表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1-打ち切り

あらすじ

天才がトチ狂った

この世界は小説である。

作者が想像し、文字に書き、その上に存在している。

そのような小説世界は他にも沢山あり、日々増え続けている。

世界が続くかどうか、小説が続くかどうかは基本的に作者のモチベーション次第で、長期的に続くこともあればすぐに終わってしまうこともある。

では作者のモチベーションを高め、世界を存続させるにはどうすればいいか。その一つは、他者からの評価だ。小説世界の上位には作者がいて、当然他の人間も存在する。彼らの小説に対する評価が作者のモチベーションに繋がるのだ。

ならば評価を得るためには何をすればいいか。簡単だ。小説を面白くすればいい。しかしそれは並大抵のことでは実現しえない困難至極。ゆえに多くの小説世界が幕を閉じていった。この世界もいつかは、同じ運命をたどるだろう。


アキスは研究の末、そんな世界の真理を知ってしまった。





アキスは世界の真理を知ったせいで狂ってしまった。

「彼が至った真理というのが何なのかはわからないが、あの天才を狂わせるほどの恐ろしい事実があったのだろう」。後に周囲の人間はそう噂した。

しかしアキスは狂ってなどいなかった。正常な頭を使い、この小説世界を面白くするにはどうすればいいか考えたのだ。

まずはインパクト。それも並大抵のものではない、痛烈なインパクトだ。そう考えた彼は素っ裸になって槍を持ち、奇声を上げながら街中を走り回った。

アキスの身体能力はとても高い。彼の奇行を見てすぐに兵士が逮捕しようとしたが、その俊敏さに翻弄され、なかなか捕まえることができなかった。アキスと兵士の追いかけっこは三日三晩続いた。


アキスには研究成果で得た大金があった。牢屋に入れられたアキスは保釈金を払い、すぐに釈放された。もちろん、服を着た状態で。

釈放後のアキスは研究所の所長に呼び出され、無期限の休暇を強制的にとらされた。実質的な追放宣言である。当然だ。どんなに学問に貢献した研究者でも、狂った人間を研究所に置いてはおけない。


次にアキスは王宮の一室に呼び出された。そこで待ち構えていたのは、ライネとその使用人たちだった。

部屋の真ん中のソファに座るライネと、左右の壁にズラリと並ぶ使用人たち。第七王女が気のふれた男と会うにあたり、使用人たちは皆武器を隠し持っていた。

そしてライネは衆人環視の中、アキスとの婚約を破棄。アキスもそれを受け入れた。

せめてもの情けとして、父親である王には上手く言っておくとのことだった。

王はライネを溺愛している。愛娘を悲しませたとなれば、王の怒りがアキスにどのように降りかかるかはわからない……。


最後にアキスは両親に呼び出された。

そして両親と兄に散々罵倒され、絶縁を宣言された。家の名を地に落したのだから当然である。

彼も人間である。羞恥心や自分を支えてくれた者たちへの申し訳なさがないわけではない。しかし、それ以上に覚悟があった。世界を存続させるという覚悟が。世界のためなら、自身の尊厳も名誉も功績も、何もかもをかなぐり捨てるという覚悟が。

アキスはせめてもの陳謝として、研究で得た金の半分を置いて家を出た。





アキスは完全に着の身着のまま、身一つとなってしまった。

しかし、これでいいとも思っていた。普通に研究を続けていたって、何も面白くならない。むしろ自由の身となったのを最大限に利用して、この小説世界を盛り上げていこうと思った。


「俺の物語はこれからだ」


本人は物語の始まりを意図する言葉を言ったつもりだったが、それは同時に物語の終わりを意味する言葉でもあった。


好評であれば連載も考えております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ