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斜陽のケヘテリ王国

 北蛮大陸北西部ケヘテリ地方

 14ヶ国60郡16都市からなる地方。面積はサウゼンスやフィルノスローとほぼ同等。

 北方辺境に近く、遥西大陸にも近いこの地方は、異民族の襲撃が頻発することから北部と西部は城塞都市が存在しており、常に防備が固められて異民族の侵入を阻止している。

 北蛮大陸北部にしては珍しく中央部に湿地帯があり、その湿地帯は貴重な農耕地になっており、その周辺にはいくつかの集落がある。首都のあるケヘテリオ郡には河川と東西南北の街道が重なり、ゴバルやサウゼンスとは関係が深い。

 地方東北部にはケヘテリジブ大岩山があり、その頂上付近には水源池がある。そこから東と南に向かって河川が続き、東側の河川はゴバル地方へと流れ、サウゼンスとの境にある小川と合流した後に洞穴に流れ落ち、ギスヴァジャ地方の丘下に流れるベヤセヌ川に合流して最終的に海へと流れていく。南側の河川はデルトム地方やヤージカル地方を経由して最終的にはメンゴルーダを横断して海に流れる大河となる。

 全体的に荒野が多く東部〜中央部以外は農耕には適さない土地柄である為、東部〜中央部以外は痩せた寒冷な土地でも育つ豆や芋類が主な食料となっている。水源と地下水脈が多いのか、地方のどこにでも井戸ができたりする。

 

 初代ケヘテリ王以来、代々の王や家臣達が懸命に国境を守ってきたが次第に侵食され、国境のほぼ内側まで侵攻されていたものの、遥西の軍神と呼ばれたフリング・ガシャル・ケヘテリオの出現で北方辺境異民族と遥西大陸異民族の襲撃が無くなり、国境から外にまで勢力を伸ばし、地方内は平穏に包まれた。70年の平穏の間に開発が進み、北の都と呼ばれたサウゼンスとも肩を並べる程の都市と文化を築いた。

 448年にケヘテリ王家六代に渡って仕え、ケヘテリ王家の武威を大陸中に轟かせていたケヘテリ王家の長老フリング・ガシャル・ケヘテリオが96歳で死去すると、ケヘテリ王家は次第に衰退していった。

 異民族討伐を終えて帰国し命数を悟ったフリングは、臨終の間際に不安に揺れるケヘテリ王・トラシェ・カタートス・ケヘテリオに「ケヘテリの王たる者がその様に不安がっては家臣も不安に揺れますぞ、王者たるもの常に堂々となされよ、さすれば家臣団も揺らぐ事なく支えてくれるでしょう」と遺言し、その翌日には静かに息を引き取った。


 フリングの死後、北方辺境異民族と遥西大陸の異民族が大挙して攻め込んできたが、ケヘテリ軍は奮戦して撃退した。

 フリング亡き後のケヘテリ軍のわずかな統制の乱れから、ケヘテリ王国の衰退を見てとった北方辺境異民族は好機とばかりに城塞都市の近くに頻繁に出現し始め、討伐に出たケヘテリ軍が大勢ならば潜んで出ず、小勢ならば徹底的に蹴散らした。

 ケヘテリ軍の対応の鈍さにかつての強いケヘテリ軍は存在しないと確信した北方辺境異民族は度々夜襲を行うようになり、近隣の村や町を襲って被害が出続ける。

 トラシェの対応は後手に回り、家臣団も有効な手を打てず、ケヘテリ北部は北方辺境異民族に好き勝手に荒らし回された。

 トラシェと家臣達は改めてフリングの手腕の凄まじさを思い知らされたという。

 

 458.5.19〜458.12.30

 ケヘテリ地方のほぼ全域で住民反乱が起き、トラシェは王太子のゼルギジェの進言を元に友好関係にあるゴバル諸勢力の力を借りて反乱を鎮圧した。

 ゴバル諸勢力は見返りを求めないふりをして後日にケヘテリ王国の国庫を空にしてもなお支払いきれない額の請求書と非常に細かく記された諸費用を計算した結果の書物を送りつけた為、ケヘテリ王家は莫大な借金を抱える事になりそうになったが、ゼルギジェがゴバル諸勢力に抗議した為、借金はなんとか帳消しにできた。


 461.2.9

 ケヘテリ国内ではケヘテリ王の力を疑問視する在地領主が支配を離れて独立し、家臣団は惰弱なケヘテリ王を強制的に隠居させて王太子を立てるべしと主張する過激派とケヘテリ王は決して惰弱な王ではなく、王太子は若く才気があり過ぎる故に時期尚早と主張する穏健派に分かれて争った。

 更に過激派や穏健派の中には王太子の弟達を担ぎ上げる者達も存在しており、同じ派閥でも団結力が揺らぐ事があった。ゼルギジェは工作を進めて少しでも有利になる様に務めた。


 461.2.18〜2.20

 宴席でトラシェの次男とその一派が刺殺される。

 トラシェは息子とその派閥の不幸を悔いたが、王太子はこれまでにない清々しい笑顔で父を慰めつつ、耳元で「これで戦局は九分一分で私の勝ちです、せめてもの情けですから私は父上にだけは手を下しません、せいぜい安心して部下や余所者に寝首をかかれて逝って下さい」と囁いた。

 ゼルギジェは場を取り仕切りつつ、わざとボケを言い、それを指摘する者や笑う者は後日処断され、それに合わせる者は程度によって生かすか殺すかを選別した。

 ゼルギジェの振る舞いに我慢ができなくなった者達はトラシェの元に走り、ゼルギジェの対立貴族達も我慢の限界としてトラシェを支持したが、これもゼルギジェの炙り出しと一網打尽の策であった。

 将軍達は惰弱なトラシェと陰険なゼルギジェの両方を見限っており、両者の権力争いを「せいぜい潰し合ってろ」というような目で見ていた。


 461.3.5〜4.9

 トラシェとゼルギジェの暗闘が続き、ゼルギジェの策で将軍達も政争に巻き込まれて国内でも軍事衝突が発生しかける事態にまで発展する。

 ゼルギジェの扇動によりケヘテリオ郡の近郊で会戦が行われたが、トラシェが仲裁して被害が出る前に鎮まった。

 ゼルギジェの息がかかった将軍はトラシェの力量不足を過分に責め立てて退位を迫るが、トラシェは「力量不足は我らであり、儂が退位したとて状況が悪くなるだけだ」と言うが、将軍は聞く耳を持たずに総攻撃の号令を出そうとするが、トラシェに「黙れ!」と一喝されてたじろぎ、騒ぎが鎮められた。


 461.5.6〜5.14

ヤージカル帝国の第三王女ルミエがサウゼンス王・ノルテニアに輿入れするので進路上の安全を確保してほしいとの勅書が届き、トラシェは正規軍二万を動員してヤージカル帝国正規軍と合流を図った。留守中の保険としてゼルギジェとその妻子も従軍させた為、ゼルギジェは父を合法的に処理できる好機が巡るやもと企図し従軍した。ゼルギジェの妻は夫の暴走に対する義父の心労を慮って手紙の代わりに暗号を送って夫の企みをトラシェに知らせた。

 トラシェは暗号を読み取り、覚悟を決めてデルトムに向けて行軍を早めた。

 

 461.5.15〜5.17

 デルトム北部にてヤージカル帝国正規軍五万とデルトム軍正規軍三万と合流し、ゴバル最南端にて賊の大軍が待ち受けており、帝国軍は賊軍と交戦する。

 初撃はデルトム軍の勇猛さ、中盤から後半戦はケヘテリ軍の奮闘が目立った。

 挟撃当初は賊軍の奮戦に面食らい怯んだケヘテリ軍を見て、トラシェは自ら剣を持って最前線に駆けつけて気合と共に賊徒二人を切り伏せて鼓舞すると、ケヘテリ軍の士気が大いに上がり、ケヘテリ軍は気声をあげて猛攻撃に転じた。

 若い頃はフリングの存在感が大き過ぎて目立たなかったが、フリングの指揮の元、多くの戦場で戦功を挙げていたトラシェは久々の戦場で昔の血が騒ぎだし、賊軍の放つ矢玉も恐れず突撃して獅子奮迅の戦いぶりを見せた。

 世間の評判と違うトラシェの勇猛さに賊軍は怯み、トラシェに一か八かの一騎打ちを仕掛けてきた剛力の賊将は激しく打ち合って圧倒され、七合目の打ち合いで得物の大斧を弾き飛ばされ、落馬させられて生け取りにされたので、ケヘテリ軍の士気が更に高まった。

 ゼルギジェは偽情報を流して賊将を誘導し父を処理しようと目論んでいたが、父の予想外な勇猛さに苦虫を噛み潰したかの様な表情をし、状況を利用して自らも一隊を率いて奮戦し、戦功を挙げた。

 トラシェの勇猛さにデルトム王ヤトルも負けん気を出して総攻撃を号令し、ヤージカル帝王は遠目ながらも笑って両国の軍の勇猛さと働きぶりを称えた。

 デルトムとケヘテリの総攻撃を受けた賊軍はなすすべもなく壊滅。トラシェは一人で賊徒70人を負傷させ、賊徒15人、賊将4人を倒す活躍をした為、これ以降トラシェは「ケヘテリの失思王」が転じて「ケヘテリの獅子王」と渾名され、この戦いぶりは「咆哮は雷鳴の如し、一撃は虎の如し、威厳は獅子の如しにて、賊軍幾人たりともかの王に敵う者無し、70人の賊徒を倒し、15の賊徒を討ち、剛力の賊将4人も王に敵わず」と云われた。密かにトラシェを馬鹿にしていた者達は驚いて口を閉じ、臆病者、腑抜けと陰口を叩く者はいなくなった。

 トラシェは戦の後に無理が祟って倒れ、ゼルギジェ達に呆れられながら回収された。

 ゼルギジェは長い間流してきた父の悪評が覆されてしまった事に腹を立て、捕虜にした賊徒を八つ裂きにして憂さ晴らしをした。


 461.5.21

 トラシェの勇猛さと活躍を伝え聞いたケヘテリ王国の過激派は政変の蜂起を躊躇し、穏健派は誇らしく思って勢力を盛り返した。

 住民反乱は勢いを失い、北方辺境の異民族達も仕切り直しの為に退散した。


 461.9.23

トラシェの勇名を聞いて図に乗った遥西大陸の戦闘部族が「ケヘテリの腰抜けどもをしつけてやるか」とばかりに頻繁に襲撃を仕掛けてくるが、トラシェはこれまでの弱腰外交を転換して自ら討伐に乗り出す。

 遥西大陸の戦闘部族はケヘテリ軍に連戦連勝だった為、討伐に乗り出してきたトラシェを舐めてかかっていた。しかし、迷いのなくなったトラシェとケヘテリ軍将兵は遥かに強くなっており、その凄まじく燃え上がる様な士気に圧倒され、その烈火の如き猛攻に遥西大陸の戦闘部族は完膚なきまでに叩き潰され、総崩れになって散り散りに退散していった。


 462.1.6〜2.4

 ケヘテリに遥西大陸の異民族軍3万が襲来するが、ケヘテリ軍は関所で専守防衛に務め、トラシェ率いる正規軍一万が到着すると、迎撃の為に戦線を進め、日暮れ時には遥西大陸に程近いインジブの荒野にさしかかる。

 遥西大陸の異民族軍は猛攻の好機と見て密集陣形をとってケヘテリ軍に襲いかかるが、トラシェが大喝するや異民族軍は思わず立ち止まってしまう。

 そして、トラシェが攻撃の号令を出し、同時に後方に回り込んでいた将軍達が異民族軍の背後から攻撃を仕掛けた為、異民族軍は動揺する。更にケヘテリ軍が松明と火矢を放ち、異民族軍が着ている枯れ草を幾多にも編み込んだ鎧に引火して混乱した。

 「遥西大陸の異民族は大移動の際、火の神に祈祷し、見知らぬ土地の邪気から身を守る為に実りを齎す草木で編んだ鎧を身につけ、夜は皆で身を寄せ合う習慣がある。それを利用して火攻めにすれば必ずや打撃を与えられるでしょう」とケヘテリ軍の幕僚であるキンス・シェゼハンは献策し、トラシェはそれを聞き入れて実践した。

 キンスは別働隊を率いて果敢に敵陣に斬り込み、異民族軍の家畜小屋の扉を壊し、補給物資を燃やして離脱した。異民族軍は密集陣形を敷いていたことが仇となり、尻に火が付いて駆け回る家畜に惑わされ、継続的に放たれる火矢によって物凄い勢いで火が燃え広がる。如何に勇猛と恐れられた遥西の異民族軍といえど火に気を取られては上手く戦えるはずもなく、ケヘテリ軍の猛攻の前に次々と蹴散らされていく。

 異民族軍の大将はこのままでは戦にならないと見て総退却を命じたが、密集陣形を敷いた上に混乱した味方は大渋滞を起こして引くに引けず、火が更に渋滞する味方に瞬く間に燃え移って阿鼻叫喚の地獄絵図を形成していった…。

 トラシェは逃げ惑う異民族軍の大将らしき人影を発見したため、剛力を以て弓を引き、矢を放つ。

 異民族軍の大将は乱戦の中で脳天に流れ矢が当たり討ち死に。主だった戦闘部族長や勇士達も次々と討ち取られていった…。


 戦は明け方には終わり、インジブの荒野は夥しい数の焼死体と異民族軍の遺体と血の川で埋まっていた。

 この戦い以降、遥西大陸の異民族軍が北蛮大陸に侵攻することはなくなり、ケヘテリ地方には漸く平穏が訪れようとしていた。

 

 466.8.11〜9.2

 トラシェが病に倒れ、翌月には病死した。享年57歳。在位28年の世だった。

 トラシェの葬儀の後は王太子のゼルギジェが王位を継ぎ、第十四代目ケヘテリ王となる。


 467.1.3

 ゼルギジェはインジブ荒野の夜戦で功のあったキンス・シェゼハンを表向きは称えたが、実際は彼を貶め、裏では嫌味と火攻による悪行を責め立てた手紙を渡し、キンスはゼルギジェに失望して出奔した。

 ゼルギジェはキンスを反逆者に仕立てて待ち伏せをさせたが、キンスを待ち伏せていたのが親しい友人だったので、キンスは賄賂を渡して見逃してもらい、デルトムへと流れていった。


 467.1.8〜471.9.23

 ゼルギジェはキンスを見逃した者達に厳罰を与えて見せしめにしようとしたが、全員が職を辞して夜逃げした為に空振りに終わる。

 ゼルギジェはデルトムに逃げ込んだキンス達の身柄を渡す様にデルトム王ヤトルに依頼したが、ヤトルは依頼を無視した。

 ゼルギジェはトラシェの側近達に難癖をつけて次々と罪に問い、問答無用で排除していき、代わりに自分に媚び諂う者達を側近にして暴政を敷き始めた。

 ゼルギジェ政権が動き出した頃合いにてケヘテリはラダミーアと同盟し、サウゼンスとデルトムとは不和になった。

 470年にはギスヴァジャの分裂に乗じる形でラダミーアを唆してサウゼンスの背後を突いてもらい、偽書疑心の計をノルテニアに仕掛けて惑わし、ノルテニアがそちらに向かっている隙にゴバル北部を掠め取る策を実行するが、ノルテニアの解決速度が予想を遥かに上回っていた為に失敗した。

 ゼルギジェは外交の席でノルテニアに強く抗議されたのを根に持ち、リジイン王太后の使者を通じてギスヴァジャの西部王トマシュと同盟を結び、カキャボのバウロ・カリオスとも密かに手を結んでサウゼンスを牽制した。


 471.7.25

 デルトム王ヤトルの末子であるリハインハル・マルクシア・デルトーアは巡察中に冒険者飯店にて仕事をこなすキンスと出会い、意気投合して与えられた捨て扶持の全てをつぎ込んでキンスを召し抱える。

 キンスは先主のトラシェに似た気質を持つ若きリハインハルを気に入り、彼の軍師として仕える事になる。

 

 471.12.4

 ゼルギジェはギスヴァジャのトマシュの要請を受けてデルトム略奪に協力するが、キンスの防策計を要れたリハインハルが国境で野盗に扮したケヘテリ軍を撃退し、トマシュの手の者はヤトルが遊撃部隊を指揮して撃退した。

 同時にリハインハルの依頼を受けた東ギスヴァジャのテヘズが西ギスヴァジャのリフズラヤ郡を強襲して分断を図ったため、トマシュ勢は撤退した。

 

 472.2.19

 ケヘテリ地方とデルトム地方で疫病が流行。

ゼルギジェは隔離政策を取った後に失火を装って疫病に侵された民を纏めて焼き殺した為、国民から不興を買う。

 デルトム地方ではデルトム王国の王太子ハスルが体調不良に陥り、王のヤトルが医師を動員してハスルの治療に専念しつつ、リハインハルとキンスは衛生環境を整えて病人達を治療する診療所を開設し、国民の診療に集中した。


 472.3.1〜3.5

 デルトム王ヤトルが病に倒れ、ハスルは危篤に陥る。

四日にハスルが病死し、五日にはヤトルが病死した為、ヤトルの次男クリトン、三男のテイロが後継を争うが、ハスルとヤトルが亡くなる前日に積極的に行動していたリハインハルの功績が認められた為、王位は末子のリハインハルが継承した。

 クリトンとテイロは疫病が流行した途端に我が身の保身に走って領地に引きこもり、父と兄が危篤になった途端に武装して謁見しにきた為に父の不興を買ったのが決定打になったとされる。


 472.3.7〜3.15

 ゼルギジェはクリトンに調略を仕掛け、リジイン王太后は宰相ラオスに相談した上でテイロを支援して唆した。

 10日にクリトン、11日にテイロは正統を喧伝して反乱を起こした。

 ゼルギジェは14日の明け方にクリトンと連動して国境を脅かす約定を交わしており、13日の夜間にクリトンは千人余の兵を率いて国境付近に陣取ってケヘテリ軍の到着を待っていたが、ケヘテリ東部に流布していた「サウゼンス軍が迫りつつある」との噂に過剰反応したゼルギジェは約定を反故にした。

 単独で戦わざるを得なくなったクリトンとテイロは15日にリハインハルに鎮圧され、クリトンとテイロは反逆者として牢に繋がれた。

 

 472.3.24

 サウゼンス軍がなかなか来ないので、ゼルギジェは国境付近の守りを解き、斥候を放って確認した後にゼルギジェ自らが指揮してゴバル地方に攻め入ったが、サウゼンス軍がすぐ近くに駐屯しているのを見て慌てて退却した。

 ルミエが祭りを振興していた際にゴバルの民が大量の旗を持って行き来していただけだったのをゼルギジェが軍勢が駐屯していると誤認したのだという。


 472.3.29

 北方辺境異民族軍がケヘテリ地方に侵攻し、ゼルギジェは迎撃して勝利したが、先日の約定反故を恨みに思ったクリトンの残党がケヘテリ地方東南部を襲撃して複数の村落が焼き払われた。

 

 472.4.5

 遥西大陸東部の領主であるルガット・スエフィルがケヘテリ王国に庇護を求めたが、ゼルギジェは間諜の類と読み目隠しをして拘束した。


 472.4.15

 遥西大陸から千五百の兵を率いた将がルガットの身柄を引き渡す様に要求したので、ゼルギジェは兵に命じて関の上からルガットを投げ落とさせた。

 ルガットはその場で処断され、遥西大陸の将はゼルギジェに礼を述べて引き上げていった。

 遥西大陸の将はゼルギジェを「少し脅したら慌ててルガットを差し出しましてな、気は小さくて度胸もない小者ですわい」と評し、主人にも伝えてゼルギジェを嘲笑した。


 ルガットと別行動をしていた甥のインクル・スエフィルはゼルギジェが冷酷非情と見るやケヘテリ地方のもう一つの小さい関を通過するルートに切り替え、ルガットの遺児であるバルコッタ・スエフィルを連れて迂回路を進んだ。


 472.4.18

 インクルとバルコッタは旅人のヤオトルニ・ジュギトーの協力を得てケヘテリ地方西南部の桟道を通り、警備がほぼいないもう一つの関所を通過する。


 472.5.1

 遥西大陸からの使者がゼルギジェに会見を申し込み、使者が「我が主人がそなたの功績を認め、特別に我が主人の僕となる事をお許しになりました、ありがたく受け取る様に」と言ったので、ゼルギジェは使者を叩き出した。


 472.5.9〜5.12

 遥西大陸から一万五千の軍勢がケヘテリ地方に攻め込み、ケヘテリ軍は堅守に務めたが、遥西大陸の攻城兵器「投石車」の斉射が猛威を振るい、インジブ荒野の関所が破壊され、防衛線が突破される。


 472.5.15〜5.20

 ゼルギジェは二万の軍勢を率いて遥西大陸の軍勢を迎撃したが、遥西大陸の連環戦車隊の戦法を前に一方的に蹂躙され、ケヘテリ軍は負傷者多数、戦死者2000を記録するほどの大敗を喫する。遥西大陸の軍勢は城塞都市を一日で陥落させ、将兵は見せしめに処断された後、遺体はゼルギジェに全て送りつけられた。

遥西大陸の軍勢は城塞都市を破壊し尽くしてから遥西大陸に引き上げ、その際に住民の八割が戦利奴隷として連れ去られた。

 ゼルギジェは西部諸郡の失陥と甚大な被害に苦虫を噛み潰したが、「次は目にもの見せてくれる!」とばかりに対策を講じた。


 472.6.2〜6.23

 ゼルギジェ主導の下、雨季の灌漑整備や街道整備を行う傍らでエガンロン将軍らに命じて西部諸郡を奪還。前回の戦場の視察を行い、戦場に残された夥しい轍と馬蹄をはじめとする様々な特徴から対処策を閃き、街道や草原に細工をしかけた。

 

 472.7.5〜7.27

 遥西大陸の軍勢二万三千が再びケヘテリ地方に攻め込むが、ゼルギジェは六千の兵で迎撃し、連環戦車隊を落とし穴に誘い込んで無力化しつつ、戦車隊には凹凸の激しい坂道にて迎撃し車輪に木の杭、馬に脚縄、兵には土砂で対応して撃退する。

 歩兵には弓斉射の後に糞尿と投石を投げては逃げてを繰り返して誘い込んだ。遥西大陸軍の歩兵は怪我に糞尿が染み込んで病に倒れる者が続出した為に攻撃を躊躇する様になった。

 遥西大陸軍は高楼弩を組み立てて坂上のケヘテリ軍を射かけるが、ケヘテリ兵はさっさと退散して矢の軌道から逃れる。ゼルギジェはケヘテリ将兵に妨害と逃げの作戦を徹底させた為、遥西大陸軍の野営地を形成する紐を切ったり、戦車の縄を半分だけ切る、飲料水に弱い下剤を入れる、寝所に尿をぶっかける、武器・食料を粗悪品にすり替えたり少量盗む、服に衛生害虫を仕込む、といった嫌がらせに遥西大陸軍は翻弄されて怒り、ケヘテリ軍を追いかけるようになる。ケヘテリ軍は追われるとたちまちのうちに姿をくらまし、遥西大陸軍が行軍すると影の様に付き纏った。そうこうしているうちに遥西大陸と敵対関係にある南のルイエンタからマヤジン将軍が曲がり鍵鎌隊を率いてケヘテリ軍への援軍に現れ、遥西大陸の軍勢は前後から挟み撃ちを受ける前に北に迂回して戦場から離脱した。

 遥西大陸の軍勢はケヘテリ北部の城を攻略しようとしたが、北方辺境異民族軍と遭遇戦になった上にゼルギジェの手の者に兵糧と武器を奪われたので、城攻めを諦めてケヘテリ地方から脱出した。

 遥西大陸の軍勢は兵糧が心許なくなり、現地調達の為に収奪に向かったが、行く先々で民が村を捨てて逃げ去っていた為、兵糧を得る事ができなかった。遥西大陸軍は兵糧を食い潰してしまった為に軍勢を解散して各々故郷へ帰っていった。

 

 472.9.15〜10.30

 ケヘテリ王国は遥西大陸軍との戦いの影響で収穫が減り、ゼルギジェは諸費節約と食料調達を命じて乗り切る意向を示した。

 サウゼンスのルミエはヤージカルの兄と相談した上でケヘテリ地方に食料を流通させてやった為、ケヘテリ地方の民はなんとか飢えずに済んだ。



 472.12.20

 インクル、バルコッタ、ヤオトルニはケヘテリ地方の桟道を抜け、ヤージカルに入る。


 473.2.4

 インクル、バルコッタ、ヤオトルニはヤージカルから東進してケェヌジラに入る。

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