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ライセンス! ~裏世界で生きる少年は、今日も許可証をもって生きていく~  作者: ともはっと
――End Route02:『瑠璃』――

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第153話:『影法師』 1


 樹海。

 そこで、二人の男が争っていた。


 そのうちの一人。

 燕尾服の男が放つ一撃は、腕を振り払うだけで、辺りに暴威と『焔』を撒き散らす。


「先に向かっても地獄。残っても地獄。なんてぼやいでみたものの……」

「逃げればよかったんじゃねーか?」


 焔を纏ったその豪腕が向けられると、その腕の半ば頃に見せびらかすように装着された大砲のような射出口を持つ暗器から、小さな弾が勢いよく飛び出した。


「流石に頑張るって言った手前、そう簡単にあなたを通り抜けさせちゃうのもどうかなって」


 飛び出したそれは、高圧縮されたただの石ころだ。


 その石ころが、銃弾のように射出され、焔を伴い男に襲いかかる。


 避けることはできるが、にこやかに笑顔を絶やさずそれを避け続ける男は、その一撃を避ける度にその笑顔を引きつらせた。

 気のせいか、頭頂部の筆のように結ばれた髪も、へなりと元気なく萎びているようでもあった。


 高圧縮され、当たれば当たったその場所を溶かして貫いていく火石だ。

 躱すだけでその通り道に熱気をばらまくのだから、辺りはその熱気と、火花によって、森林火災が起きている。



「……ふぅん?」

「……なにかな? 『焔の主』」

「いやぁ……避けれるって凄いなって思って。さすが期待のルーキー、『ガンマ』ちゃんだわ」


 自身の放った石ころを避け続けられ、燕尾服の男――『焔の主』は一度距離を置いた。

 筆髪の男――A級殺人許可証所持者『ガンマ』こと遥瑠璃も、ただの一瞬であるかもしれないとはいえ、少しとはいえ休憩が取れることにほっとしながら『焔の主』から距離を置く。


「褒めてるのか貶してるのか分からないね」

「素直に喜べよ。お前、今相手にしているのは、俺、だぜ?」


 互いに、一瞬で近づくことのできる間合い。

 そんな中、不遜な態度で、自らの力を疑わないかのような発言をする『焔の主』。


「俺の『型式砲天かたしきほうてん』を避けれるやつなんて、そんなにいないぜ?」


 かちゃりと。

 自身の服の上から見せびらかすように装着された暗器。

 本来であれば服の下などに隠し持つからこそ暗器なのであるが、それは彼が暗器として扱うわけでなく、ただ、自慢したいがためにそのような装着をしている。


「……『焔帝えんてい』の遺産、かな」

「ご名答」


 その回答に、ガンマは深いため息をつきながら装着されている武器を見る。


 『焔の主』の持つ、暗器。

 これは、裏世界では有名なものであり、主がそれを所有していることも有名な話であった。


 前『焔の主』。万代まんだいキラ。

 通称・『焔帝』。


 裏世界で名を馳せた鍛冶師であり、裏世界で名のある者が持つ武器は全て彼が作ったとさえ言われる程の名工であり名匠である。


 個人でばらばらに活動していた裏世界の鍛冶屋達を、区域を得るまでに発展・組織化した傑物であり、<鍛冶屋組合>の前身組織を作り出したことでも有名な人物だ。


 裏世界の一区画を作り出し、炎を操り鍛冶をするその姿から、『焔帝』と呼称される彼。

 そして、その彼が、裏世界の区画を纏め上げたときにも傍らで持ち続け、彼と共に裏世界を駆けてきたと言われる、裏世界の歴史と共にあった、最高傑作と謡われる、裏世界の重宝。




       『型式砲天』



 その重宝は『焔帝』から現『焔の主』へ数年前に所有者が変わったことからも分かる通り、『焔帝』は、現『焔の主』である、刃渡焔によって殺害されている。

 裏世界で『主』と敵対することは珍しいことでもない。だが、殺害による代替わりは珍しいのである。

 型式の型と同じ名を与えられた『主』の名。

 それは、その『主』が、その『型』の名を得られるほどに極めた称号でもあり、相応しいとその世界が認めた証拠である。


 『焔帝』も、その名が冠する通り、『焔』の型をもっとも得意とし、一度放てば全てを灰燼と化すと形容される程の力を持った男であった。

 その男が晩年において、その力を発揮したのが、鍛冶の世界であるのだが、『焔』の力を使った作品は、力強く、まさに燃え盛る炎を現すとしてコレクターに人気である。


 そんな『主』であるからこそ。

 そう簡単に負けるはずがないことが、代替わりが珍しいといった意味であり、特に『焔帝』という雄雄しい弐つ名を与えられる程の傑物が、そう簡単に負けるはずがなく、また、彼の周りには、<鍛冶屋組合>があるからこそ、組合そのものが相手といっても過言ではなかったはずであった。




「そろそろ、本領を発揮してもらおっかなぁ」




 だが、それさえも、蹴散らすほどの力を持った男が現れた。


 武器コレクターであり、兵器を愛してやまない、裏世界のどこの組織にも属さない『無所属』の男がいきなり現れてその『主』を倒したのだ。



 ――その男が。


「ほれ、こっからがぶっつけ生本番だぞ」

「……変な言い方するね。本当に」

「ははっ。男にそんなことする気はねぇよ。男とヤるなら――」


 今、ガンマの目の前にいる、現『焔の主』刃渡焔はわたりほむらである。



 がきんっと、『焔の主』が装着していたその武器が音を立てた。

 先程のように、辺りの森林火災を起こした小さな小石ではなく。

 内部で、本来の『弾』が装填された音だ。


「――殺し合い、に、かぎるだろ」


 ガンマも、勿論、その武器の正体を知っている。

 名前を知っているからこそ、裏世界で重宝と言われる程に――裏世界で活躍する殺し屋や許可証所持者、情報屋、鍛冶屋の有名どころと同じく名を残すその歪な武器を知っているからこそ、その音がなんだったのか理解した。


 『型式砲天』

 その正体は、『弾倉式杭打ち(パイルバンカー)』である。


 その銃弾である、銃弾にしては酷く歪で大きな『杭』が装填された音である。


 数年前に『焔の主』の入れ替わりによって所有者を変えた凶悪なその武器は。

 ゆっくりと、ガンマへと、今向けられた。



「爆ぜて、吹き飛べ」



 その掛け声と共に、『杭』が、ガンマへ襲いかかる。



杭打ちって、男のロマンだと思います(●´ϖ`●)

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