表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪次と善児  作者: 幸せ泥棒
2/5

2話「ギフテッド」

今日は、善児が、悪次の事務所で働くようになってからの初日


朝早く起きて、趣味の日課である街のゴミ拾いしていると、


早朝の街で耳をすませて、街の喧騒も静まったを何かを聴く、


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここは?ガタンゴトン、ガタッちょっといつもと違う?


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


通過する電車の響きを聴く


後で、駅員さんに教えてあげないとなぁ、


街を歩き回り、今日も日課を済ませ


程々な長さでラフに流された栗毛に、髪の所々に適当なツイストウェーブを湛えた無造作なマッシュ。


表情は人の良さそうでいて朗らかさが有りつつ、それでいて垢抜けない。


そしてほんのり、鋭さを備えつつ、そのほっぺたは。ぽやぽや~としている青年はフリフリと髪を振り乱しながら


顔見知りのゴミ拾い仲間のおじさんに鼻歌交じりに挨拶する。


「おっ?どうしたんだ?今日はやけにご機嫌じゃないか?」


「どうも赤松さん、それが新しいバイト先が決まって今日が初出勤日なんですよ!」


「そうかそうか、それは良かった。」


好々爺風の姿のその男に「じゃぁまたね。赤松さん。」と別れを告げて、


いつも通り、行きつけの大衆食堂で、焼き魚の定食をたぶる。


「いただきます!」


そう言っていつも通り焼き魚定食をほたほたと、頬張る。


今日は、奮発して、生卵も付けちゃう。


・・・


・・・


・・・


「おばちゃん!ごちそうさまでした!」


食事を済ませて、朝の通勤ラッシュに揉まれつつ、目的地の駅の改札へ向かう。


はたと、何かに気付いて、駅員さんに、何かを伝え、


今日も「世は全て事もなし」


そそっとな?!と、階段を二段とばしで飛ぶように上り、


悪童悪次(あくどうあくじ)の探偵事務所、寂れたビルの2階へと、歩を進める。


そこには、机の前で新聞を読みながら気だるそうにコーヒーを啜る悪次さんが居た。


髪は相変わらずのくせっ毛に、ボサボサ頭の寝癖。


その表情は、僕よりも年上の筈なのに、何故か若く見える童顔?なのか、全然、貫禄とか大人の男性とは、見えない。


表情は暗く、顔もどこにでもいそうで居て、どこにも居ない。


特徴はあるはずなのに何故か、影が薄そうで、人混みに紛れたら、どこに居るか分からなくなる。

そんな特徴のない顔の彼を眺めて


「おはようございます!!今日からよろしくお願いします!!」


腰を90度曲げて、元気よく挨拶する!!!


勢い余って、背負っていたリュックから、ダバダバダーッと、内容物が溢れ


あぅッ?!


「元気が良いなぁ?まぁ元気が無いよりマシだな?」


いそいそと溢れた持ち物を拾い集める僕を見つつ、


其の姿を眺めて苦笑する悪次さんは、


「今日は特に依頼もないし、もっと遅くから着て貰っても構わないんだがな。」


と、これからの話を進めて行く。


「それじゃぁ、早速、雇用契約とかしちめんどくせえが、諸々の条件について話しておくか?」


「雇用契約書に労働条件通知書を用意しておいたから、目を通してくれ。」


「お前には、諸々の書類を後で提出してもらうが、めんどくさいから後で良い」


「条件読んで、納得したら、署名捺印してそれでしまいだ。」


差し出された書類を読んでいくと、


勤務時間は9時~17時、交通費、その他必要経費や残業代は別途支給、


色々書かれて居たけど、特に問題はなさそう。最後の一文を除いて、


死んでも文句は言いません。其の旨を了承します。


エッ?


「あーそうそう、社会保険、雇用保険、住民税と所得税の手続きしておくからな、


後で、住民票とか諸々持って来いよ。手続きに必要だから。」


と、大夫投げやりな声で答える。


エッ?それって普通に正社員では????!


「それからこれは給料の前払いだ。受け取れ」と、


何やら分厚い紙袋を渡される。


ん(。´・ω・)ん?


「なんですか?これ?」


「あー昨日もらった依頼料の半分だ。受け取れ。一々残業代とか計算するのめんどくせえ。」


エッ?!それって共同経営者というか相棒では?


福利厚生とか住民税払ったら、悪次さんの取り分の方が少ないんじゃ?


「安心しろ、事務所の家賃とか光熱費や諸経費を抜いて折半にしてる。」

「それに福利厚生は会社の基本だからな。」


「ついでに慰安用の温泉宿もある。」


エッ、やっぱりそれッて共同経営者でゅは?


なんか、グイグイ距離感詰められてるような?????!!!!


「元々お前が稼いだ金だ。ちゃんと受け取れ、説明するのもめんどくせぇ。」


こちらが心配するすべてを、めんどくせえの一言で封殺して、そのままの流れで、押し切られて

雇用契約に僕はサインする。


「どうせ依頼もないし、今日は必要書類を集めてこい。有給にしておくからな。」


ん(。´・ω・)ん?あれれれ?


「あっはい、ありがとうございます!!!」


その前に、前々から気になっていた事について質問してみる。


あの...あのときのアレって何なんですか?


・・・


・・・


・・・


「金を貢いで、尽くしても、振り向いてくれない。

だから相手を殺して、自分も死ぬ。」


パリッ゙ン、暴力の暴風がキャンセル


「だったら、お前は、愛する誰かが、例えば俺が金をやるから振り向いてくれって謂ったら、

その誰かに振り向く、そんな愛が欲しいのか?」


パリッ゙ン、次の攻撃も…


「そもそもお前が相手を好きだったとしても相手がお前を好きになってくれるとは限らないんだぞ。」


パリッ゙ン


次々とその思想、その思考を分解して、解体する。


・・・


・・・


・・・


(ことわり)を読み解き、汝の断りを省き、我は難事を成す。》


《汝の名は、「猿の手」、されど、その名の定義を今一度変える。》


《蛙の子は、孵る。》


《ならば、汝の名は、「猫の手」!!!!Re:Word(リ:ワード)!!!!》


《我は悪童悪次(あくどうあくじ)!!!悪事を成す!!!》


渾身の力を込めて、言霊を放つ。


世界が一瞬、暗く儚く、染まり、空が晴れる。


夜なのに黒と青のコントラストが、混ざり、何かが決定的に変わる。音がする。


必死の言葉に、力尽き、膝を落とす探偵に、向かい。猿の手が、その剛腕を振り下ろす。


「探偵さん!!!!!」


その手が探偵の側頭部にめり込む。


絶対のピンチに鳴り響く....



ぷにゃーん…


ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに

ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに

ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに

ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに


ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに

ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに

ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに

ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに


何やら可愛らしい音が鳴り響く。


ん(。´・ω・)ん?


あれれおかしいな?


・・・


・・・


・・・


あれって、絶対なにかしましたよね。悪次さん...?!


「あーあれかぁ?まぁ一応、組むからにはお前にも関係する事だしな。」


「少し雑談がてらに話すか?面倒なことになるから他には漏らすなよ。」


そう言って、片手で、携帯電話の操作をピコピコと繰り返しながら、悪次は悪事を練り、話す。


「俺は、アレのことを便宜上、ギフテッドっと言っている。」


ギフテッド?と疑問を浮かべ、


確か...


ギフテッドとは、生まれつき高い知性や特定の能力が突出した人のことである。神様からの贈り物という意味で「Giftedギフテッド」と呼ばれている。先天性の才能であるため、早期教育で得られるものではない。※IDEAS FOR GOODより引用https://ideasforgood.jp/glossary/gifted/ 


って、先天的に何か優れた能力を持ってるって話ですよね。


「まぁ、概ね其のとおりだが、俺が言ってるのは其の定義とは少し違う。」


「今までの依頼で出会った中でも、色々なギフテッド持ちに出会ったが、其のどれも、其の定義だけには収まらない摩訶不思議な力を持った奴らが居た。」


「俺のギフテッドにも、特にそれだけでは説明出来ない点がある。」

「それで俺のギフテッドは2つある。」


エッ?一つじゃないんですか?


「まぁ、2つ持ちは珍しいかもしれんが、統計とかは取った事が無いので、他にも同じ様な奴がいるかもな?」


それで俺の手持ちの札は...


まずは一つ目、相手を論破する事で、相手の動きを止める事が出来る。


恐らくお前が疑問視してるのは、このギフテッドのことだろう。


それぞれ小、中、大と、効果に違いがある。


小は、単一のワードでの反論、相手の動きを一瞬止められる。


中は、複数のワードを組み合わせたワードの反論、相手の攻撃を撃ち堕とす


大は…まぁそれ時々で効果が変わるから、俺にも詳しくは分からん。


Re:Wordは、文字通り言葉の定義を書き換えて其の存在にまで影響を及ぼせる俺の切り札だ。


効果範囲は、俺の声が届く範囲内で、それ以上離れたら何もできん。


2つ目は、何故か毎回、迷っても依頼人に最終的には出会い謎の結果がつきまとう奇妙な運命。


「もしかして、毎回迷子になる奴ですか?」


「まぁ、便宜上迷子って言ってるが、実際は違う。直感に従って行動しないと、

後で痛い目を見るのがよく理解ってるからな、それに従って単純に行き先を変えてるだけだ。」


「急がば回れって言うしな。結局、依頼人には出会うし、それまでにピースをかき集めなければ、死ぬ。」


「それよりも、お前も持ってるだろギフテッドを?お前が居なかったら、あの時勝て無かった。」


ふむふむ、と相槌を打ちながら、頭の中で整理中に、突然、僕に話が振られて、


びつくりする?!


「えー?!?僕にそんな特別な能力なんて無いですよ?やだなぁ、悪次さん。からかわないでくださいよ?」


「まぁ、何にせよギフテッドは、本人も気づかない場合があるしな、かくいう俺の迷子も、原因を説明できないし、気づいたのもここ数年の話だ。」


「何も知らないまま使ってた。」


そこは本来の意味のギフテッドと同じなんですね?と思いつつ、僕のギフテッド?!一体何があるんだろう?


そう思いつつ、有給を貰ったし、早速必要書類を集めようと、その場を離れて、まずは、区役所に向かう。


その後姿を眺めながら、悪次は、冷めたコーヒーを啜り、呟く。


恐らく...奴のギフテッドは…?


手に持った携帯には、着信音が鳴り響いて居た。


・・・


・・・


・・・


其の日は半日、必要書類をまとめる為に費やし、日が暮れる。


教えてもらった電話番号に電話して、悪次さんに告げると。


ああ、構わない、そのまま家に帰れ、俺は今日やることがあるんだ。


恐らく明日以降に動きがあるから、それまで待機だ。


明日は、昼ぐらいから着てもいいぞ?


翌日、言われた通りに、昼下がりまで、日課のゴミ拾いと、


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここは?ガタンゴトン、ガタッちょっといつもと違う?


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


通過する電車の響きを聴く


あっ今度はこの車両くんの体調が良くなさそうだ?!教えてあげないとと?


駅員さんへの報告をすませ。意気揚々と事務所へと向かう。


「悪事さぁーん!必要書類集め終わりました!!」


あっでもこれってサインと、前後して順番逆では?と思いつつ、


「それくらいは、適当に辻褄合わせしておく。それよりも...」


「依頼人だ」


と、答える悪次の正面に、丁度事務所の真ん中にある応接ソファに、誰かが座っている。


「あっお客様でしたか?!お茶を出さないと?でも、僕ここの事務所にまだ何がどこにあるか知らない?!」


と、アワアワと阿波踊りを披露する羽目に。


「それならもう俺が出してる。出かける準備だけしろ。」


「必要なものは其処にまとめてある。そのアタッシュケースを持って着いてこい。」


ハイッ!!!


意気揚々と、背負のベルトがついたアタッシュケースを掴むと、事務所を出ていく依頼人と悪次さんの後に続いて出ていく。


待って待ってーとてとてと、歩いて、どこに向かうとかと思うと、ビルの脇にある駐車場に停めてある。


少し大きめのワンボックスカーへと向かい。解錠して依頼人と伴に乗り込む。


「悪次さんどこ行くんですか?」


「依頼についてはおいおい説明していく。」


「さっさと乗れ。」


「そう言えばお前、バイクの免許持ってるか?」


ん(。´・ω・)ん?


車の免許ならあるので原付きなら乗れますよ?それがどうしましたすん?


「それなら良い。依頼人は、深山薫氏(みやまかおる)だ。」


「昨晩、家に子供を預かってると電話が入ったらしい。」


「それで、身代金の受け渡しに、自分たちだけでは心もとないと、依頼された。」


「今回は、誘拐事件の解決若しくは、人質の解放を目的とする。」


と、張り切って行けよ?と、声を掛ける。


何があるかわからないので念の為、アタッシュケースから、装備を取り出して、着用しておけ、


ICレコーダや防弾防刃ベストに、違法改造を行った6連発式のテーザー銃。


射程距離は約5メートルから8メートル。


ガジェットとして普段俺が持ち歩いてるXーIX(テンナイン)は、組み合わせを変える毎に


様々な機能を備えた特殊警棒だが、扱い方をお前に教えている暇はない。


それなら狙って引き金を引くだけだからできるだろ?カートリッジの交換方法だけ

説明書を読みながら覚えて置け、


あとで、お前専用のガジェット作ってやるが、今は其れで我慢しろ?


「えっ?もしかして犯人の確保とかもするんですか?」


「警察に相談した方が...?」


「それは今回は無しだ。」


そう言って車を出して、向かうは、都内某所、閑静な住宅街にある大きな門構え深山邸。


表札には深山以外にも九藤の名前が会った。


深山氏の案内でたどり着いたその先で、自動で開閉する門をくぐり抜ける、


邸宅内の駐車場に入ると。


「ねぇ、こういう場合、変装して入った方が良いのでは?」


「まぁ、恐らく此の家を監視してるのは、間違いないが、俺とお前の組み合わせどう考えても警察に見えないし、事前の策は貼ってある。今は心配することじゃない。」


そういって駐車場に車を止めると、深山氏と一緒に邸宅に入ると、


奥方と家政婦らしき若い女性を紹介され、部屋の奥へと向かう。


それで、事務所で依頼人から話された誘拐された時の詳細はなんですか?


九藤哲人(くどうてつと)くん6歳小学生。


昨日の下校時間が過ぎても家に帰ってこない。心配になってほうぼう手を尽くしても行方が知れず。


警察に捜索願いを出そうとしたところに、誘拐犯から、連絡があったらしい。


詳しい指示は、今日の15時半、今から30分後に追って指示するという事だ。


時間がないから手早く準備するぞ?


あっでも準備って何するんですか?流石に警察じゃないから電話の逆探知無理では?


まぁ、そうだな掛かってくる電話の録音と、身代金の受け渡しに確保出来るように

装備の確認だな。


俺たちは警察官じゃないから出来ることは限られる。


出来るのは、恐らく何も知らない第三者、受け子を使って金の後を追えないようにするだろうから、

俺たちは、そいつを追跡して、哲人くんの身柄を確保する。


えっとつまり、荒事になるってことですよね?とゴクリと唾を飲み込む。


そうだな、其の通りだ。怖気付いたか?


怖気付いてないと言えば嘘になる…。だけど、話を聞いてそのままにもしていられない。


心配そうに「よろしくお願いします」の奥方の声を思い出す。


3人の名字が微妙に違う。何か複雑な家庭環境なのかも知れないけど、

心配する二人の気持ちは本物だ。


意を決して頷く。


時計が15時半を告げる時、家の電話が鳴り響く。


恐る恐る依頼人の深山薫氏が、電話に出る。


「もしもし...」


「カネㇵ、ジュンビデキタカ?」機械で音声を変換された声が響く。


「はぃ!〇〇円用意できました。息子は無事ですか?声を声をきかせてください。」


「ケイサツヘㇵ、レンラクシテナイナ?」


「はい!それで息子は?!」


「むにゃむにゃ、おとたん?僕なんだか眠い。」


「哲人?!無事か?」


「おとたん、お腹いっぱい、僕おやつもう食べれない。」


「コレデイイダロ、ミノシロキンㇵ、キノウシジシタ、バッㇰニイレテ、キョウノ20ジ二、〇〇マデ、モッテコイ」


「ツヅク、シジㇵ、オッテツタエル。」


ブツッ


「あっ?!」


切れちゃいましたね...さて、どうしま...あれ?


と、善児が何かに気付く。


ん(。´・ω・)ん?何か気付いたいのか?


もう一回聞いても良いですか?


「もしもし...」


「カネㇵ、ジュンビデキタカ?」機械で音声を変換された声が響く。


「はぃ!〇〇円用意できました。息子は無事ですか?声を声をきかせてください。」


「ケイサツヘは、レンラクシテナイナ?」


「はい!それで息子は?!」


「むにゃむにゃ、おとたん?僕なんだか眠い。」


ガタンゴトン、ガタッ


「哲人?!無事か?」


「おとたん、僕おやつもう食べれない。」


「コレデイイダロ、ミノシロキンㇵ、キノウシジシタ、バッㇰニイレテ、キョウノ20ジ二、〇〇マデ、モッテコイ」


「ツヅク、シジㇵ、オッテツタエル。」


・・・


・・・


・・・


何か脳裏に引っかかる音を聴く。


「電話の声に、どこかの線路に電車が通過する音が聴こえる。」


「そんなことより、身代金の!?」


「いや、もしかして、それはどこの場所か大凡の見当が作って事なのか?善児?」


「はぃ、恐らく、此の音は...〇〇線の〇〇駅の周辺だと思います。同じ音を今朝聴きました!!!」


「なるほどな...」


それじゃぁ役割分担を決めるぞ?


俺は、此の儘身代金の受け渡しで、犯人の後を追跡する。


お前は...


録音されていた誘拐の電話を聞いた善児は、


深山家から飛び出し、悪次と別行動で、何かを探していた。


電話口で聞いた。音と同じ場所を探して、ワンボックスカーに搭載していた、

折りたたみ式の原付きでひた走る。


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここは?ガタンゴトン、ガタッちょっといつもと違う?


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!


ここも良し!



通過する電車の響きを聴く


悪次さんが言っていた。自分の直感を信じろそれがお前のギフテッドだ。


遠くで、何かが吐瀉される音が聴こえる。


ん(。´・ω・)ん?と、原付バイクから降り、


げーげーと吐く其の背中を擦ってあげて、


どうしましたか?これ使いますか?と善児は、丁度持っていたティッシュと

ミネラルウォーターを差し出す。


吐いてる人は、善児の姿を確認することも出来ず善児は、立ち去る。


あれ?もしかして、ゲロの王子様じゃん?


なに?ゲロの王子様って?知らないの?私もよくわからないんだけど、


ゲロを吐いている人を見かけると、ティッシュと余裕があったらミネラルウォーターをくれる人が居るみたいで、


なんか都市伝説になってる。


なんでそんな事してるの?!さぁ?で、其の朦朧とした時に見る後ろ姿を見て、ゲロの王子様って誰かが言い出したのよ。


そんな話を遠くで聴きつつ、へーそんな奇特な事する人いるんだなぁ。


そんなことより探さないと!!!っと


遠くで鳴り響くガタンゴトン、ガタッの音を捉えて、其の場所に向かう


ねー駅長、毎朝なんかしらんけど、変な青年が、


ここの線路は、不具合があるから直した方が良いとか言ってくる人がいるんですけど?


それが、毎朝なんですよ。おかしな話ですよ。アハハッ


あー幸せの小人が着たのか?で?どこの場所だ?


えっ?駅長、本気で言ってるんですか?そんなの参考にならないでしょ?


あーお前は新入りだからしらないが、小人の忠告を聞かなくて、


脱線事故が起きた事が、昔あってな、アレは数年前の話だったかな?小学生の子供が


しきりににここが危ないって言ってくるんだが、周りの大人は誰も信じなかった。


そしたら、指摘された場所で大事故が発生して、その子が助けられなかったって、泣いてた事があってな。


其れ以後、小人さんの忠告は、聴けって言われてるんだ。


急いで今夜にでも担当者に申し送りをしておこう。


良かった!まだ、線路の状態が治ってない?!本当は治ってた方が良いけど、今すぐ事故が起きるほどの歪みじゃない。


池袋の街を疾走し、少し離れた路線の一部に向かう。


自分の直感を信じろ…。


僕のギフテッドが、もしもこれなら、きっと声が聴こえるはずだ。



哲人くんが上げるその声を...!!!


・・・


・・・


・・・


悪次は、善児と分かれて、20時、十五分前。


墨田川に掛かる橋の上、こんな所で、どうするつもりだ?


恐る恐る、身代金が入った、バックを抱え、次の指示を待つ。


その間にも、悪次は、少し離れた場所で目を皿のように、相手の次の動きに警戒する。


携帯がけたたましく鳴り響き、何事かを話す。


そして、ややあって、意を決する深山薫は、手に持ったバックを川へと投棄した。


やっぱりそうか...それが狙いか...情報通り...


バックは橋の下を丁度通過する船の船体に落ち、そのまま何事もなく川を下る。


ここからの追跡は困難になったが、悪次の顔には、何かを企てている悪い顔がニヤリと浮かんだ。



哲人の声を聴き取ろうと、耳を澄ませる。


今日は風が無い。無風状態。耳の状態も良い。ならばどこに居るのか?


「おかたん?どこぉぉ~?!」


聴こえる?!



あそこだ!!!!原付バイクを走らせ其の場所へと向かう。


向かった先は、平屋建ての貸家らしき家。


二階や地下室はなさそう。ならば、どこか見えない場所に隠されてる可能性は少ない。


家の周囲をグルグルと回って、伺っていると、背後で空気を乱す動きを三半規管が受け取り、


何かの気配を感じる。


とっさに前へと前転すると、一瞬、後ろから襲いかかってくる何者かの姿が見える。


ビンゴ!!!ッやっぱりここは誘拐犯の根城だ?!見張りが居た?!


回転しながらテーザー銃を取り出し、デタラメに狙いを付けつつ、


乾いた音と伴に一発二発と、金属製の銛が射出され、


男の身体に突き刺さると、ビリビリと電極から放たれた電撃により動きが止まる。


「よしッ!!!」


でも、今の音で中の人たちに気づかれたかも知れない。急がないと?!


倒した相手を縛り上げ、空になったカートリッジを補充しつつ、周囲の気配を感じ取る。


聴こえる音を判別、区別、大別して、其の動きを先読みする。


アタッシュケースから、取り出した、ガジェット。


枠に火薬を詰めて、伸ばした棒から起爆させ割るそれを


窓に貼り付けて起爆、破って突入すると其処には


予め耳で聴き取った。配置で人質と、誘拐犯が立っていた。


爆破の音で、完全に侵入者に気付いて、驚きつつ臨戦態勢へと移行する。


まず一人が気付き向かってくる。


ふと、あの時の事を思い出す。



振り下ろす剛腕が、細身の身体のボサボサ頭の奇妙な男へ向かって降ろされる。


「違う!!!!そっちじゃない!!!!」


眼の前の男以外の若い男の警告の声が響く。


ピタッと狙いすまして振り下ろした右腕の攻撃が、相手に命中する前に、


その声に静止されたボサボサ頭の男の動きがブレて、狙いがハズレる。


その隙に差し出された。棒状の何かが身体に触れて、バチッっと火花を散らす。


身体が一瞬、痺れるが...その程度では、止まらない。


向かって左側、拳がない方向へ回避した男へと、向き直り、更に右の手で掴みかかり、


偶々側にあった道路標識を掴み。そのまま握りつぶす。


猿の手である自分自身には、2mの巨体から繰り出される膂力以外にも、


ゴリラなみの握力で鉄の棒すら握りつぶす事が出来る


その一撃の寸前で前転して懐に潜り、ガコンッ゙と、何かが装填される音がして


何かの炸薬が炸裂し、腹部に猛烈な衝撃を受けて後退する。


男の持つ棒から濛々煙が立ち上る。一体何をされたのかがわからないが、ダメージは少ない。


この男に少し興味が出てきた....


大ぶりで繰り出される拳を、向かってくる時に生じる風の動きと音により、察知。


左からくる?!


ステップバックして、右手の一撃を回避すると、お返しとばかりに一発ティザー銃を放つ。


銛の一撃を受け電極から放たれるそれに、倒れ伏す。


残りは一人!!!このままで逝ける?!


だが、其の男は懐から、拳銃を取り出し、こちらに銃口を向け、


重厚な低音ボイスのバスの音階が奏でられる


吐き捨てる様に告げる。何もんだテメェーと、


善児はピンチに陥る。


一方変わって、悪次は現金の受け渡しの場所で、携帯電話を取り出し…。


それは、一日前の事、


「探偵さん助けてください!!!」


「どうした?助けてだけじゃ意味が分からん。」


「それが…。高収入のバイトって聞いて申し込んだんですけど...」


「そんなのは唯の嘘で、誘拐事件の片棒を担がされそうに...」


「僕が頼まれてるのは、身代金の受け取り手だけだけど?他にも何人も声をかけていて分業させるつもりらしく...」


「あー所謂、闇バイトってやつか?あれは、報酬払われないし、身分証明書なんて送ったら悪用されて詰むぞ?」


「そんなのは警察に相談しろ、其れが一番いい。」


「そしたら捕まっちゃうかも?!怖くて出来ない。」


「あー未遂状態なら、そんなに悩む必要性は感じられんのだが、まぁ、そうか?それなら其れでいい。」


「で、其の仕事は、どこで受けた?」


・・・


・・・


・・・


誘拐事件がどこで起きるのか?それはわからない分業制なので、拉致する人間はまた別の人間で


依頼人も、ターゲット以外の話はしらず、どうやら既に誘拐された後のようだ。


ならばと、悪次は、深山家の郵便箱に、こっそり自分の事務所のチラシを入れる。


貴方の悪事お受けいたします。誘拐事件解決実績ありと、堂々と嘘をついて...


・・・


・・・


・・・


携帯を操作する。


携帯には、履歴が自動的に消去されるアプリに、深山家の監視を続け、警察や不審者が


入ってこないか監視しろと明記されていた。


それに、問題なしです。深山家の人間以外出入りは、なにも無しと、しれっと返信する悪次。


これでいい。


善児は、死を覚悟した...拳銃なんて避けれない...?!


悪次は、いつもの直感を感じる。


頭の中で、色々なピースが、嵌まり、固まり集まり、形となって行くあの感覚を。


するとスルスルと依頼人から受け取った携帯電話を操作して、コールする。


「おい、手に持ってる其れを捨てろ!!」


ぐぬぬと、テーザー銃を地面に置く...


「おい、コイツを縛り上げろ始末してここを離れるぞ?!」


プルルルるるるる。


携帯が鳴る。


ん(。´・ω・)ん?緊急時以外、俺の飛ばし携帯には電話してくるなって言ってたが...?


「おい!身代金は、受け取ったんだろうな?!」


~常在戦塵(いつも其処に居る)~


「嗚呼、確かに受け取った俺がな?」


キンッ!何かの金属音が鳴り響く


音が響いた瞬間、拳銃を持った男の動きが止まる。


その一瞬の隙を感じ取り、善児は、テーザー銃を拾い、


身を乗り出しながら、撃ち放つ。


狙い違わず放たれた一撃は、男を痺れさせ無力化させる。


がぁぁぁ一体何をした?!?


倒れ込んだ男は、それでも携帯を離さず会話を続ける。


俺と雇用関係を結んだ人間は、俺に逆らえない筈なのに?!


「嗚呼、そうか、そもそも俺がお前に送った身分証明書は、偽造品だし、携帯も飛ばし携帯で、俺の名義じゃねぇ。まぁそもそも今かけてる電話も、お前が縛った相手から無理やり奪い取っただけだからな」


「携帯なんて奪われやがって、ゴミが!!!?!」


奴らは別にゴミじゃねぇ、誰かに打ち捨てられた誰かだ。


俺は、其れこそ...拾い上げたい


自分には関係ないことだと、大半の人間は、犯罪とは関わり合いがない。


だが、その実、其の境界線のボーダーは曖昧だ。


昨日、笑ってありがとうございます。と言っていた奴が、人を殺す。


自分は絶対に手を染めない、そう言えるのは、


実際に家族の命を盾に脅されたり、自分の未来を脅迫された事が無い幸せな奴の戯言だ。


誰だって、それは怖いし、俺自身も同じ立場だったら同じ様に足を踏み外すかもしれない。


それが彼岸の黄昏時に足を踏み入れた俺には良く理解る。


俺とあいつらとの違いは、唯、運が良かっただけだ。


誰が一体本当に悪いのか?それは俺にも判らない。


最初にやり始めた奴が悪いのか、その自分の弱さに屈した誰かが悪いのか?


だから、もし迷う時があったら、警察か、弁護士に相談すればいいのにな。


#9110という、相談事を話す場もあるから。


それでもダメなら…。


戯言は長々と続く...


電撃で無力化させた。男たちを持ってきた拘束具で、高速で拘束していく。


別の電話から、善児の携帯に繋がり、


一言、「おい、大丈夫だったか?」


あれ?!


「何か嫌な予感がしたから、ギフテッドで妨害仕掛けたが?」

「生きてるか?」


やっぱりさっきの悪次さんが何かしたんだ?


もぉぉぉぉおぉ~死ぬかと思ったぁぁ牛さんだよぉぉもぉぉおぉぉぉん!


プリプリと起こりつつ、


部屋の奥で、棒立ちの九藤哲人くんを発見。


見た所目立った外傷が無い。


プルルルるるるると震える。其の子に向かって一言。


「助けに着たよ?飴ちゃん食べる?」


うん?!!!お兄ちゃん誰??


僕は、テッド!!哲人だからテッド!


お義父さんに付けてもらった渾名なの!!


お兄ちゃんは?


そうだなぁ、僕かぁ僕は...


猫の手だよ!


二人で一匹の探偵さ!!!



僕ね、僕ね。知ってたよ。お兄ちゃんが来ること!


?!?!?!


僕ね、此の光景見たことある!


ちょっとした謎を残して事件は収束する。


・・・


・・・


・・・



事件が解決し、深山家の人々は、警察を呼んだ。


何故、最初から警察を頼らなかったと、詰問されたが?そこは致し方ない。


そして現場にきた刑事は、啓示を受けるかの如く悟る。


「嗚呼、またあんたか?どこにでもでてくるな?」


「まぁまぁ、そんな日もあるさ、後の処理は任せた。俺たちは依頼料を貰って退散させて貰う。」


「おい、待て!事情は聞かせてもらうぞ?!」


やれやれ?めんどくさいな。後にしてくれ、行くぞ善児。


スタスタとその場を離れて、事務所へと戻る。


ん(。´・ω・)ん?


そう言えば一匹狼の筈なのに、珍しく今日は二人で行動してるな?


新しいアシスタントでも雇ったのか?とはてなを浮かべつつ、


その刑事は、事情を家族から聞き取りを開始した。


其の夜


寿司屋「銀次」


店構えは、純和風、どこにでもあるようでいて、粋な香りを漂わせる。


こじんまりとした、狭めのカウンター越しに、寿司屋の大将が話しかけてくる


悪次さん…。そんな事してたんだ...


悪次の行きつけの寿司屋の大将から、話を聞くと、


なんでも嘗て、貸しを作った政治家に頼んで、元受刑者の職業訓練に関する支援制度を無理やり押し通した事があったらしい。


なんで彼が其処までするのか?全く判らないが、何故其処まで悪に拘る?


悪とは程遠い彼が、どうして?そう疑問を呈しないでは、居られなかった。


だから俺は悪事を練る。対処療法は、後手後手になって、救えるのではなく敗残処理になる。


だからこそ起きる前に対処する。根本治療が必要だ。


悪次は、悪事を練りつつ、呟く。全く無駄なことしやがる。今度こそは…。



終わり


そして続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ