表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライセンス! ~裏世界で生きる少年は、今日も許可証をもって生きていく~  作者: ともはっと
第一部:プロローグ:その許可証の名は
3/474

第1話:その少年の名は

最初のお話から一点、ここからのんびりパートがしばらく続きます。

のんびりお楽しみください。


 とある高等学校の授業中。

 校内体育館。


 そこで体育の授業中に、丸く固いボール――バスケットボールが、何かにぶつかって大きな音を立てたのはつい数十分前のこと。


「あんた、何でこんなに運動音痴なんだよ」

「うぅ~ん。何ででしょう……」


 やる気を一気に削ぐような声を出す張本人は、現在少女に膝枕をしてもらい、額に濡れたハンカチを置かれていた。


 少女は何か言いたいのだろうが、その気の抜けた言葉を聞き、一部分だけ先天的に紫色に変色してしまった前髪を掬いながら言葉を失う。


「それにしても、痛かったですね」

「同意を求めないでくれる? 私はあんなこと、怖くてできないから」


 と、少女は少年のような口調で言う。少年は額に乗ったハンカチを軽く持ち上げ少女を見て苦笑いを浮かべた。


「そうですよね。スズはあんなこと、まずしないですよね」

「そうだね。バスケをしている最中に、ぼけぼけっとしてて、ボールを顔面で受けるとか。すごいよ」

「誉めてくれてありがとうございます」

「けなしてるんだよ」

「……」


 思わず無言になる。


 ついさっきまで、二人は学校の体育館にいたのだ。

 彼はその体育館の半コートでバスケットボールをしていた。

 学年の男子がここぞとばかりに、見学している女生徒に自分の凄さをアピールする青春真っ盛りの中、彼はいつも通り、そこにいるのかいないのか分からない存在感のなさで同級生とバスケットボールをしていた。


 時には渡されるボールを持ってはパスし、時にはシュートするように見せてパスし、ドリブルするようにパスし、いいパス回しのする彼ではあったが、俄然目立ちたくないのか、こそこそと試合に参加していた。

 先程スズと呼ばれた少女に『運動音痴』と言われていたが、それほど悪いわけでもないと思う彼は、パス回しにかけては一流ではないかと自負していた。

 そもそも、シュートしてもブロックされれば終わりだ。ドリブルしている間に取られてしまえばそれでピンチだ。

 であれば、パスをして仲間に渡しておけば自分のミスで何か起きるわけでもない。


 だが、そんな考えが悪かった。


 もう自分の番は来ないだろうし、先生にはある程度のアピールもできた。

 ボールを仲間に渡し、残り時間も間もなく。役目も終えて後は終了のブザーがなるのを待つだけ。

 なんてことを考え、少し端のほうでぼーっとしていた彼に、渡したボールがすぐに戻ってきたのだ。


 そんな自身のパス回しの出来に悦に浸っていた彼を、スズが声を張り上げ危険を知らせて覚醒させた時には時すでに遅し。既に彼の顔にボールがめり込んだ後だった。


 今日はツイていない。

 そんな風に思ってはみたものの、こうやって授業をさぼりながらスズという可愛い少女に膝枕をされている時点でツイているのかもしれない。


 とはいえ、彼にとってこんなことは日常茶飯事だ。

 毎日大嫌いな犬に追いかけられるやら、体育の時間はそんな感じでひょろひょろと……。勉強も、できないわけでもない。


 とんとんと、何にしても平均。ただ若干運が悪くてトラブルに巻き込まれることもしばしば。でも面白いやつだ。


 彼がどんな人物かというと、そんなことを同級生は言うだろう。

 嫌いにはなれないそんなやつ。


 それが、彼だ。


「……ねえ、冬」

「はい?」


 改めて自分の名前を呼ばれ、不思議そうに彼は言葉を返す。


「いつまで私の膝使ってるつもり?」

「ある程度感触確かめてからですかね」

「その言い方キモい」


 冬。

 それが、運動音痴と称された彼の名前だ。


 姓は永遠名とわな永遠名冬とわなふゆである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ