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番外編 必勝祈願!? 年末ぼっちのメスガキ変身ヒロイン、頂点目指して初詣!


挿絵(By みてみん)


 皆様、あけましておめでとうございます! 久方ぶりの更新となりましたが、今年もどうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m

 今回は最終話から数日後の元旦を描いた番外編となります。最後まで楽しんで頂ければ幸いです!٩( 'ω' )و


 ――2122年、1月1日。東京某区、某神社。新年を迎えたこの日、その場所は大勢の参拝客で賑わっていた。1年の幕開けに相応しい快晴の空の下、多くの人々がこの神社に詰め掛けている。


 この1年の平和と安寧を願い、初詣に訪れた人々。その中には、お騒がせなスーパーヒロイン「RAY(レイ)-GUN(ガン)-SLINGER(スリンガー)」こと辻沢風花(つじさわふうか)の姿もあった。

 普段の彼女らしからぬ穏やかな着物姿に、周りの参拝客は彼女の正体に気付いていない。その様子を一瞥しつつ、彼女の隣を歩いている火弾竜吾(ひびきりゅうご)はくっくっと笑みを溢していた。トレードマークとなっている炎柄のレザージャケットには、僅かに雪が乗っている。


「くくっ、見てみろよフー坊。皆、お前の格好のおかげで誰だか分かってねぇみたいだぜ? 日頃から全方位にイキり散らかしてる生意気なスーパーヒロインが、こんなに畏まった着物姿で初詣に来るなんて誰も思わなかったわけだ」

「ふんっ! こぉんなめでたい日でも相変わらずな格好でウロつくような、風情のない人とは違うってコトですよっ! ……全く。何が悲しくて新年早々、あなたと初詣になんか来なきゃいけないんですかっ!」


 竜吾のからかいに対してへそを曲げたように、鼻を鳴らしてそっぽを向く風花。普段ならその弾みでJカップの爆乳がばるんっと揺れ動くところなのだが、着物の中に押し込められた豊満な果実は、しっかりとその内側に納められている。


「だってお前、いつもこういうところには来たがらないじゃねぇか。『神頼みなんて非科学的! そんな暇があるならヒロイン活動で人気向上に努めるべき!』なんて宣ってよ。それで実際に結果を出せたことなんてないのに」

「う、うるっさいですねぇ! だからこそ、こんなところで油売ってられるほど暇じゃないんですよ私はっ!」

「分かった分かった。帰った後の雑煮の餅、5個にしといてやるから」

「……6個です。それが譲歩の条件です」


 竜吾に痛いところを突かれた風花は、眉を吊り上げてぷりぷりと怒り出している。そんな彼女を宥めるように、竜吾は呆れた様子で餅での懐柔を試みる。6個という条件で渋々引き下がった風花は、ジトっと目を細めて唇を尖らせていた。


 それからしばらくの時間が経ち、長蛇の列に並んでいた竜吾と風花は、ようやく神前に辿り着く。会釈や賽銭を終え、鈴を鳴らした2人は共にお辞儀と拍手を行い、瞼を閉じて両手を合わせていた。この1年間に向けての願いに、想いを馳せて。


(今年こそ……この私が、No.1のスーパーヒロインになれますように)


 風花の願いは、誰もが想像する通りのものだった。彼女は険しい様子で目を瞑ったまま、むんむんと強く念じるように眉を顰めている。決して誰にも負けないNo.1のスーパーヒロインになること。それのみが、今の彼女を突き動かす原動力なのだから。


(……誰か1人でも。何かあった時に、コイツを助けてくれるような……信頼出来る友達が、仲間が出来ますように)


 一方。お調子者のように振る舞っていた先ほどまでとは打って変わり、竜吾は整然かつ真摯な佇まいで瞼を閉じ、神妙な雰囲気を纏って両手を合わせていた。己の力のみを頼りに戦い抜いて来た男は今、誰よりも深く神に祈っている。


 ――前日の大晦日。新年なんか関係ないと言わんばかりに、自室で光線銃(レイガン)の調整に没頭していた風花の元に訪れた竜吾は、「餅たっぷりの雑煮でも食わせてやるから」と半ば無理やり彼女を連れ出していた。風花が今着ている着物も、竜吾が用意したものだ。


 それは単に、年末年始も孤独に過ごしている風花を案じてのことではない。ヒーロー業から引退した自分が、いつか彼女の前から居なくなった時のために。風花に最低限の社会性を身に付けさせようと思っての行動であった。


 いつまでもスタンドプレーに走り続けて周りの目を無視しているようでは、いざという時に頼れる仲間達に巡り合うことも叶わない。竜吾がヒーロー業から引退した以上、これからは風花自身が、自分でその仲間達を見つけて行かなければならないのだ。


 どんな形であれ、どんな小さなことであれ。人々の営みの中に溶け込んで行けば、自ずと繋がりは生まれる。その繋がりはやがて大きな力となり、人々を守るヒーローの力へと成長する。

 かつてはNo.1ヒーロー「ROBOLGER(ロボルガー)-X(クロス)」だった火弾竜吾だからこそ、その重みをよく理解しているのだ。どんな猛者であっても、たった独りではヒーローになどなれないのだと。


(……俺がヒーローを辞めた後も、コイツは独りでどんどん危険な戦いに飛び込んで行っちまう。だからその時のために……コイツの助けになってくれるようなヒーローが、ヒロインが……1人でも多く……)

「ちょっと火弾さんっ、いつまでお願いごとに耽ってるんですかっ! 後がいっぱいつかえてるんですから、さっさと行きますよっ!」


 それは、孤独でありながらも挫けることなく「No.1」を目指し続けて来た風花を見て来た、兄代わりとしての切なる願いだった。しかしそんな竜吾の胸中など知る由もなく、すでに祈願を終えていた風花は腰に手を当て、眉を吊り上げた貌で真横から詰め寄って来た。


「……へいへい、分かってる分かってる。それじゃあ、そろそろ帰りますかね」


 そんな妹分にため息を吐き、竜吾は苦笑しながらその場を離れて行く。彼の前を足早に駆けて行く風花は逸る気持ちを抑え切れず、神社を後にしようとしていた。どうやらすでに彼女の頭の中は、6個のお餅が入ったお雑煮のことでいっぱいらしい。


「ほら火弾さん、早く早くぅっ! お雑煮が私達を呼んでますよぉっ!」

「……ったく、色気より食い気とはまさにコレだな。道理で彼氏の1人も出来ねぇわけだ」

「何か言いましたかぁ〜っ!?」


 竜吾のぼやきを聞き逃すことなく眉を吊り上げた風花は、可愛らしく頬を膨らませながら、細く優美な両手をバタバタと振り回している。

 見かけは可憐な美少女なのだが、その仕草には色気というものがまるで感じられない。そんな子供っぽい振る舞いに肩を竦める竜吾に、風花はますます怒り出している。


「何も言ってねーよ。ほら、ちゃんと前見て歩かねえと危な……」


 そして、手の掛かる妹分を宥めようと竜吾がひらひらと手を振った……その時。彼の傍らを、1人の男性が通り過ぎて行く。


「……失礼」

「……あぁ、どうも」


 端正な黒いロングコートを羽織っている、その壮年の男性は、190cmの竜吾にも劣らぬ長身であった。すれ違いざまに彼の「素性」に気付いた竜吾は、ハッとした様子で振り返る。

 

(あれは……関西圏に拠点を置いてるヒーロー企業「黒ヶ崎(くろがさき)コーポレーション」の社長……か? 最近はお抱えのヒーロー達が活躍し損ねていて、経営に陰りが見えて来ていると聞いたが……)


 竜吾が見抜いた通り。彼とすれ違った参拝客は、多くのヒーロー達を擁する一大企業「黒ヶ崎コーポレーション」の社長であった。

 ロングコートを翻し、颯爽とした足取りで神前に向かうその佇まいは、まさに大企業のトップに相応しい立ち振舞いだ。所作の一つ一つに、上に立つ者としての気品が見受けられる。


「……」


 だが。探偵として、元ヒーローとしての直感が「警鐘」を鳴らしていた。あの男の中には、ドス黒い何かが潜んでいるのだと。

 無論、この時点で何か根拠があるわけではない。しかし火弾竜吾という男が、それまでの人生の中で培って来た「経験則」が、「あの男は危険である」と警告していたのだ。


 そんな竜吾の視線を知ってか知らずか。黒ヶ崎コーポレーションの社長は優雅な足取りで、人混みの中へと消えて行く。竜吾のただならぬ様子に気付いた風花が駆け寄って来ても、彼は視線を外すことなく、社長の背中を見送り続けていた。


「火弾さん? どうしました?」

「……いや、悪い。何でもねぇ」


 この初詣から数ヶ月後。竜吾はこの時の直感が思い過ごしではなかったのだと、身を以て知ることになるのだが……それはまた、「別のお話」であった。


 ◇


 ――そして、その日の夜。黒ヶ崎コーポレーション本社ビルの社長室へと帰って来た男は、満足げな笑みを浮かべていた。そんな社長の様子に、副社長らしき幹部も恭しく首を垂れている。


「お帰りなさいませ、社長。如何でしたか、今年の初詣は」

「あぁ……相変わらずの人混みだが、たまには神頼みというのも悪くはない。人生、どれほど計画を練ろうとも最後は運だからな」


 ツカツカと歩きながら社長がコートを脱ぎ始めると、幹部は手早くそれを預かりハンガーに掛けて行く。その後すぐに幹部はタブレットを取り出し、社長にある映像を見せ始めていた。


「さて……例の計画は順調か?」

「はい、万事抜かりはありません。すでにこの量産型の生産体制は完成しております」


 タブレットの画面に映されていたのは――無数のアーマースーツを大量生産している、工場の様子であった。その映像を共に眺めている社長と幹部は、揃って悪辣な笑みを溢している。

 そのアーマースーツはなんと、ROBOLGER-Xに瓜二つの外観であった。素人がこの鎧を目にすれば、ほとんど本物との見分けは付かないだろう。精巧に模倣された「量産型」は映像の中で、無機質に生産され続けている。


「よし……我が社もこれでようやく、経営不振から脱却出来るな。いや……そればかりか、ヒーロー業界の頂点に君臨する日も遠くはあるまい。この計画さえ上手く行けば、我が黒ヶ崎コーポレーションは安泰だ」

「しかし社長、ここ最近は有望なヒーロー達も続々とデビューしておりますし……油断は禁物です。特に先月、あのBIGBULL(ビッグブル)-CHARIOT(チャリオット)を打倒したRAY-GUN-SLINGERという小娘は、大幅に実力を上げております」

「……ふむ」


 社長の云う「計画」に対する懸念事項として、自社の競争相手となる他のヒーロー達に言及する幹部。その中で彼が名前を出したRAY-GUN-SLINGERこと風花については、社長も思うところがあったのだろう。彼は幹部からタブレットを受け取ると、自ら操作して風花の活躍を映した映像記録を再生し始める。


「RAY-GUN-SLINGER……辻沢風花。年齢16歳、身長145cm。スリーサイズは……バスト105cmのJカップ、ウエスト58cm、ヒップは96cm……と言ったところか。なるほど、なかなか美味そうなカラダをしている」


 機械の翼を広げて華麗に空を舞い、敵の頭上から黄金の光線銃を撃ち放つ。そんな彼女の縦横無尽な戦い振りが、しっかりと映し出されていた。ボブカットに切り揃えられた艶やかな黒髪を靡かせる、小柄な爆乳美少女。その戦闘記録映像に、社長と幹部はいやらしく目を細めている。


「だが、確かに少々手強い。昨年の2121年4月に起きた戦闘では、BIGBULL-CHARIOTに惨敗を喫したが……どうやら、その頃とは比べ物にならないレベルにまで成長しているようだな」


 映像の中で彼女が纏っているピンク色のレオタード型戦闘服は、ぴっちりとボディラインに密着しており、その小柄な体躯に反した膨らみをこれ以上ないほどにまで引き立てていた。裸足や太腿、腋を露出している扇情的なデザインによって際立つ彼女の豊満な肢体に、社長はペロリと舌舐めずりしている。


「はい。その後の同年6月には、BLOOD(ブラッド)-SPECTER(スペクター)の残党勢力を率いていたリーダー格……グリード・グラトニオを逮捕しています。さらにその翌月の同年7月には、当時日本で暗躍していたマフィアのボス……スロウド・ラストールを逮捕寸前まで追い詰めておりました」


 背部の機械翼(ユニット)を使って激しく飛び回るたびに、黄金の光線銃で発砲するたびに、ばるんばるんと揺れ動いている釣鐘型の爆乳。その果実の躍動に、幹部も下卑た笑みを露呈している。親子ほど歳の離れた若い娘であろうと、その獣欲に遠慮の2文字はないようだ。


「そして同年の12月25日には、重装甲の新装備を実戦投入し……あのBIGBULL-CHARIOTを単独撃破、か。ROBOLGER-Xの援助もあっての戦果とはいえ、たかが16歳の小娘とは思えん戦闘能力だな……」


 特に社長の方は、広い骨盤によって成り立つ安産型の白い巨尻に深く興味をそそられたのか。子を産むことに適した大きな膨らみに、ねっとりと粘つくような視線を向けている。

 戦闘中、身動ぎするたびにぶるんっと上下に弾んでいる桃尻の曲線に目を付けた社長は、再びペロリと唇を舐めていた。戦うために鍛え抜かれ、細く引き締まっている腰つき。そのくびれによって際立つ爆乳と巨尻の大きな曲線は、雄の視線を否応なしに惹き付けていた。


 レオタード型戦闘服の繊維がTバックのように深く食い込み、露わにされている肌色の桃。その特上の果実を含む彼女の肢体を、社長と幹部は隅々まで舐め回すように観察している。香しい匂いを放つ足指の爪先から黒い髪先に至るまで、丹念に。


「確かに、小娘にしてはなかなかやる。よく育っているのは乳と尻だけではないようだ。だが、我々の計画を阻めるほどではない。あのNo.1ヒーロー・ROBOLGER-Xが引退した今……最後に笑うのは我々、黒ヶ崎コーポレーションだ……!」


 それから数分後。満足げな様子で映像記録の再生を終えた2人は、野心に満ちた貌を露わにしていた。社長室のガラス壁から一望出来る大都会の夜景を見下ろし、彼らは悪辣な笑い声を上げている。


 そして――数ヶ月後。彼らの「計画」はついに始動する。それはRAY-GUN-SLINGERこと辻沢風花に課せられた、新たなる試練の幕開けでもあった。



挿絵(By みてみん)


 ここまで読み進めて頂き誠にありがとうございました! 今話はお正月記念の短編となりましたが、MrR先生がカクヨムで公開されている作品「【コラボ小説】光銃閃姫レイガンスリンガー~日本橋騒動記~(https://kakuyomu.jp/works/16818093079925169288)」の前日談も兼ねており、同作で暗躍している黒ヶ崎社長もチラッと顔見せしております。今回の短編の後、レイガンスリンガーの物語はこちらの作品へと繋がって行く……という構成になっておりますm(_ _)m

 同作は大阪日本橋を訪れた風花がとんでもない大事件に巻き込まれ、その街を拠点とするヒーロー達と協力してヴィランの陰謀に立ち向かう物語となっており、さながら劇場版アニメのようなスケールの物語が展開されております。機会がありましたら、こちらの作品もぜひご一読ください!(*≧∀≦*)


 ではでは、読了ありがとうございました! 今年もどうぞよろしくお願い致します〜!٩( 'ω' )و




Ps

 今話で言及された「グリード・グラトニオ」と「スロウド・ラストール」は、ノクターンの方で公開しているシリーズ作品の登場ヴィランです。そちらの方はR-18指定となっておりますので、その点はご注意くださいm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
ヒーローの初詣、と平行して描写される悪人達の悪巧み………たまにはこういう話も良いですね~(*´∀`)♪ しかし、戦うレイガンスリンガーの姿を見ながらお下品な感想やリアクションをするおじさん達のキモい…
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