追跡
自分の偽物に連れてかれたアリアを探す、ルパート。
しかし、目撃者はいなく途方に暮れているのであった。
時を遡る事、数時間前。
「くそー!いったいどこに連れてかれちまったんだ!!」
俺は必死に走りながら、アリアさんを探していた。
俺の偽物に連れてかれてしまった彼女を探しているが、全く手掛かりがつかめないでいた。
「すみません!俺と手をつないでいる赤髪の女性が歩いてる所、見ませんでしたか!?」
と聞いてみるも、
「はい?」
と、あなた大丈夫ですか?みたいな顔をされるばかりで、事情を説明するも誰も見てないというばかりであった。
質問に関しては何も言わないで欲しい。
これしか言える事が無いのだから。
よりによって、綺麗な女性と手をつないで歩いて行ったという情報しか。
「いったい、どこに?」
本当に見つからない。
歩いて行った方向は(おそらく)あってるはずなのにこんなに目撃者がいないなんておかしいとしか言えなかった。
「訓練所出てから、目撃者がいないという事は歩きはないって事だよな。とすると、何か馬車でも使って逃げたのか?」
(おそらくこれが)
「それが、正解であろう。誰も見ていないという事は、乗物に乗って逃げたしかあるまい。」
(!)
俺の後ろに、訓練所にいたお爺さんがいた。
「お爺さん!?何でここに!?ていうか、ついて来たの??」
「なんか、相当急いでいたからのー、お前さん。心配になって追ってきてしまった。」
「それは、ありがたいけど・・・」
「アリアを探しているんだろ?わしも手伝ってやろう。」
「え?アリアさん知っていたんですか?」
「わしを誰だと思っている。これでも協会5強の者だぞ。」
「えー、ごめんなさい、知りません。」
「え?わしを知らんのか!?おっかしいのー。」
(そうか、確かに協会の会員じゃないと入れないもんな、あそこ。)
「でも、お爺さんも訓練所出たところしか見てないんですよね?」
すると、お爺さんは目を閉じて詠唱を始めだした。
「我は命ずる。連れ去られた者を辿る事を求む。求む者、アリア。その者の姿、我々に示せ。”追跡の目”」
その瞬間、景色が一気に変わり、ぼんやりと何かが見えてきた。
誰かが、檻の中にいる。この人は・・・
「アリアさん!!」
間違いない。ぼんやりとはしているが彼女が捕まっているのが見えた。
「ふむふむ、見つけたの。」
お爺さんが喋る。
「お爺さん、彼女はどこに!?」
「焦るでない。ここは、おそらく地下であろう。しかも、この光景には見覚えがある。ついてきなさい。えと、名前はー・・・」
「あ、ルパート。ルパート・デイヴィソンです。」
「ふむ、ルパートさんか。わしは、ビト。皆からはビト爺と呼ばれてる。気軽にそう呼ぶがよい。」
そして、ビト爺はそう言うとまた詠唱を始め
「では、行こう。我々が求む者の所に連れていけ。‟移動」
それは、一瞬であった。
気づいた瞬間、自分とビト爺は、林の中にいた。
「え?え?」
「さて、到着したの。」
その早さ、1秒。1秒で目的地に移動したのだ。
「凄い、魔法でこんな事できるのか。」
「ほっほ。極めるとな。では、行こう。すぐ、そこじゃ。」
林の中を突き進む。そうしてるうちに、目の前にボロボロの屋敷が見えてきた。
「ここですか?」
「そうじゃ。ここにアリアがいるだろう。」
正に、おんぼろ屋敷。
幽霊でも出そうな感じだ。
「早く、中に入りま・・・」
ビュン!!
俺を目がけて、細長い針が飛んできた。
その直後、ビト爺が土から壁を作り防ぐ。
「!!あ、ありがとうございます。」
「危なかったのー。」
間一髪だった。土の壁は針から俺をしっかりと守っていた。
「これは木魔法か・・・。」
(確か、この世界の魔法には、基本的に4つの魔法の中から1つを持って生まれるとアリアさんが言ってた。火、水、木、土魔法・・・。)
「なんだよー、死ななかったのか。」
男の声。
屋敷の前に黒いスーツ姿の男が立っていた。
「お前さんが、このルパートさんに化けて、アリアを連れて行った男じゃな。」
「ふふ・・・いかにも!私がその男に間違いないですよ。」
ニヤニヤと男は笑いながら言う。
気味が悪い。
「おい!アリアさんを、どこにやった!!」
スーツ姿の男に叫ぶ。
「あー、あなたが次元放浪者ルパートさんですね。知っていますよ。依頼書に書かれてあったので覚えさせてもらいました。」
すると、男は顔を俺に変えた。
「ふむふむ。禁術魔法・・・。お前さんの正体分かった。木魔法使い、百面相の狂人リスキーじゃな。」
「誰ですか?」
俺は、ビト爺に質問する。
「その名の通り、木魔法を使い、百の顔を持つと言われている暗殺者じゃ。協会より残忍な暗殺者だと聞いている。」
「ほぉ、知っていましたか、私の事を。」
「わしを誰だと思っている。」
「誰でしょう?」
「またか!!なぜ!こうも!わしを、知らんのだ!!」
悔しがるビト爺。
どうやら、それほど有名ではないらしい。
「はー、もういい。とりあえず、お前さんの相手、わしがする。」
「そうですか。まぁ、負ける気はありませんが、まだ屋敷の中には行かせませんよ。」
「・・・ふむ。では、ルパートさんや。準備して。」
「え?準備って?」
その瞬間、ビト爺が言う。
「移動」
「な!?あの爺!!」
リスキーは魔法を使おうとするが、それは間に合わない。
一瞬で俺は屋敷の地下に移動したのだ。
「凄いな、ビト爺・・・。」
頭の回転が早い、お爺さんなのに。
「にしても、ここは・・・。」
・・・地下には無数の牢獄があった。
湿っぽい空気。
薄暗い灯り。
嫌な場所だ。
「うう・・・。」
(!)
声がした。
近い!!
走って声の方向に向かう。
いた・・・!
「アリアさん!」
「ええ!?ルパートさん!?どうしてここに!?」
「助けに来た!」
彼女は怪我をしている。
あの、リスキーという男にやられたのだろう。
「ちょっと待って、今檻を開ける!」
「は、はい。でもどうやってここに?」
「ビト爺っていう協会の人が助けてくれたんだ。鍵穴に針金通して・・・よし!開いた!」
「え!ビトおじ様が!?来てるんですか!?ここに!?」
「そうだよ!とりあえず、早くここから出よう!怪我もしてるし!!」
檻から出る。早く、外に出なければ!
「待て。」
声がした。
通路の奥に、誰かがいた。
「誰だ。」
警戒する。
が、一瞬だった。
2人同時に吹き飛ばされた。
「がああ!」「きゃああ!!」
地面にたたきつけられる。
いったい、何をされた?
「リスキーは、しくじったようだが、運が良かったようだ。私が10分早く来て、正解だったようだ。」
またスーツ姿をした男が来た。
こいつも暗殺者、だろうか?
「お初にお目にかかります。挨拶の代わりに、吹き飛ばさせてもらいました。」
「いてて、挨拶の代わりに吹き飛ばすって、なんて、パワーワードなんだ。」
今の吹き飛ばしで左手を痛めた。
アリアさんも、ひるんでしまっている。
「私は、マークと言います。お見知りおきを。」