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最終話 熱線炸裂!? 本気出したメスガキ変身ヒロイン、巨漢ヴィランに奇跡の大勝利!

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

※鉄機 装撃郎先生に有償依頼で描いて頂いた、本作限定ヒーロー「レイガンスリンガー重装型」の設定デザインになります! 風花の人物像や印象から、ハナカマキリをモチーフにされていたとのこと。鉄機先生、誠にありがとうございました!m(_ _)m


「……上等ですよ。この私の一閃で……今度こそ黙らせてあげますっ!」


 圧倒的な膨張を見せ付ける紅金。その迫力に一瞬飲まれかけたが――ここで退くわけには行かない。

 この「壁」を乗り越えるためにここに来たのだから、決してここから目を逸らしてはならない。その一心で引き金を引く風花は、恐れることなく紅金の巨躯を睨み上げ、吼える。


PRESENT(プレゼント)-SQUASH(スカッシュ)ッ!」


挿絵(By みてみん)


 そして――エネルギーの充填を終えた強化光線銃が、ついに火を噴いた。


「……うぉおぉおぉおぉッ!」


 一点に凝縮された莫大なエネルギーが一条の熱光線となり、空を裂くように閃く。全てを穿つ猛熱と化したその閃光は、瞬く間に紅金の胸板に炸裂していた。


(……ッ! こ、これはッ、何というッ……! まさしく、奴以上のッ……!)


 予測を遥かに上回るその威力に、紅金は戦慄する。だが、鉄仮面に隠されたその表情に恐怖の色はない。その貌は、これ以上ないほどの「歓喜」の色で満たされていた。


(待っていた……! 俺はずっと、この「力」を待っていたのだッ!)


 竜吾の最大火力(アロガントパニッシュ)さえ凌ぐほどの、絶大な威力。それはまさしく紅金にとって、何よりも欲してやまない最高の贈り物(クリスマスプレゼント)だったのだ。これに耐え抜いた先の「勝利」こそが、彼の最大の目標なのだから。


(ROBOLGER-Xッ……!)

(火弾、さんっ……!)


 風花と紅金。双方の脳裏に、超えるべき最大の「壁」が過ぎる。

 ヒーローとヴィラン。立場は違えど、超えたい背中は同じ。そして、双方の火力と防御力も互角。


 ならば最後は、闘争心の優劣が勝敗を分ける。最後まで諦めず、己の力を出し切れる者だけが、この一騎打ちを制する。


「ぬぅううッ……おおあぁあぁあーッ!」

「はぁあぁあぁあ……あぁああーっ!」


 光線銃から伝わる反動がどれほど苛烈でも、腕がどれだけ悲鳴を上げても、決して銃身から手を離さない。どれほど胸板が熱くとも、装甲ごと肉を焼かれても、決して一歩も引き下がらない。そんな両者の「意地」が、真っ向から激突する。


 その衝突はやがて、凄まじい爆発を引き起こし、周囲にあるものを片っ端から吹っ飛ばしてしまった。爆炎に煽られた車や瓦礫が、弧を描いて宙を舞う。


「どわぁああーッ!?」

「うぉあぁあッ!? ど、どうなったんだ!? あいつらはッ……!」


 風花達の近くに居たヒーロー達も、為す術なく地面を転がっていた。地に伏せて落下物をかわし、辛うじてこの爆発から生き延びた彼らは、風花と紅金が居た方向に視線を向ける。2人が居た場所は猛煙に飲み込まれており、その地点に広がっている地面の亀裂が「余波」の凄まじさを物語っていた。


「ぐっ……はぁ、あッ……!」

「はぁ、はぁっ、はぁっ……!」


 やがて、戦場を包んでいた煙が風に流され――2人の姿が露わになる。

 どちらも憔悴し切った様子で息を荒げており、紅金の装甲服には亀裂が走っていた。それは発射の反動を受け止めていた風花の鎧も同様であり、今にも崩れ落ちそうなほどにボロボロになっている。脚部装甲の放熱板や腰部装甲のスカート部分からも、猛烈な熱気が噴き出していた。


「……ふっ。改めて礼を言うぞ、RAY-GUN-SLINGER。見事な一撃……だったッ……!」


 だが、先に倒れたのは紅金だった。宿敵の力をさらに超えた、新たなる好敵手。その全力を込めた一撃こそが、最高の「クリスマスプレゼント」だったのだろう。鎧を砕かれ、地に倒れ伏した彼の貌は、これ以上ないほどに満たされていた。


 その光景にヒーロー達は声にならない歓声を上げ、中継のカメラを向けている報道関係者達も、予想外の展開に騒然となっている。あのどうしようもなく生意気な小娘(メスガキ)だったRAY-GUN-SLINGERが、ついにその大口に見合う大戦果を挙げたのだと。


「……はぁ、はぁっ……え、えへへっ……! 今度こそ、私の勝ち……ですっ……! ざぁこ、ざぁこっ……!」


 だが、その悲願を成し遂げた風花の方もすでに限界に達していたようだ。最大出力の反動に耐えかねた増加装甲が音を立てて崩壊した瞬間、彼女の身体も仰向けに倒れてしまう。

 その弾みで、豊満なJカップの爆乳がぶるんっと大きく揺れ動いていた。ツンと上を向いている巨峰の膨らみが、その瑞々しい乳房の張り(・・)を物語っている。皿に落ちたプリンのように揺れ動く釣鐘型の果実は、その形を崩すことなく圧倒的な存在感をこれでもかと主張していた。


「お、おいっ!? しっかりしろRAY-GUN-SLINGER! 生きてるかっ!? さっきの爆発、半端じゃなかったぞっ!?」

「ふへ〜ふへへ〜……や、やりまひたぁ〜……」

「ダメだこりゃ、完全に目を回してやがる……。あれだけの重装甲が発砲の『反動』で自壊するなんて、どんだけイカれた火力だったんだよ……」


 ぐるぐると目を回している風花は意識が朦朧となっているのか、呂律が回っていない。そんな彼女のそばに駆け寄って来たヒーロー達は、勝利者と呼ぶにはあまりに情け無い彼女の姿にため息を吐いている。

 その一方で彼らは、周囲に齎されたあの強烈な一撃(プレゼントスカッシュ)の「余波」に戦慄を覚えていた。絶大な火力によって周囲に齎された被害の状況に、彼らは思わず固唾を飲む。


「……そのイカれた火力を真っ向から受け切ったBIGBULL-CHARIOTも大概だけどな。見ろよ、射線上にあったモノは車もアスファルトも根こそぎ吹き飛んでるのに、奴の背後にはほとんど『余波』が及んでねぇ」

「あぁ……。受け止めたのが奴じゃなかったら、身体ごとブチ抜かれて街そのものがめちゃくちゃになってたところだぜ。まさか奴の頑丈さに救われることになるなんてな……」


 ヒーロー達の言う通り、風花の射線上にあった物は軒並み消し飛ばされているのに、倒れ込んだ紅金より後ろの街にはほとんど被害が出ていない。それだけ紅金の装甲服が頑強だったのだろう。

 かつての竜吾すら超えた強化光線銃の火力(プレゼントスカッシュ)でなければ、パワーアップした紅金を打ち破ることは出来なかったのだ。それほどにまで、際どい勝負だったのである。


「じゃあ、この装備を作ったROBOLGER-Xは……それも全部計算尽くで威力を調整してたってのか……!? 街を巻き込まず、なおかつBIGBULL-CHARIOTだけを倒せるように、ギリギリまで火力を引き上げて……!」

「どいつもこいつもとんでもねぇ連中だぜ……イカれてる。これが、奴らの言う『本物』って次元なのか……!」


 竜吾はその可能性も想定に含め、風花にこれほどの強力な武器を持たせていたのである。街の被害を最小限に留めた上で、最大限の成果を挙げるための威力計算。その「結果」を目の当たりにしたヒーロー達は、自分達とはまるで「格」の違う「本物」の凄みを肌で理解し、背筋を凍らせていた。


 しかし何より、驚嘆すべきなのは。これほどの火力を誇る強化光線銃を完全に制御し、街への被害を最小限に抑えつつ紅金を撃破した風花の底力だ。

 もちろんそれは、増加装甲のサポートによるところも大きい。だが先ほどの最大火力(プレゼントスカッシュ)は、それだけで簡単に制御出来るような生易しい威力ではなかった。


 数ヶ月前の惨敗から、今日に至るまでの日々を鍛錬に費やし、地道なトレーニングを重ねて来た彼女だからこそ。最後の最後まで強化光線銃の反動に負けることなく、その銃身を制御し続けることが出来たのだ。

 どんなに優れた装備を揃えようとも、使い手の素養が伴わなければ宝の持ち腐れ。竜吾もそれを重々承知していたからこそ、風花にこの装備を渡したのである。彼女ならば必ず、「期待」に応えてくれると確信していたのだ。


 そんな彼らの「凄み」を目の当たりにしたヒーロー達は、どこか不安げに互いの顔を見合わせていた。こんな化け物染みた連中と、張り合って行けるのか……と。


「……俺達も、いつまでも軽い気持ちで点数稼ぎなんてやってる場合じゃないのかもな……」

「はぁー……こんな戦い見せられたら、気楽にヒーローやってられねぇもんなぁ……」


 だが、彼らもれっきとした正規ヒーローの一員。「格」の違いを見せ付けられたからと言って、心を折られて終わるような惰弱さなど持ち合わせてはいない。深々とため息を吐く彼らは、人気取りに拘るあまり「ヒーロー」という職業の本懐を忘れかけていた自分達の矮小さを恥じ、天を仰ぐ。


「……おい、さっさと帰るぞRAY-GUN-SLINGER。英雄様の凱旋ってヤツだ」

「ふひへ、へへへぇ〜……」

「まーだ目を回してやがる……。しょうがねぇ、癪には障るが連れて帰ってやるか。俺達もちょっとは働いとかねーと、またランキングが下がっちまう」

「まさかこんなチビが、あのBIGBULL-CHARIOTを倒しちまうなんてなぁ……。情けなさ過ぎて泣けてくるぜ」


 そして、それを思い出させてくれた風花に少しでも報いるために。彼らは深く頷き合い、風花を病院に連れて行こうと――その脚を掴んで引き摺り始めていた。これまで散々手柄を邪魔されて来たことに対する、申し訳程度の「仕返し」も兼ねて。


「ふっへへ〜……きょうたろぉくぅん、わらひぃ、やりまひたよぉお〜……!」


 そして、ヒーロー達に引き摺られながら戦場を去って行く風花は、中継が終わる最後の瞬間まで目を回し続けていた。その様子を最後までテレビで見届けていた竜吾は、デスクに脚を乗せたまま煙草を燻らせ、天井を仰いでいる。


 ――最終的な見栄えこそ決して良いものとは言えなかったが、彼女は確かな戦果を残して見せた。これからは散々彼女を叩いて来たメディアも評価を改めることになるだろう。


 自己顕示欲の塊だった風花としては、不恰好な場面で映像が終わっているのは些か不本意かも知れない。後で散々愚痴を聞かされることになるだろう。

 だがそれでも、きっと最後に彼女は笑う。かけがえのない唯一のファンからの期待に、ようやく応えられたのだから。


「……『ヒーロー』って生き方が商売になってからは、その在り方も随分と変わっちまったモンだが。どんなに時代が移り変わっても、根っこの部分は変わらねぇ」


 自身の後継者たる彼女の活躍を見届けた竜吾自身も、満足げな微笑を溢して煙を立ち昇らせていた。「No.1」だったからこそ見えていた、ヒーローとしての本質。その一端に触れていた彼女の成長を、喜ぶように。


「結局……今も昔も、誰かのために『本気』を出せる奴が『No.1』なのよ」


 ◇


 ――それから数日後。クリスマスが終わり、世間の関心が年末年始に向かい始めた頃。


「ふっふ〜ん、見ましたか火弾さんっ! この私の超絶ウルトラな大活躍っ! ホラ見てくださいよこのフォロワー数! 以前の私からは想像もつかないほどのバズりっぷり! いよいよ私の時代が来たって感じです〜っ!」


 紅金の逮捕に貢献し、一躍人気ヒーローへの仲間入りを果たした風花は、自信と歓喜に満ちた笑顔を輝かせて火弾探偵事務所に乗り込んでいた。そんな彼女の溌剌とした佇まいに、竜吾は呆れたような表情を浮かべている。その顔を目にしても、当の風花は気にする様子もなく爛々と瞳を輝かせていた。


「……ったく、退院したその日にまず言うことがそれかよ。お前ホントに友達居ないんだな。それでも華の女子高生か?」

「良いんですぅ〜! 今の私にはこぉ〜んなにたっくさんのファンが居るんですからぁ〜!」


 防寒着の上からでも形が分かるほどの爆乳をぶるんっと弾ませて、彼女は意気揚々と携帯デバイスの画面を竜吾に見せ付けている。さすがに人気「No.1」にはまだまだ遠いようだが、それでも以前の彼女からは想像もつかないほどの高順位に登り詰めていた。


「それもこれも、私の華麗にして優雅な大活躍があったからこそ! いやぁ〜自分の才能が恐ろしい! そろそろ歴史の教科書にも載っちゃう頃かも知れませんねぇえ〜!?」

「……言ってろ」


 そのためか、今日の彼女はこれまで以上に分かりやすく天狗になっている。そんな風花の有頂天ぶりにため息を吐きながら、竜吾は煙草の煙を立ち昇らせていた。呆れた様子で携帯デバイスを触り始めた彼は、風花と目も合わせようとしない。


「……それに大活躍ったって、華麗や優雅なんて言葉とは無縁な内容だったけどな。帰る時なんて他の同業者(ヒーロー)達にズルズル引き摺られてたじゃねぇか。背中泥だらけにして帰るのがフー坊流のお作法なのか?」

「あ、あれは強化パーツの威力が強過ぎるのがいけないんですぅ〜っ! ……それより見てください、また響太郎君から応援レビューが来たんですよっ! さっすが私のファン1号っ! 私の良いところをよぉ〜く分かってるんですっ! 世間のおバカさん達や誰かさんとは大違いでっすねぇ〜!」

「へいへい、それはようござんしたねぇ」

「もーっ、火弾さんっ! ちゃんと聞いてるんですかぁーっ!?」


 如何にも興味が無さそうに目を細め、風花の話を聞き流している竜吾。そんな彼の態度にぷりぷりと怒り、地団駄を踏んでいる風花は、今日も豊満な爆乳と巨尻をたぷんたぷんと上下に弾ませていた。

 彼女の人柄を知らない男なら、その躍動につい目を奪われていただろう。だが、彼女の身体など見慣れている竜吾は反応することなく、自分の携帯デバイスの画面にのみ視線を向けている。


「……聞いてるさ、『昔』からな」


 気の抜けた生返事と共に、デバイスを触る竜吾。その眼前の液晶には、ヒーロー達のランキングを表示しているレビューサイトが映し出されていた。


 そこに記載されていた彼のアカウント名は――「響太郎」。


挿絵(By みてみん)


 本作はこれにて完結となりました! ここまで読み進めて頂いた読者の皆様、応援誠にありがとうございます! 何とか年内に1作でも……という思いで書き上げた作品でしたが、楽しんで頂けたのであれば何よりです_(:3 」∠)_

 そして鉄機先生、この度は大迫力なイラストを描き上げて頂き誠にありがとうございました! 来年こそはちゃんとなろうに本格復帰したいところ……! ではでは、皆様メリークリスマス! そして良いお年を〜!٩( 'ω' )و



Ps

 火弾(ひびき)(ひびき)響太郎(きょうたろう)だった模様。いやーネットって怖いですね(白目

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[良い点] 完結、お疲れさまでした。 王道のストーリー、安心して楽しく拝読できました。 風花ちゃんの健康的なお色気描写は、サービス感ありました(^^) 粋なラストは、なるほどそうだったんですね〜と、納…
[良い点] ついに雪辱を晴らし、『少しだけ』ヒーローとして成長できた風花……! 素晴らしい~(≧▽≦) 読者を代表して、最高のクリスマスプレゼントをありがとうございました~!m(_ _)m まさか『…
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