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ANZA-アンザ- 次元放浪者  作者: 有裏 杉
< 第一章 超大陸グラード編 > 
5/20

時穴とANZA

 集会場での騒動後、すぐにグレンさんが会長室に案内してくれた。


「どうぞ、おかけになって下さい。」


 椅子に座る。


「申し訳ございません。異世界から来て時間もたたないうちに、大事に巻き込んでしまって。えー。お名前を、まだ聞いていませんでしたね。」

「あ、すみません。ルパート・デイヴィソンと言います。」

「なるほど、ルパートさんですね。聞くところによると夜覚の森でアリアが助けてくれたようですね。」

「はい、実は目が覚めた時はまだ日が昇っていたんですが、散策しているうちに、夜になってしまって。そしたら、魔獣?に襲われてたところを助けてもらったわけです。」

「なるほど、なるほど・・・。」


 グレンさんが黙り込む。

 何かを考えている。


「分かりました、ルパートさん。状況はよくわかりました。では、この世界に迷い込んでしまった心当たりが、何かありますか?」

「心当たり・・・?」

「そうです。この世界に迷い込んでしまった原因があるはずです。」

「・・・森で目が覚める前は、遺跡調査をしていたんです。あ、自分は考古学者なんで。そしたら、その遺跡内で文字を見つけて、確かANZA(アンザ)と書かれていたんです。」

「!・・・。A()N()Z()A()・・・ですか。」


 グレンさんが驚いている。


「失礼しました。続けてください。」

「?・・・。はい、分かりました。」


 少し疑問に感じながらも話しを続ける。


「その文字を見つけた瞬間に、いきなり暴風が吹き出し、宙に浮いた穴が現れたんです。柱の後ろで耐え忍んでいたんですが、いきなり柱が崩れて穴に吸い込まれて・・・ん?」


 何かに気づいた。

 いや、思い出した。

 柱が崩れた瞬間に誰かがいた事に。

 あれは・・・サリーだった。


「どうかしましたか?」


 グレンさんが聞いてくる。


「いえ・・・、何でもありません。そう、穴に吸い込まれて、気づいたら森にいたんです。」


 サリーの事も言いたかったが、やめた。

 状況の整理が出来なくなりそうだったから。


「なるほど、ありがとうございます。・・・やはり、間違いありませんでした。」

「間違いない?どういう事ですか?」

「まず、あなたは時穴(ときあな)に吸い込まれてしまったという事です。それも、‟ANZA(アンザ)”詠唱により出来てしまったイレギュラーなものに。」

「どういう事ですか?」


 ”ANZA”詠唱により出来た時穴?

 イレギュラー?

 全く分からない。


「順を追って説明しましょう。まず、時穴から。」

「はい、お願いします。」


 グレンさんが頷く。


「時穴とは、‟多次元を繋ぐ穴”の事です。我々がいる超大陸グラードは‟別次元”にあります。ルパートさんのいた世界は‟表次元”です。他にも‟裏次元”があるのですが、そこには「天国」や「地獄」という世界があります。ここまでは大丈夫ですか?」


「・・・。あの・・・、天国と地獄って存在するんですね。うん、なるほどね。うん、うん。流石、異世界。俺がいる表次元は、何も知らない無知の世界だったようだ。なるほど・・・信じられん。」


 次元世界の話と、天国、地獄の存在により、俺の脳は驚きを隠せなかった。


「信じられないようですが、本当の話です。話を進めさせていただきます。」


(俺の脳は、ついていけるかなぁ・・・。)

 この後の話が正直、不安になった。


「それぞれの次元は、本来繋がっており、時穴を通らなければ次元を超える事はできません。さらに、時穴には‟時魔(じま)”と呼ばれる凶暴な無知生物が存在するため、本来ならば、それぞれの次元を超える事はできません。時魔は容赦なく生物を襲うので。」

「時魔・・・。じゃあ、俺は、どうやって時穴をくぐり抜けてここに来たんだ?」


 そう、そんな凶暴生物がいるのに、なぜ俺は助かったのだろうか?


「分かりません。なぜ他次元の者が無事なのかは全く分かっていません。」


(あー、分かんない事もあるのね。)


「ここからが本題です。時穴は本来、どこに、どうやって、発生するのか全く分からないです。しかし、ある詠唱と、決まった場所にいる事で、()()時穴が生まれる事が分かりました。」

「その詠唱が、A()N()Z()A()。」

「その通りです。近年、古代神殿で見つかった古文書に書かれていた()()()()()()()()。その詠唱がANZAだと。」

「次元を繋ぐ魔法・・・さっき言っていた、決まった場所が古代神殿ですか?」

「ええ。膨大な魔力を備えている大昔の神殿です。現在、このグラードで、時穴発生が確認された場所は1つです。」

「なら、そこに行って時穴を発生させれば帰れる・・・って訳でもないんだよな。その時魔って言うのもいるだろうし、帰れるかも保証できない。リスクがありすぎる・・・。」


 数分、考え込む。

 だが、どうやっても考えが浮かばない。

 とりあえず、ある提案をしてみる。


「その場所に、俺を連れていってくれませんか?」

「・・・。」


 グレンさんは黙り込む。

 やはり、何か問題でもあるか?


「ルパートさん、残念ながらそれはできません。」

「え?なぜですか?」

「その場所は危険地帯にあり神聖な場所でもあります。基本的に、一般人は入る事が許されていません。」

「そんな・・・。」


 沈黙。

 これじゃあ、何にも出来ない。

 帰れる方法が分かるかもしれないのに・・・。


「ですが、ある条件を満たせば向かう事が許されています。」


 グレンさんが口を開く。


「条件?」

「そうです。このフレア協会の会員になればいいのです。ただ、ここに入るには試験を受けて合格しないといけません。これは、あなたに限らず、この世界の人間でも困難な試験です。場合によっては、大怪我をする事になるかもしれません。」

「大怪我・・・。」


 再び考え込む。

 困難・・・。

 この世界の住民でさえ厳しいのか・・・。

 まともに、考古学者として必要な勉強や、ある程度の武術を習っていた俺でも、魔力という未知のモノを持ってない俺には、無理があるかもしれない。


「・・・私は、やめとくのがいいと思います。」


 グレンさんが鋭い目をして言う。


「え?」

「あなたは、魔力を持っていない。まず、その時点で何もする事はできません。それでも、挑めば命の保証はできません。」


 いきなり、冷たい態度になった。

 ・・・、怖い。

 さっき感じた威圧感がヒシヒシと伝わる。


「この世界で生きればいいのではないでしょうか?なに、私が衣食住を確保できる様に手伝いましょう。その方が、あなたにはいいと思いますが。」


 この世界で生きればいい・・・か。

 確かに、それもいいかもしれない。


「諦めてはどうです?その方が‟楽”ですよ。」


 諦めて()に過ごす事ができる。


「さぁ、そうしましょう?」


 ああ、分かった。

 そうしよう。

 この世界で、生きればい・・・いのか・・・?


 いや、違う。


 帰るんだ。


 俺の世界に。


 決めたことがあるんだよ。


 自分で決めた事が。


 父さんを探したいから。


 その為に同じ道を辿ってきたんだよ。


 だから、


「やらせて欲しい。」

「・・・なんと。」


 グレンは、驚く。


「俺は、やらなければならない事があるので。帰らないと。」

「・・・ふふふ。」


 グレンさんが笑い出した。


「アハハ!素晴らしい!いいね!そうこなくては!!」

「へ?」

「すまないな、ルパートさん。君に、魔法を掛けていたんだ。」

「え?ええ!?」


(俺、魔法に掛かっていたのか!!)


「いや、いや、実に素晴らしい。私の魔法を自力で解くとは。恐れ入ったよ!」

「いや、解いたのか、俺が・・・。・・・マジ?」

「マジ、マジ。」


 グレンさんが、ニヤリと笑いながら頷く。


「うん、うん。これは、面白い。ルパートさん!試験参加を認めましょう!!あなたなら、いけるかもしれません!!」

「もしかして何か素質を感じたんですか!?」


 少しウキウキする俺。

 何かしら凄い能力を持ってんのか?と期待する。


「いや、ありません。」

「ズコーーー。」


 すっころぶ。

(無いんかい!!)


「・・・今のところはね。」

「え?」


(今、小声で何か言ってた様な。)


「さて!そうと決まれば、修行をこなさねばね!!アリアーーーーー!!!」

「会長!!、叫びすぎです!」

「はや!」


 勢い良くドアを開けてアリアさんが入って来た。

 こんな早く入って来たっていうことは、ドアの前でスタンバってたのかな?


「ルパートさんに、会員試験の修行をつけてあげなさい。」

「え?ですが、任務が・・」

「そんなの、別にやらせるからいいよ!ハイ!お願いします!!」

「は、はあ。」


(この人、適当だな)


 とまぁ、こんな感じで話が終了した。

超大陸グラードの人々は、自分の住む世界が別次元である事を理解しています。

なぜかは、今後のお話しで説明されるかもですが、簡潔に説明するとそれを解明した人間がいるからです。

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