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ライセンス! ~裏世界で生きる少年は、今日も許可証をもって生きていく~  作者: ともはっと
第四章:A級許可証所持者『シグマ』

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第102話:五人目と枢機卿 2

 ぽちぽちと、シグマは電話越しの相手を嫌そうにしながらも、何度か操作して再度液晶画面を二人の前にスライドさせる。


 雪と枢機卿は、改めて、詳細の出た液晶画面を見た。


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◼️殺人許可証試験結果


■□■□■□■□■□■□■□■□

 受験者No.6999299999

 受験者名:遥瑠璃はるかるり

 受験者評価:第一位

 最終殺害数:316名

 特記:

 ・一次試験

  脱落者の殲滅数:227名

  賞金首の殺害(賞金額:600万円)

 ・二次試験

  脅威度ランク:Cランク

  少数殺し屋組織『揺りかご』の殲滅

  殺害数:89名

  (賞金額:計7800万円

   ※報奨金含む)


 上記の功績により特例発令

 B級殺人許可証を授与


 コードネーム付与

 シリーズナンバー『ガンマ』

■□■□■□■□■□■□■□■□


■□■□■□■□■□■□■□■□

 受験者No.22211111000

 受験者名:立花松たちばなまつ

 受験者評価:第二位

 最終殺害数:151名

 特記:

 ・一次試験

  脱落者の殲滅数:103名

  D級殺人許可証所持者1名の殺害

 ・二次試験

  誘拐犯の殲滅任務

  殲滅数:48名

  報奨金:400万円


 任務達成によりD級殺人許可証を授与


 コードネーム付与

 『フレックルズ』

■□■□■□■□■□■□■□■□


■□■□■□■□■□■□■□■□

 受験者No.444440566688

 受験者名:永遠名冬とわなふゆ

 受験者評価:第三位

 最終殺害数:69名

 特記:

 ・一次試験

  脱落者の殲滅数:62名

  賞金首の殺害(賞金額:600万円)

 ・二次試験

  拉致された生徒の救出

  殺害数:7名

  報奨金:200万円


  ※本首謀者に雇われた裏世界の殺し屋の撃退・殺害も試験内容とする

  脅威度ランク:Bランク

  殺し屋組織『血祭り(カーニバル)』構成員に遭遇

  撃退・殺害に失敗

  特記2:

  任務の失敗の結果、処分を検討するもシグマによる恩情により棄却


 上記により特例発令

 D級殺人許可証を授与


 コードネーム付与

 シリーズナンバー『ラムダ』

■□■□■□■□■□■□■□■□


■□■□■□■□■□■□■□■□

 受験者No.444440566688

 受験者名:永遠名冬とわなふゆ

 受験者評価:第四位


 コードネーム付与

 シリーズナンバー『ラムダ』

■□■□■□■□■□■□■□■□


■□■□■□■□■□■□■□■□

 受験者No.1144422

 受験者名:千古樹せんこいつき

 受験者評価第五位

 最終殺害数:0名


 『縛の主』からの特別申請により受理

 D級殺人許可証を授与


 コードネーム付与

 『大樹』

■□■□■□■□■□■□■□■□


 そこには、しっかりと。


 『ラムダ』が二人、登録されていた。


「ん~。つまりは、片方が冬で、片方が今回の悪者で?」

『改竄した情報を作り――いえ、実際に行った可能性が高いですね。その悪名名高い記録は権限により私に気づかれず。ただし、情報だけは更新されていく……』


 枢機卿が一旦言葉を止めると、『私より高い権限を使って……』と、怒りの表情を浮かべていまだ嫌そうな顔をしながら電話をしているシグマを睨む。


「ほー。それで、今日、その情報を公開した?」

『いえ。恐らくは。自身の情報と、冬の情報をひっくり返したのでしょう。その結果、出来上がるのは』

「悪名しかないラムダの出来上がりー」

『コピーアンドペーストの要領で簡単に書き換えられますからね、電子上の情報など。私が許すはずのない話ではあるのですが、今回は権限が高いからこそ誰にも気づかずに行えたのでしょう』

「す~ちゃんより権限が高いって、『主』くらいじゃない? 『疾の主』は知ってたのかなぁ?」


 枢機卿は『主』とはいえ、自分より権限が高い人物がいたことにむすっとするが、あり得なくもない話であるとも思う。

 ただ、枢機卿には、今回の件に『主』は絡んでいないようにも思えた。


『知っていたと言うより、今日、昇格式の時に『疾の主』が情報を初めて見て、その悪行に当たり前のように剥奪を決行といったとこ――』



「――それは、ちょいとおかしい話だが……分かった。助かる」


 ぴっと。シグマは電話を切ると、大きくため息をついて煙草を吸い始めた。


『何かまた厄介ごとでも?』


 灰皿が机にことっと置かれると、シグマは溜まった灰を落とす。


「んーむ。どこかでずれてるのか、それか、どこか抜けているのかって話だな」


 シグマはぽりぽりと頭を掻きながら、ほわほわと煙の輪っかを作りながら考えを纏めていく。


白土はくとからなんだが……」


 嫌な顔をしながらシグマが話していた相手が誰か聞いて納得する。


 その名は、先日ピュアとシグマを追いかけ回していた情報屋。

 <情報組合>ギルド『愛の狩人(ラブハント)』のギルド長『白土』であったからだ。


 先日追いかけ回された相手からの連絡であればさぞかし嫌だっただろうと、シグマの隣でにやにやと溜飲が下がる枢機卿ではあるが、次の一言で動きを止めてしまう。






「『疾の主』。……数日前に死んでるってよ」






 さらっと。

 シグマは、四院の一人が死亡していることを言った。


「まあ、確かに。言われてみたら用意周到の情報の塊みたいな主が、こんな馬鹿げたことはしなさそうだからな。別人がやったと考える方が妥当ではあるか」

『……は?』


 一呼吸置いて、四院死亡という情報にフリーズしていた枢機卿は言葉を絞り出した。


「えーっと?……あれぇ?」

「いや、あいつは……暇だったり自分の利益になる場合は見境ないから、やりかねない、か? でも、人を陥れるようなことは……」

『そんな考察より、四院が死亡していることがまずいですよ』


 枢機卿はそう叫ぶように言うと、立ち上がった。


『拮抗が崩れているではないですか! 四院は各能力であらゆる人為的厄災を抑えていた存在ですよ……っ』


 あまりにも重要なことに、枢機卿は誰よりも『主』に近づく二人が、本質を理解しているのか問おうとした。


「あー……まあ、そこはそこまで気にしてないな。特に『疾』については、だが」


 『主』には、役目がある。


 『焔』は圧倒的な『個』の力で人を恐怖で抑制し。

 『流』は許可証協会の『量』の力で世界を安定させ。

 『疾』は『情報』の掌握で世界を把握、調整。

 『縛』は『研究』の成果で世界に安寧をもたらす。


 その中で、裏世界、引いては表世界への情報統括をしていた代表が死んでいたと言うのだ。

 驚かない方が無理ではない。


「『縛』も行方が分からないと言う――」

「いや、それこそ機密だからな? 『縛』も世界樹に今もいるってことにしているだろうに。……『疾』は白土が引き継ぐそうだ」

『出来れば『ミドルラビット』の香月美保様になって欲しいところです』

「いや、適任だろ。俺は嬉しくはないが、公平ではある。ただし、奴が代わりを継いでも、今の『ラムダ』を何とかはできないだろうが、な」


 シグマは吸いかけの煙草を灰皿に捨て、液晶画面に触れる。


「やっぱ、やるしかないかね」

「んー? やるのはいいけど、はるはこれからどうするの?」

「俺はここで骨董品売るけど?」

『金にもならないのにですか』

「ほっとけ。十分稼いだし売れなくても一生暮らせる程度の蓄えはある」


 くるりと、椅子を回転させて、二人を見る。


「じゃあ後は冬の方ね。はる。冬はまだ大丈夫そうなの?」

「ああ。もうすぐこちらに抜け出せるようだぞ」

『それなら。フォローのために、合流してきます』


 すくりと立ち上がる二人のうちの一人に。


「お前の方は動けそうなのか? 枢機卿」


 シグマは、目の前にいる、彼女へ声をかけた。


 そこにいるのは――


『ええ。ある程度掌握はできてますよ』


 ――鮮やかな緑の髪を、ギブソンタックに整えた女性だ。


「……やはり凄いな。普通の人に見えるぞ」

『凄いのはこれを作られた方ですよ。おかげで自由に動けますし、このように衣服で間接部を隠せば人そのものですから』


 濃緑を基調とした服に隠れた細部は、人口筋肉の中に最薄高密ケーブルが所狭しと動作の度にのたうつ。


 そこに立つのは、人を精巧に模した、<機械>だ。


『気になるところは、『鎖姫』をモデルとしているところですか』


 くすりと笑う鎖姫と同じそのメイドは、妖艶な笑みも鎖姫そっくりで。


「量産型、なんだろ?」

『らしいですね。昔の『鎖姫』を再現したそうですが、昔を知らないのでなんとも。ただ、このような素晴らしいものを頂けたのは行幸です。製作者には一度お会いして、お礼を言わないといけませんね』


 そう言うと、


『では。また後ほどに』

「次は冬と一緒にね、す~ちゃん」


 その、鎖姫を模したメイド――枢機卿は、雪に丁寧にお辞儀をして、その場を去っていった。


 二人きりになった部屋で、雪はシグマに覆い被さるように抱きつくと、


「でー? ほんとにやるのねー?」


 今から冬を救うために行う作業の再確認をシグマに行った。


「ああ。……ていうか、もうやったけど」

「はやっ!」

「いや、同じことやっただけだぞ?」

「同じこと?」

「そっくりそのまま、上書きしただけだ」


 液晶画面を指差し『春』は、感慨深くその名前をなぞりながら、起こした結果を雪に伝えた。


「『ラムダ』に、『シグマ』をな」

ラムダをシグマへ上書き。

シグマという情報がラムダへと移動されました。

シグマこと春はシグマでなくなり、

ラムダこと冬はシグマへと。


あら。やっとプロローグの回収ですね。

なーんて。

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