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ライセンス! ~裏世界で生きる少年は、今日も許可証をもって生きていく~  作者: ともはっと
――B級許可証所持者ラムダ――

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第86話:談話

前回のあらすじ。


多分姫を呼んだのは読者さん。

お互いを意識する男性陣。

やがてめくるめく男の園が広がる? みたいな?


「ぅぉっ。姫、何しにきた」

「何しにきたとは失礼な。ラムダが型式を無事会得したと聞きまして、そのお祝いに、と」


 リビングにすっと来てすっと丁寧な所作で姿勢正しく座る姫が、シグマの驚きに無表情に答える。


「型式で思い出しましたが、紅蓮より聞きましたよ。型式を使った技をすぐに編み出した、と」

「うっ……」


 姫は「覚えたてでよく思い付きましたね。流石ですよ」と誉めるが、冬は、妙な胸騒ぎしかしなかった。


「『舞踊針ぶようしん』、でしたか?」

「……はい」


 その声は。

 まるで品定めのようで。


 どきどきと、先程とは違い不安で高鳴る胸を悟られないよう返した言葉に一時の間が訪れると、姫は、まるで獲物を見つけたかのように見つめて鼻で笑った。


「中二病」

「うぐっ」

「話に聞くと、針を『疾』の型で浮遊させ踊るように舞わせ、防御と攻撃を兼ね揃える技のようですが、隙がありすぎるようですね」

「いや、あの……」

「その隙の例でいうと。例えば、体の周りを衛星のように廻っているだけなら腹部だけしか守れていないのでは? 思考するための頭部の防御は? 逃げる為に使う脚部の防御は?」

「疎かでした……」

「ぶようしん? 大層な名前の割には防御は疎か。であれば、防御を捨てて攻撃だけに特化したほうがよいのでは?」

「はい……おっしゃる通りです……」

「……『舞踊針ぶようじん』にしたほうがよいのでは?」



 なんでそこでギャグみたいなことを。

 水原さんは、僕の作り出した技の名付け親にでもなりたいのでしょうかっ


「はい……今度からそう名乗ります……」

「よろしい。精進なさい」


 満足げに頷く姫に、冬も先のような完敗があるので強くも言えず。


「お前……祝いに来たんだよな……?」

「ええ、そうですが? 私に名付けられることをまた光栄に思いなさい」

「……わいは鎖姫には技できてもみせんとこ」

「その前に。松君はしっかりと型式覚えていかないとね。ちょうど教えてくれる人なら傍にいるみたいだしね?」


 肩を落とす冬の傍で、瑠璃が含みを持たせた言い方で松に言うと、「あいつが型式使えることしっとったら最初に聞いとるわ」と、恥ずかしそうに返した。


「まあ、なんだ。とにかく。こんなに大勢に祝ってもらえるとはいいもん――」


 シグマが煙草を吸おうと指を先端に近づけながら話し出すと、姫にぱしんっと叩かれて煙草が飛んでいった。


「煙草臭いですね」

「まだ吸ってねぇけどなっ!?」

「男性ばかりでむさ苦しい。ラムダの恋人の方達はどうしましたか?」


 ……恋人は一人だけです。


 と、なぜ皆してハーレムにしたいのかと、ころころと話題が変わる中、そこだけは譲りたくない冬が反論しようとしたとき――


「あの……本当に言わないんですか?」

「いいのー」

「絶対言ったほうがいいと思う……」

「だからいいのー」

「冬ちゃん可哀想」

「私も可哀想だと思ってー……」


 寝室の扉が開いて女性陣が現れた。


 出てきてすぐ。和美の言葉にがくっと項垂れたピュアが、リビングをぐるりと見渡すと、


「やっぱり姫ちゃんだーっ!」


 嬉しそうな大声と、ひゅんっと音が鳴って寝室前からピュアの姿が消え。

 次には、ぽすっと音とともに勢いよく姫にピュアが飛びついていた。


「……瑠璃、見えたか? 今」

「見えなかったね……冬君は?」

「見えるわけがないです……」


 近距離を一瞬で移動したピュアに、冬達は驚く。

 そんな三人を、シグマは「俺にも見えんからお前らに見えたら困る」と、再度煙草を吸おうとしたところを姫に叩き落とされていた。


「ピュアも来ていたのですね」

「来てたよー。結婚した報告にー」

「おや。私も初耳です。婚期逃さなかったのですね。これからのシグマのお腹の具合を案じてしまいますね」

「なんで!?」


 シグマがうんうんと頷いている。

 トイレと仲良しになるのはもうこりごりだった。


「いえ。あの型式かと思えるほどに壊滅的な料理なら、間違いないでしょう」

「壊滅的!?」

「結婚したら二人の愛の巣においそれと行けませんし」

「最近全く来てないけど、それよりも来ないのっ!?」

「助けて欲しいので来てくれ……」

「私には御主人様がおりますし、御主人様のお世話はあの正妻と第二夫人には任せられませんので」


 飛び付いてきたピュアを受け止めて頭を撫でる姫がそんなやり取りを夫婦としているが、その表情は先日冬が圧倒的なまでに完敗した時に見せた殺気が嘘なのではないかと思えるほどに慈愛に満ち。


 ……水原さんは、ピュアさんが大切なんですね。


 姉が傍にいたら、姉とも仲良くこうなっていたのだろうかと思った。

 自分も早く姉を見つけて、こんな風に仲の良い人と戯れられるように助けてあげたい。


 冬は二人を微笑ましく見つめながら姉のことを考えていると、背後から誰かに包み込まれた。


「冬……頑張ろうね」

「スズ……はい」


 スズが自分の考えていたことに同調してくれたことに嬉しく思い、スズの頭を撫でる。


 自分の姉である雪を見ているのに、それを姉だと認識できていない冬を見ていると、スズは切なくなった。


 先程知った、雪が冬に正体をまだ伝えられない事情に、早く冬を同ランクに昇格させたいと言う想いで言っているのだが、冬には上手く伝わっていないような気もした。


 『幻惑』による認識の改竄。

 スズはかからなかったが、こうも凄いことが出来ることに、スズはこれからの冬の道が心配になった。


「あ。ずるい! 冬ちゃん、私も頑張るからねっ!」

「先輩っ! 私も頑張ります! 何かできることあれば言ってくださいっ!」

「? ええ。お願いします……?」



 なぜこの二人がやる気になっているのか。

 何を頑張るのかよく分からないが、寝室で何を話していたのか、余計に気になった。


 だが。聞けば先程のように、思い出したくない何かが起こされるのだろう。



「ねーねー。ラムダの服が破けてるのなんで?」

「「聞くな!」」

「?」


 自分が放った『幻惑』によって、このリビングでは盛大な何かしらが行われていたことを知らないピュアが、ことんっと首を傾げる。


「お前は、もう二度と俺達に『幻惑』使うなっ!」

「なんで!?」


 あんなこと、もう二度と経験したくない。


 なのに。なぜか互いの顔を見ると少し照れてしまう男性陣だった。

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