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ライセンス! ~裏世界で生きる少年は、今日も許可証をもって生きていく~  作者: ともはっと
第三章:B級への道

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第67話:メイドの教え 1

前回のあらすじ


メイド、冬を森へ拉致る。


 とある地方にあった公園として使われていたその場所。

 森林が生い茂るその中に、その遺跡はあった。


 遺跡と言えば、古めかしい巨石群を彷彿とさせるが、こと、この遺跡については、惨状における旧跡と呼ばれることのほうがこの遺跡には正しい。


 辺りの住民からは緑地公園として、憩いの場所として使われていたその公園。

 散策路を得て中央に、森林に囲まれた何もない空間だったはずのその公園は、突如、地響きと共に燃え盛り。

 黒く焦げたその辺り一面に、ぽつんと一つの大きな一軒家が現れた。

 気づけばあったという表現が正しい、人が住んでいなさそうな一軒家は、周辺一帯に人を入ることを拒む結界でも張られているのか、近づくこと、触れることもできず。


 緑地公園は、不可思議な現象が起きたことにより、第一級災害地域として認定され、人が入ることが規制されたのは一年前。



 そんな、端から見ると、祟りにでもあったかのように不可思議な現象を起こした緑地公園こと遺跡は、住宅街の中にひっそりと佇んでいた。


 今も誰も入ることがなく佇むその家に、ざくざくと腐葉土を踏み抜きながら、二人の足音が静かな緑地公園の中心部に響き、近づいていく。


「……ここから先が、なぜか入れない結界が張られている場所になります」


 男が一人。

 黒い中国風の服を着、黒い鍔の長い帽子を被った男である。

 男が何もない散策路の前で立ち止まり、目の前に手を添えると、不可視の壁が一瞬現れて道を遮った。


「……なるほど。誰も入れないので、遺跡とされているのですね」


 ゆったりと静かな動作で、男と同じように目の前の不可視の壁に触れて感触を確かめる女性が一人。


 この場には似つかわしくない、白で統一されたメイド姿の美女である。


「はい。上空から見て、この先に一軒家があることはわかっていますが……そこへ至る道は入ることができません。昨今の遺跡は、洞窟のようなものが多いのですが、ここだけは特殊なものとなり……」

「他の遺跡は、先に進めない場所も特になく、今までスムーズに事が進んでいたということですか」


 この壁は、何をしても壊れなかった。

 この場所は、許可証協会が最初に見つけた遺跡である。

 何より緑地公園として、誰もが使っていた土地であるからこそ、変異が見つけやすく。

 その分かりやすい異変に、許可証協会は表、裏世界のどこよりも先に封鎖し、中を確認しようと試みた。

 だが、この壁はいくら破壊しようと試みても、壊れることがなく。


「何かを護っているかのように、辺り一帯にこの壁はあります」

「護る……貴方達がいう、兵器を、ですか」


 遺跡郡から出土した、兵器。

 用途の分からない、武器と思われるものよりも、分かりやすいものが出土されたのがある。


 それが、機械兵器だ。


 その機械兵器は、人の形をしているが、形を成す黒いフレームは錆びず、黒いフレームから所々に見え隠れする数多の血管のようなケーブルは、切れることはなく。

 それが人の形を成しているのだから、どれだけの技術が使われているのか、どんな素材で作られているのか、それさえも不明なものだった。


 もしこの兵器が動き出せば、今の人類は圧倒的なその硬さに対抗する手段はなく、また、その硬さから繰り出される一撃は、人類を紙切れのように切り裂き、潰すと推定されており、目下研究対象となっていた。


「ラムダ。あなたはこの先に進めると思いますか?」


 だが、その研究対象も、この目の前で不可視の壁を触るメイドによって、破棄扱いとされることに。


 どちらも、どれだけの力を持ち得た存在なのか、到底計り知れないものだと、中国風の服を着た男――ラムダは思った。


「水原さん……ここから先は、どうやっても進めないのです」

「……やはり、この世界には過ぎたるものですね。さすが御主人様」


 とはいえ、この壁は破れるわけがない。

 たとえ目の前のメイドがいくら強かろうが、ここに機械兵器――ギアがいようが、裏世界が必死になってあらゆる手段を講じても破られることはなかったのだから、ただの人が壊せるわけがない、とラムダは感じていた。


 現に、その不可視の壁から少し離れてゆっくりと女性――水原姫は壁に背を向けた。

 諦めたのかと思い、ラムダも同じように、その先の進めない道に背を向け――


「こんな物、簡単に壊れると言うのに……」


 右腕に触れる左手が、かちっと音を立て。


「跪きなさい『牛刀』」


 呼ばれたソレは、その言葉に喜びに満ち溢れたかのように、真っ白な光を放つ。

 産声のように起動音を上げ、白い光が右腕に白い靄のように周りに纏わりつき、その靄は吸い込まれるかのように右腕に形を成していく。


 周りの光を凝縮しているかのように形作られていくその姿は、一つの大きな角のように、まるで穢れを知らない無垢を感じさせる白い刀身を右腕に現した。


 右腕に、延長上に現れるその穢れなき刀身は、目の前の不可視の壁へと左右に白い一閃を残すと、ゆらりと辺りの景色が歪み、鏡が割れたような音を響かせた。



「さ、行きますよ」

「……」



 姫はすたすたと、白い刀身をその手につけたまま、不可視の壁があって進めなかったその先へと歩き出す。


 ラムダは驚きながら、先程壁があった何もない場所に触れてみるが、先程感じた壁の感触は手に伝わらず。


 あの姫が放った一撃で、世界でも技術力トップであるはずの裏世界が手も足も出なかった壁が消失したことに唖然とする。


「ま、待ってください、水原さん」


 あまりの驚きに、先を進む姫に声をかけてしまう。

 姫はその声に動きを止め、緩やかに優雅に振り返り、ラムダを見つめた。


「……なにか?」

「この先に、何があるのか分かっているのですか」


 この女性は何か知っている。

 その情報は、殺人許可証所持者として――上位所持者としての当たり前の情報なのか、それとも、彼女だけが知る情報なのか、許可証協会に連なる者として、知らなければならないと思った。


「ええ。よく知っていますよ。ギアが総勢五十体ほどおります。それは先に伝えましたが?」

「……もし、水原さんが言っていることが正しいなら、僕達には手に負えませんよ」


 姫が枢機卿に伝えていたことが正しく、そして今この先に、許可証協会が研究対象としていたにも関わらず何か分からない物体――枢機卿が手放すことをすぐに選択した機械兵器ギアがいるのであれば。


「もし、それが起動していたら――」


 ――不可視の壁に護られていたこの場所は異質である。

 それこそ、遺跡としてしっかり機能して護られているのだから、その危険性を考慮すべきだとラムダは判断し、進言した。


「……ああ。それなら、大丈夫ですよ。例え起動していたら……いえ。起動していたほうが助かりますね」


 だが、自分より上位に位置するこのメイドは、まったく危機感を感じていない。


「き、起動していたらって……そんな――」

「動かすのに、時間がかかりますから。動いていないと困りますね」

「そんな――」

「貴方は、この先にあるそれが何なのか、知らないから怖いのでしょう」


 怖い。

 それは図星だった。


 誰もが壊せなかった壁を壊したこのメイドに。

 そのメイドが世界を滅ぼせると言った機械兵器に。

 この先に何があるのか分からない不安に。


 当たり前だと、思った。


「安心しなさい。貴方に何か起きることもなければ、貴方が知らない場所で起きることです。ここで私があれらに会えば、貴方達の知らないところで事が終わることですよ」


 いくら裏世界の。許可証協会の下位所持者だからと言って、世界規模の危険性があるものを、何も知らないで終わるわけがない。


 このメイドの持つ情報は、裏世界や許可証協会が知りえない情報だと、ラムダは理解した。


「……この先にあるのは、ギア」


 まだ信用されていないと感じたのか、姫はこの先のあるそれをラムダに伝えた。


「人が作り出し、人に反旗を翻し、人を滅ぼしかけたアンドロイド」


 人が滅んだことなど、そんな話は聞いたこともない。どこの絵空事かとさえ思うが、現にそれはそこにある。


「その兵器のなかでも、人類に味方し、我等が崇高なる御主人様に付き従う尖兵が、この先にいるものですよ」


 そう、妖艶な笑みを浮かべてラムダに話した姫は、くるりとラムダに背中を向けてまた歩き出した。


「そんなの……あなた達は何をしようと……」


 ラムダは、歩き出した姫の背中を漠然と見ながら、呟く。


 そこに何があるのかは分かる。

 分かるが、そんな危険なものをどうするのか。何に使うのか。


 目の前の不可視の壁を切り裂いたこの目の前のメイドは何者なのか、それを統べる御主人様が何者なのかと、世界規模で考えたほうがいいのではないかと思う、ラムダであった。




刻旅行みたことのある方であれば、この場所どでかい凪様像が飛び立った場所なのだとわかるかと思うのですが……言わないとわかりませんよね^^;


……あ、そうか。

見てないですよねっ☆ 泣こう(´;ω;`)

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