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62/91

62 宣言

事故から数日が経ったある日のこと、朗報が俺の耳に入った。


「そ、明日から一般病棟だよ」


「本当ですか?!よ、良かった……!」


「佐伯くん、病室では静かにね。ああ、でも、まだ予断

は許さない状態であることは変わらないんだからね」


「分かってます……」


「もう……本当に特別だよ?本当は家族以外の第三者に、あまりこんなこと話すの良くないんだから」


「はい、ありがとうございます後藤さん」


後藤さんは俺が初めてこの病院に入院した時に担当してくれた病棟の看護師で、俺が入院する度に世話になっているお姉様だ。

お姉様といっても30近いから、俺の精神年齢からすると歳下ではあるのだが。

今はたまたまICUの担当だったので、こうやって病室に入れてくれたり、瑞穂の状態を教えてくれたりする。


瑞穂の意識は相変わらず戻らない。

一時期に比べたら繋がれていた管の数は減ったし、包帯で巻かれた箇所も減ったから俺にとっても安心する材料の1つとなったんだけど、目覚める兆しというか、目処というものは全くもってないらしい。

それでも一般病棟に移れるという情報は、少なからず俺に希望を与えてくれた。




あれから――

峰岸さんとはまともに会話をしていない。

柚子瑠からは、峰岸さんが俺に対してあんなことを言ってすごく後悔しているみたいだって聞いたけど、俺は峰岸さんのこと何ひとつ恨んじゃいない。

むしろ、一般病棟に移ったんだし、みんなでお見舞いに行きたいとさえ思っている。

まぁ、あの状態の瑞穂を見るのはかなりな勇気がいるだろうけど……





その日も、俺はほとんど日課となってしまった瑞穂のお見舞いに来ていた。

特に何をするでもない。

ただ、今日、学校であったこと、先生から言われたこと、峰岸さんや永瀬さんのことを寝ている瑞穂に一方的に話すだけ。


「……って感じでさ。まぁ、いつかはアイツらもお前のお見舞い来てくれると思うよ?」


当然のことながら瑞穂は何も物を言わない。


「あーぁ、俺が一方的に話したってつまんないじゃん……早く起きろよ……瑞穂」


手を握ってみる。

白く細い指は確かに体温を帯びていた。


「し、失礼しまーす……」


聞き覚えのある声……


「永瀬さん?……峰岸さんも……」


2人がお見舞いに来てくれた!





 


「ありがとな2人とも。瑞穂も喜ぶよ」


「翔太郎くん、来てたんだね……」


「まぁ、暇だし」


できるだけ明るい口調で2人をカーテンの中に招き入れたけど……

瑞穂を目の当たりにした2人はショックを隠そうとしなかった。


「瑞穂ン……」


「…………」


「そこ座りなよ。おい、瑞穂、峰岸さんと永瀬さんが来たぞ。喜べ」


戸惑いながら2人は俺が用意した丸椅子に腰をかけた。

2人はただ、じっと瑞穂を見つめるだけで何も言葉を発しない。


「あ、あのさ……瑞穂のやつ、少し顎のラインが細っそりしたと思わない?ダイエット成功したってことかな?」


2人を和ませようと言ったつもりだったんだけど……なぜか空気がさらに重くなってしまった。


「そうだ、ウチ、お花買って来たの。花瓶も。お水入れてくるね」


「……私も」


「ああ、そうか。ありがとう」


微妙な空気のまま、2人はカーテンの外へ出ようとした。


と、峰岸さんだけが立ち止まり


「佐伯……この間は……ごめん……」


峰岸さんは静かにそう言った。

正直、どうとも思ってなかったから俺としては少し驚いてしまった。


「……う、うん。いいんだ。全然、気にしてないよ」


「佐伯が一番ツラいのにね……本当……ごめん」


峰岸さん……

ずっと後悔してたのかな。俺に言ったこと。

本当にいい子だな。

まったく……みんな心配しているのに。

何やってんだ瑞穂は……




「あら?もしかして、ミウちゃん?」


これまた聞き覚えのある声……


「あ、おばさん……こんにちは。お久しぶりです」


「やっぱりそうよね。永瀬美羽ちゃん。瑞穂のお見舞いに来てくれたの?」


「はい、お花、買ってきて……飾ろうかなって」


「ありがとう。瑞穂も喜ぶわ」


マズい……瑞穂の母親だ。


実は前世界線の時もそうだったんだけど、俺はお義母さんが少し苦手だ。

看護師だからというのは偏見かもしれないけど、歯に物を着せない言い方は、何度も俺を焦らせた。

瑞穂をこんな目に遭わせた張本人である俺に対して、どんなことを言うのか……想像に難しくない。

 

今、お義母さんに合わせる顔がない……


「み、峰岸さん、俺、そろそろ帰るよ」


「そう、なの……?」


そう言ってそそくさと帰ろうとしたのだが……


シャッ


カーテンが開いてしまった。


「あら?あなたたちも瑞穂のお友達かしら?」


「あ……は、初めまして……峰岸と言います。瑞穂さんとは同じクラスで……」


「ああ、知ってるわ。峰岸ユウリさん?よね。瑞穂からよく話を聞いてる」


「はぁ……」


「で、キミは……?」


どうしよう……

俺のことはきっと事故に関係があることぐらいお義母さんは知っている。瑞穂のおばあさんに挨拶しているし、連絡先も教えたからな。

むしろ今更謝罪だなんて……親としたらどう思うか……


「あ、あの、お、俺……」


どもるな!俺!

クソッ言葉が上手く出てこない。

まともにお義母さんのことを見れない。


「もしかして……サエキくん?」


え?

知っているのか……


「はい……そうです……」


微妙な空気が流れた。

そりゃそうだよな。

大事な娘をこんなふうにしてしまったんだから……


「あの、私、美羽のこと手伝ってきます」


うぉい!

逃げたな!峰岸さんめ!!


どうすんだよ!この状況!

ま、まずは謝罪を……


「あの、俺、こんなことになって……」


「あなたなのね……瑞穂がこんな姿になってまで助けたかったって子は」


え……


何を言っているんだ……?


「まったく。瑞穂も隅に置けないことするわよね。自分を犠牲にしてボーイフレンドを救うなんて。よっぽど好きなのね。この子、家じゃ浮いた話まったくしないのよ?」


――そんなんじゃない。

そんな美談で済むような話じゃないんだ……!

どうして俺を責めないんだ

あなたの娘をこんなふうにしてしまったのに……!


「あれ?瑞穂の大事な人かと思ったんだけど……」


「!!」


――いや、俺は全部を背負う義務がある……!


瑞穂の過去なんか今はどうでもいい

こうやってただ寄り添い、祈ることしかできないけど


決めたんだ


「そうです……!」

お読みくださりありがとうございます!

良い点悪い点、何でもよいのですが感想をいただけると今度の作話の励みになります。

これからもどうぞよろしくお願いします^_^

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