるのは、間違ってる】】


バッン!!!


【辞めろ、辞めろ。撃つな!!!何故、一方的に撃ってくる。?!】


【不味い不味い、回避行動が取れない?!何か打開策を考える時間を稼がねば。】


何人かの兵士が膝を着いて、倒れるのをなんとか防ぎつつ、

途絶えぬ其の言葉に...


【全部、聞こえてるよ!!!その表だけ取り繕ったその言葉も意図も!!!】


( ゜д゜)ハッ!


【なんで理解るんだ?!貴様ら、絶対性格悪いだろ?】


【日本の妖怪、サトリか?!?!心を読む化け物は、きっとみんなに嫌われてるはずだ!!!】


【嫌いなら嫌いで結構、俺は俺を嫌いな奴に好かれたいなんて趣味はねぇ。】


【俺は俺を大切にしてくれる誰かの為に走る。】


バッン!!!


【違うよ。悪次さん。僕ら二人は、大切にしてくれる大切な人の為に走るんだよ!】


【嗚呼、そうだな。】


【それは、いきなり撃って来て、打ち返したら被害者ぶるお前じゃない。】


【誰だって撃たれれば痛い。其れを自分たちだけ、安全な場所から延々と撃ち続ける。】


バッン!!!


【その性根が気に入らない】


【だから俺は作った...を】鳥が(さえず)(この)(おか)を(事務所)を


「悪次さん!!!!Re:Wordで!」


【そうだなぁ、締めの言葉を紡いで〆るか?】


四月に雪が降ると人は言う


けれども、此の世の中には真夏の八月に雪が降る事もある。


俺は其の事を不思議なくらい覚えてる。意味もないのになぜか?

※昔歌詞の提供をしたことが有る


だから、今一度、雪を降らせよう。


其の言丿葉を刃にして、紡ぐ言葉は、


(ことわり)を読み解き、汝の断りを省き、我は難事を成す。》


《汝らの名は、「Savage(サベージ)」、されど、その名の定義を今一度変える。》


《蛙の子は、孵る。》


《ならば、汝の名は、「(戦場から)去るべし」!!!!Re:Word(リ:ワード)!!!!》


《我は悪童悪次(あくどうあくじ)!!!悪事を成す!!!》


夜を照らす天星(あまぼし)が、一筋流れ、


我は言葉を繋いで、硝子の薄氷を踏む


振るう言葉は、雪・月・花。


言ノ葉は雪となり、彼と彼女らの心にも降り積もる。


其の姿を月のように照らし、華のように咲け。


そう言って、紡がれた言葉によって、


(戦場を)去るべしと、名指しされたそれらは、意思とは反対に戦闘を中止し撤退に入る...


だがそれで、一件落着とはならないだろう。


悪次は、(おもむ)ろに恵の持っている大きなバックを掴み。


今まさに撤退しようとする。


Savage(サベージ)1こと、コーディー・ウッドルックフォレストに向けって、放り投げる。


平賀恵が、其の行動を非難すると…。


「嗚呼、気にするな。既に親父さんから許可を取ってる。」


「あれは、もう渡してしまって良いものだ。それに持っていても意味がないからな。」


不審に思いつつ、受け取ると、倒れた仲間を回収し...


ん?仲間にどこから現れたか分からない女が張り付いてる...


何をしているのか?と、訝しみ、声をかけようとすると、次の瞬間には、どこかへと消え去っていた


Savage(サベージ)1は訝しみながらも、去り際に、【今度あった時は、容赦(ようしゃ)はしない。】告げるも、


惜しむ首を残して身体は既に闘争を終えて逃走に入っていた。


「Burglar1,Objective secured. Retreat,No casualties、Over」(目標は確保した。人的損害なし,撤退する)


方々で、スモークグレネードが炸裂して、襲撃者たちの姿が隠れ、そのまま撤退していく。


「悪事さん、良いんですか?あれあげちゃって?」


「まぁ、良いんじゃないか?既に仕掛けはしている。後は、上手く仕掛けが発動すれば良い。」



やはり、元凶は…。


顔なじみの平賀に頼まれて…


Re:Wordと言霊(ことだま)で作った。


あれが原因か…。


ブルーバード(青い鳥)、事務所が入る寂れたビルを作る代わりに提供した


超現実的(Surrealism) 現実(Reality) 創造性(Creativity)


超伝導放射能吸冷却材(Superconducting radioactive coolant)


SRCと名付けた、その素材、


放射能を吸収し冷却し、超伝導(ちょうでんどう)を備えた...核融合炉(かくゆうごうろ)開発(かいはつ)に必要なそれを。


其の実、単なる


Spessartine Garnetスペサルティンガーネット


和名:「満礬柘榴石」(まんばんざくろいし)に


SRCの頭文字のそれに言葉を当て嵌めて、名付けを付けて


作っただけのいつでも元に戻せる。万能の張りぼてだった。


一度効果を発揮したら、元に戻るようにした。先に、奪われた物も含めてな...


だから、奴らは何もわからないまま、ありもしない未知の力を持つ


「満礬柘榴石」(まんばんざくろいし)を探し続けることになるだろう。


偽物だと断じようとも、実際にその効果はあるからな、一度きりだが...




~数日後~



負傷した警察官や傷を負ったモノ達を、咲姫が修復し終えて、から、


恒例のすき焼きタイム。


相変わらず使ってる肉の種類は不明。


ムスッとした兵藤学は、一向に事情を説明しない悪次達に憤慨しつつも、


食卓を囲む。


あいも変わらず、咲姫が給仕をするが、僕が代わりにやろうとすると、怒られるんだよなぁ...


モグモグと、煮込んだ肉と具材を食べる。


で、あの後どうなったんだ?


と、同席する。平賀恵くん、改めて平賀恵さん...


どうやら、僕は女性と男性を間違えてたみたい。心は読めるのになんで?分からなかったんだろうか?


同席する彼女を見ると、アフロの様に膨れ上がった髪は、流れる長髪に代わり、今は女性らしき姿を見せている。


あのボンバーヘッドは趣味やファッションでしてたのではなく、ただ爆発に巻き込まれた結果かもしれない...


その恵さんの話では、研究所を移転して、別の場所で、再スタートをしたらしい。悪次さんが作った素材抜きで。


また、襲撃されないように、事務所の周辺にあるガジェットと同じモノを配置して、部外者が入れない様にするおまけは付きではあるけれども、


僕の方は、おばちゃんのお店や、タクシードライバーさんへ、謝罪と補償をするべく奔走して、


ちょっとお財布がピンチ!これも仕方ないな...


気が重いのは、おばちゃんのお店に行きづらい事だ...雨の音が心做しか重く感じられる。


僕は、中道善児(ちゅうどうぜんじ)(この)の物語の主人公だ。


漸く、相棒らしい事が出来たのかもしれない。


趣味の日々の日課は、街のゴミ拾い、打音検査で設備の点検


今日も今日とて、街を歩いて耳を澄ませ、人の心を聞く。


きっといつか、助けを求める誰かの声を聞けるように。


僕は一日一膳、ご飯をたぶる。


今日も異常なし、世は全て事もなし。


・・・


・・・


俺は、悪童悪次(あくどうあくじ)(この)物語(ものがたり)の主役でも、脇役でも、唯の通りすがりの通行人ですらない。


日々の日課は、相棒に訓練を課する事。


今日も今日とて、いつかあいつが独り立ち出来るように、


唯の阿呆な己を眺めて


一言、つぶやく。


「全く無意味な事をしてやがる。」


一日一握の声を掴み、我らは進む。


今日の出来事を振り返り、今度も助けられたなと、自嘲して、


鳥の囀りを聴きながら、スマホを操作する。


次の事件は、既に始まっている。


おしまい


そしてつづく

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