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ライセンス! ~裏世界で生きる少年は、今日も許可証をもって生きていく~  作者: ともはっと
紅蓮となりて

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第463話:紅蓮となりて 11


 その場に起きたのは、地場の乱れであった。

 互いの極限の力は、互いの力がぶつかり合ったその場所で均衡し、拮抗し、その場に大きな穴を開けた。


 真っ黒い、穴である。

 何もかもを、無限に呑み込むかのような、大きな、穴である。


 それは、弓の縮退の色が作り出した穴であったのかもしれない。

 それとも、その空間を削り切り、そして空間そのものを消してしまったことによる、『無』を表し、また現わしていたのかもしれない。



「……ブラックホール」

「虚無であるか」


 互いに思った答えは、言葉は違えど、同じ。

 だが、そこに現れた小規模の縮退が起こしたすべてを飲み込み次元を歪ませるその絶望は、周りのすべてを呑み干していく。


「これは……ははっ、もう二度と使っちゃだめなやつかもしれないね」


 その力に、弓は抗うこともできない。

 なぜならすでにすべての力を使い切ってしまっていたからだ。


「おい、お主。名前を聞いておこう」

「……いや、名乗ったけども」

「聞いておらなんだ。もう一度教えてもらえると助かる」

「……許可証所持者『紅蓮』。青柳弓さ」

「覚えておこう」


 にやりと笑うと、天津は吸い込まれていく弓へ手を差し伸べた。


「我とともに、生きるのであれば、掴め、『紅蓮』青柳弓」

「ははっ、それは無理だ」

「であろうな。やってみただけだ。飲み込まれればひとたまりもあるまい。……最後の手向けだ」


 ゆっくりと暗闇の中へと進んでいく弓へ向け、天津は『紫光』で創り出した槍を向ける。


「我に殺されたほうが、嬉しいであろう」

「そうだね。そうしてくれたほうが嬉しいけど――」






       「――それは」



 「僕が。まだ」



           「あなたに」





 「負けていないと思っているときに、することではないね」






 弓はにやりと笑い、天津へ両手を向ける。

 その笑みに、天津は今目の前にいる男を、まだ自分を楽しませてくれるのだと、終わりだと、勝ったと侮っていたことを恥じる。





「『幌羽ほろばね』」

「『参』の型」






           光。





 人が近づくにつれて縮退と化した丸い球体から溢れるプラズマ。その中へとゆっくりと消えていく弓は。

 最後に光を放った。


 光さえも呑み込み捉えて逃さないと言われるその星の引力、重力にも負けず、その光は天津へ向かう。



 天津の放った紫槍――『幌羽』を包み消し去る光となって。










 その結果が、どうなったのかは弓は知るべくもなく。




 弓は光さえも飲み込む闇の中へと、消えていった。




























 これが、冬達が、唐明大社に墓参りにくる数週間前にあった出来事。


 たった一人で神と戦い、そして神に認められ求められた男の話。




 そして――






「くっ、ははっ! まさか。まさかだ! 我の体に傷をつけるとはっ!」




 冬と樹がやり直す前。

 チヨに傷つけられて、天津は、言った。




     「自分の血を久しぶりに見た」



 と。




 血は見ていない。

 だが、ここで天津が傷を負い、冬たちの前にその姿で現れなかったのは、確かであった。



 弓が放った『参』の型は。



「我の体を半分も消し飛ばすとは! 融解するように溶かして我に致命傷を与えるとはっ! これでは我がやりたいことができぬではないかっ!」




 彼の体を溶かしていたからだ。





「ふふ、はははっ! 激痛、痛み、泣いてしまいそうだ! この痛みを与え、そして我に死を思い起こさせた――『紅蓮』! そなたはまさに血気盛んに燃え上がる炎、我を焼き尽くさんばかりの、名前の通り、『紅蓮』であった!」






 これが、天津が、やり直した冬と樹の前に本体を使って現れることが出来なかった理由。

 やり直した時。冬達が逃げ去った後、負傷したまま神域に現れた理由。




 そして。





 A級許可証所持者『紅蓮』

 青柳弓。


 裏世界で名を馳せる、許可証所持者が行方不明となり、そして、戻ってくることのない旅路へと旅立った、誰にも知られることもない、一幕である。





幕間『紅蓮となりて』











































「……ん?」 



 小鳥のさえずり。目を閉じていても分かる顔に当たる光。

 やがて、僕は目を覚ました。



「……ここは……?」


 空は雲ひとつない、海が広がっているかのような錯覚を思わせる、澄み渡った快晴。

 僕はしばらく空を見上げたまま、大の字に寝転がったまま動かない。

 背中にちくちくと軽い刺激を与える、芝生のように生える名前の知らない雑草たちが心地よかった。


「……あぁ。そうか。そうだった。もう何年も前の話だったね」


 僕は立ち上がり、周りの景色をぐるっと見渡す。

 辺りは何もない草原。ここは大陸のちょうど真ん中に位置している、この大陸の人達が『大草原』と呼んでいる大きな草原だ。

 僕の目が映す草原のはるか遠くに西洋の城のような物体がそびえ立っている。


 それが今日の目的地。

 『北の大陸』の首都、『聖王国クリム』。


「……十日ぶりの町か、早くベッドで眠りたいものだね。……草原の寝心地も捨てたもんじゃないけど、あんな夢で思い出しちゃうと、裏世界が懐かく感じるね」


 誰に言うわけでもなく呟く。

 一人旅だと独り言が多くなる。そろそろまた複数人で旅したいものだ。


「……行きますか……」


 大きく背伸びをして、僕はゆっくりと聖王国に向かって歩き始める。






 ここは、誰も全容も知らない『封樹の森』という森を挟んで『フォールセティ』という隣り合った別の世界を持つ異世界、



        『ノヴェル』



 この『ノヴェル』において、北の大陸ほど住みやすい土地は他にないだろうと僕は思っている。


 南の大陸は世界の均衡を保つと豪語し、他の大陸に最新兵器を輸出する商人達が根城とする『キカイ』の大陸。


 東の大陸は『自治区』と『帝国』が大陸の覇権を争い続ける戦乱の大陸。


 西の大陸は、奴隷を戦わせて催すギャンブルの大陸。他の大陸にも傭兵を派遣する統一国家『トミヤマ』が支配する狂乱の国。


 そして、この『クリム王国』が治める北の大陸は、町から出れば緑豊かな自然に溢れ、彼方まで続くようにも見える草原。冒険の始まりを感じさせるこの大陸は、まさに、誰もが空想に描いた異世界そのものである

 クリム王都の精鋭『黒騎士』が他の大陸に睨みを利かせつつ、中央大陸から溢れでる魔物とも戦い、争いがまったくない大陸だ。


「そういえば。キツネさんがフォールセティに来いって言ってたね。……あの森越えて来いとか言われても、冒険者ギルドでもA級認定以上の魔物が溢れてる森を突っ切れとかあっさり言われても」


 それが、一度一人で越えて来たんだから、もう一度来いって簡単に言われても、今度は複数でいくことになるから尚更困るんだよね。


 と、ため息混じりに脳内で考えてみる。

 相変わらずの人使いの粗さ。とはいえ、いっそのことあちらに永住することもいいかもしれない。なんせ、あっちのほうが世界が広いしね。


「まあ、なるようになれ、か。……ゴブリンに苦戦してた同郷のあの四人組の女性たち、元気かな」


 以前フォールセティに遊びに行ったとき、死に物狂いで戦っていた冒険者を助けたことがあった。


 キツネさんの庇護下にある彼女たちが成長したかまた見てみるのも楽しみだ。


 懐かしい同郷に会えるかもしれないことに、笑みを浮かべていると、どうやら自分は、魔物に餌だと思われたのか、囲まれていた。


 大きな狼。

 キラーウルフと呼ばれる、集団で獲物を狩る、冒険者ギルドの討伐対象の魔物だ。


「君たち。僕を食べようとか、力の差というものを考えたほうがいいと思うよ」


 通じるわけもないものの、とりあえず語りかける。魔物に声を掛けるとは、一人ぼっちすぎて末期ではないだろうか。


「まあ、今日の御飯代くらいにはなるかな。さて、と――」



 しゃん、と、錫杖の輪が重なり立てたかのような音が鳴る。





「――『紅蓮』、いざ」






 彼は今日も、一人、楽しく世界を廻る。







幕間裏幕

『シト様の言うことにゃ逆らえない 〜あー、今度例の御主人様達があちらに遊びに行くときに便乗して一緒に行って呼び出されてもいいようにあちらにいたほうがいいかな 〜』



ここでキリがいいので一旦完結とさせて頂きますm(_ _)m

なお、カクヨム側ではまだ先が公開されておりますが、ストックがないためしばらくこちらはおやすみです。


よろしければ、評価のお星さまなど、モチベーションがあがりますのでよろしくお願いいたしまする〜(≧∀≦)

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