ドブネズミの歌
踊れ踊れよドブネズミ
リンゴの芯に
パンのクズ
人間さまのお恵みさ
躍れ躍れよドブネズミ
闇夜に紛れ
月に舞う
人間さまに見られるな
踊れ踊れよドブネズミ
悪臭漂う裏通り
盗み殺しも何でもありだ
生きるためには仕方ない
躍れ躍れよドブネズミ
ネズミは化けたって結局ネズミ
最後にゃお縄で首切りだ
人間さまのご都合さ
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童謡は時に残酷な内容を歌う。
いつ誰が書いたかわからないような得体の知れない歌を、けれども人々は平気で歌い継ぐ。
特にドブネズミの歌なんて訳が分からない。
ネズミに同情してるかと思えば最後は捕まえて首切りだって。
人間の身勝手さを教えていると言ってしまえばその通りだが素直な子供たちはきっとこの詩の表面的な印象だけを「正しい」と思って受け取るはずだ。
つまりは、ドブネズミは卑しい存在であり、決して人間に混じってはならず、排除されるべき存在であると。
こんなの小さい頃から刷り込まれたらたまったもんじゃない。
……いや、道徳的な問題を深く考察したいわけじゃないんだ。
ただ問題は俺が人間に化けたドブネズミだってことだよ。
だって人間じゃないんだから。
もし人間社会に「人間」と「ドブネズミ」の二種類しかいないとしたら、俺はドブネズミ側にいる。
なんてったって十一のときから六年間、裏路地で泥水をすするような生活をしていたんだから。
それにしては性格が明るすぎやしないかって?
そうだな。これは言うなれば仮面ってもんだよ。ドブネズミが人間になるには仮面をかぶらなくちゃ。そんなの当たり前だろ?
……俺の過去か。
まあいろいろあったよ。十一歳までどうしてたのかとか、うん、なんでドブネズミになったのかとか。
ああ、あと人間に化けてる理由とか?まあ、いろいろね。そのうちわかるだろうさ。
それから?ドブネズミに落ちぶれてまで生きてきた理由?
おいおいかなりつっこむな。……いや怒ってないよ。
……まあそれは世に言う「復讐」ってやつだ。
あ、ちょっと顔が明るすぎたか。サラッと言いすぎ?
まあでも復讐の炎なんて四六時中燃やし続けてたら疲れちまってしょうがない。現実には冷静にならないと。
それに炎は消した訳じゃないんだ。今でも本気だよ。だけどそこんとこのバランスが難しいな。ときどき抑えきれなくなることもある。そんときは勘弁してくれよ。
ああわかったわかった。時間とって悪かったな。今から話すからそう不貞腐れるなよ。