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金獅子の復讐  作者: 永杉坂路
【第1章】オレオールの過去
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子守唄

おねむりなさい

わたしのおうじさま


どんなほうせきよりもうつくしい

きらめくおほしさま

おつきさまはわらいかけています


めをとじてもそこにある

まぶたをなでるよかぜが

すてきなゆめをはこんでくれますように

まぶたをすかすつきのあかりが

やすらぐよるをあたえてくれますように


だからどうかしあわせなよるを

おやすみなさい

わたしのだいじなおうじさま


――――――――――


母さまは美しい人だ。


 それはもう、すべての点において。

 顔も、声も、肌も、髪も、それからもちろん、心も。


 ぼくの自慢の母さまだ。


 母さまはいつも、ぼくが寝るまでそばにいて、優しく髪をなでながら子守唄を歌ってくれる。

 ぼくはその時間が大好きだ。

もちろん母さまと一緒に過ごす時間ならどんなときだって大好きだけど。でもぼくは、子守唄の時間がいっとう好きなんだ。


 ぼくの中で、母さまはいつまでも美しいままでいる。


 だってぼくは、母さまのやつれた姿を見なかったから。母さまが病に苦しむ姿を見なかったから。母さまの亡骸さえも……


 大事なものはなに一つ見ることを許されなかった。死に目にも会わせてもらえなかった。


 ……ぼくは毎日ベッドに入ると、自分で自分に子守唄を歌ってあげる。

 もうぼくをおうじさまと呼んでくれる人はいない。


ときどきばからしくなる。

自分で自分をおうじさまと呼ぶなんて。たとえ歌の中だと言ってもね。


だけどやめるわけにはいかないんだ。

この子守唄を忘れてしまったら、母さまは本当にぼくのところからいなくなってしまうような気がするから。


だからぼくは毎晩歌う。

どんなに悲しくなっても。


――ときどき、なみだがでる。


でもぼくはそれを放っておく。

なみだは悪いものをぜんぶからだの外にだしてくれるって、いつも母さまが言っていたから。


だから今夜も、ぼくは歌う。

そうして朝になったら、いいものだけで満たされたからだで、姉さまに笑いかけるんだ。


「おはよう、今日もいい日だね」って。

読んでくださりありがとうございます。

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序章から遡ること十三年。

第1章、開幕です!

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