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78.ビーチ

「うわあ! 海だぁっ!!」


 みて、海だよ! ビーチがある!!

 白い砂浜、青い海、きらめく太陽。私は興奮しながら砂の上を走った。まさか要塞の中にこんなキレイなビーチがあるなんて!


 海岸線に建てられた一際大きな建物は、この辺りの騎士が拠点とする要塞。

 その敷地には訓練場があって、そこから直結するように海岸が繋がっている。もちろん、騎士たちがこのビーチで遊ぶことは無いみたいなんだけど、アルベルトさんの好意で私は好きに使って良いことになった。

 つまり、プライベートビーチってわけだ。最高だね!


 早速部屋についた私達は、荷解きも程々にして水着に着替えた。長旅の疲れも、一旦この水着を着てしまえば、すべて吹っ飛ぶというものだよ。

 ちなみに、私の水着は鮮やかなブルーのビキニ。とはいっても上は胸と腕が隠れるオフショルダータイプ、下はフリルがついたスカートのような形。尻尾を外に逃がせるようにと、上下で分かれているこの形にしたのだ。

 大人っぽいけれど可愛らしい、すてきなデザインだ。


 一方セレスは、ワンピースタイプの黒の水着だ。内心では子供っぽいなあと思っていたのだけれど、ひとたびセレスが着ると、まるで舞踏会のドレスのような綺羅びやかさが溢れ出していた。

 黒という落ち着いた色が、大人っぽさを醸し出しているような気がする。ふふ、かわいいよ!


「セレス、競争だよ!」


 私はあつあつになった砂浜を踏みしめながら、海の方へと駆け出した。競争とはいったものの、どうやらセレスは手加減してくれているのか、私の少し後ろを追走してきていた。


 一定周期にさざめく波の音に心躍らせながら、私はばしゃんと水しぶきを上げて波間に飛び込んだ。セレスもそれを真似して飛び込む。

 真っ白な泡沫が浮かび、私の体を一気にひんやりとした海水が包みこんだ。 


 よし、せっかくなら泳ごう!

 私は沖の方に向かおうと、足を海底から離してクロールをはじめた。

 うふふ、こう見えても私、小さい頃は水泳を習っていたからね。泳ぎには自信があるのだよ!



 そう思ったのだけど……あれっ、なんだか、体がうまく浮かばない?

 なんだこれ、どんどん沈んでいく、うぼぼぼぼぼぼ……


「……大丈夫か?」


 お腹をがしっと掴まれて、突然視界が明るくなる。げほげほと咳き込んで、口と鼻に入った水を無理やり出す。


「あ、あぶなかった……」

「気をつけろよ?」


 私を助けてくれたのはライルだった。彼は騎士服のままで、ズボンを膝くらいまでまくって入水していた。ただ私のいる位置が海岸から少し離れていた所為か、そのズボンは普通にびしょびしょに濡れていた。

 ありがとう、ライル……危うく海の一部になるとこだった……。

 ライルは私をお姫様抱っこのような形で、より浅瀬の方に運び、下ろしてくれた。


「……セレス、泳ぐのはやめよう」


 その一部始終を見ていたセレスは、こくりと頷いた。一応セレスも助けようとしてくれたみたいだ。

 結局私たちは、砂浜や浅瀬の方限定で遊ぶことになった。


「ルーナ、ちょっと! ……やったな~??」

「うわっ、やめてっ!!」


 私がアイラに水をひっかけることで開戦。アイラもそれに反撃してくるという応酬が巻き起こったのは言うまでもない。

 だけど、私は水着なのに対して、アイラは騎士服のままなので、圧倒的有利なのはこっちのほう。こちとら、いくら濡れてもノーダメージだ。


 それに、私は尻尾という武器もあるので、掛けられる水量はそこそこあるのだ。

 具体的には、尻尾を上下にパンパンと水面に叩きつける攻撃。それだけで、結構な被害を与えることができる。

 ――案の定、アイラの騎士服はびしょびしょになっていた。


「ルーナ、強すぎ……」

「ざまあねえな――って、うわっ」


 遠くからアイラを笑う不届きライルがいたので、こっちにも水を掛けておいた。

 怒ったライルが追っかけてきたけど、海のちょっと深いところへ行くことにより無事に逃げおおせることができた。

 私ってば、賢い!



 ――そんなこんなで楽しい時間はあっという間に過ぎた。


 日は傾きかけて、橙色の光が水面に反射する。私はというと、セレスや騎士たちの手伝いも借りつつ、砂のお城を作っていた。作り直したり、うっかり崩れたりの繰り返しだったけど、その結果わりとしっかりとした力作ができたよ。

 王城をモチーフにしたオリジナルのお城。装飾にまでこだわったから、ぜひ見て欲しい。


 あともう少しで完成だというところ。

 ――突然、セレスがその作業の手を止めた。


「ルーナ……来てる」

「ほえ? なにが?」


 その急なセレスの言動に、私は呆けた声を漏らす。

 だが数秒後、その言葉の意味をようやく理解することができた。




 ――ドカン!!!


 その瞬間、爆音が鳴り響いた。


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