王龍の子
「いい加減、その子龍を渡してもらいたいところであるが。いかがかね。」
「・・・。」
警戒をするルパート達。
つい先程まで地面に倒れていた、モドックの部下達の惨状を見たら尚更そうなるのも無理はない。
「いったい、何をしたんだ・・魔法、なのか?」
「しかないだろうね。」
ルパートとティームが声を掛け合う。
(身体が溶ける魔法なんてあるのか?)
モドックの魔法が見当もつかない。
膠着が続く。
両者とも警戒をしているのは間違いない。
「はあ、埒が明かない・・渡さないのであれば、こちらから強引にでも奪い取るしかない様だ。」
「くるか・・!」
襲い掛かろうとするモドックに対して迎え撃つ姿勢をとるルパート達。
しかし、モドックが動こうとしたその時であった。
「ガオ!今よ!!」
空からモドックに向かって炎が落ちてくる。
「・・!」
モドックがいた木も含めて周辺の木々が燃え盛る。
凄まじい熱気だ。
「ようやく見つけた!」
女性の声が聞こえた。
上を見上げると、日光に遮られて大きなシルエットが見えた。
「で、でかい・・ドラゴン。」
ルパート達の上空には、それはそれは大きなドラゴンが飛んでいた。
このグラードに来て、アリアさんが連れていたドラゴンより二倍大きい。
そのドラゴンの背中には、女性が一人乗っている。
声の主は彼女で間違いない。
ドラゴンは丁寧に地面に降り立つ。
同時に女性も降りてきた。
「どうだ、罪人め!私達の鉄槌を思い知ったか!」
毛皮の様な分厚い装備をしている若い女性。
黒髪でどこか逞しい雰囲気がある。
「やれやれ、追いつかれてしまったか。」
ユラユラと燃え上がる炎の中からモドックが歩いてくる。
「あと少し遅れていたら焼け死ぬところだったぞ。」
「当然だ、こちらは殺す気でいたんだ。」
「じゃじゃ馬女が。」
先程のドラゴンが放った炎で火傷をしているのが分かる。
「・・しかし、この状況は分が悪いな。・・仕方ない、ひとまず退散するとしよう。」
「また逃げる気か!逃がさないぞ!!ガオ!!」
「グオオオ!」
名前を呼ばれたドラゴンが咆哮を上げる。
再び炎を口から放つ。
地面は大きく燃え盛る。
しかし、何をしたのか。
炎が消えると、モドックの姿は見えなかった。
「くそ!!また逃げたか!!」
悔しがる女性。
どうやら、モドックを追っていた様だ。
「あ、あなたは・・?」
アリアが声をかける。
「あ、すまない。私の名前は、マーサ。この龍は、相棒のガオ。あいつ、モドックを追って王龍の里から来たんだ。あんた達の事は飛んで見ていたよ。」
「ええ!王龍の里から来たのですね!しかも、ドラゴンに乗っていた・・という事は!!ドラゴンライダーさんですか!?」
「そうだよ!お姉さん、見る目があるね!!」
「ありがとうございます!感激です!私は、アリアです!私、女性のドラゴンライダーさんと話すの初めてです!ドラゴンライダーと言えば、伝統的に男性しかなれないと聞いていましたが驚きました!」
「そ、そうなのか。ハハハ。」
アリアの飛びつきにマーサは少し圧倒される。
ここまで熱心なアリアを見るのはルパートも初めてであった。
「あ、あの、アリアさん?」
「あ、そうでした!マーサさん、こちらはルパートさん。お隣にいるのはティーム君。私達は、フレア協会の冒険者パーティー”クロノス・クロス”として旅をしているんです。」
「フレア協会の!だから、モドック相手でも怯えてなかったのか!」
マーサの様子から、王国の外でもフレア協会の名は轟いている事を感じるルパート。
しかし、アリアが言っていた言葉に質問が浮かぶ。
「アリアさん、ドラゴンライダーって?それに、王龍の里って?」
「ドラゴンライダーとは、その言葉の意味通り!ドラゴンに跨り、大空と大地を駆け巡る戦士達の事です!しかも、ドラゴンライダーは由緒ある職業なので、あらゆるドラゴンが住む王龍の里でしかなる事が出来ず伝統的に男性が多いのです!!」
「な、なるほど。ドラゴンライダー凄いですね。」
「ですよね!」
ルパートも淡々と喋り続けるアリアの説明に若干押される。
さては、彼女、ドラゴン好きとみた。
「しかもです、王龍の里は広大な面積のあるドラゴンの保護区を持っています。なので、里に入る事は厳しく、手続きなしに領地に入るとドラゴンライダーに撃退されてしまうのです。」
「こ、こわ!!」
徹底的な管理体制に怯える。
下手したら旅の途中で足を踏み込んでいたかもしれない。
そんな考えがよぎる。
だが、理解はしやすかった。
ゲームなどでも出てくる単語ではあったし。
「キュルルル・・。」
細高い鳴き声が聞こえた。
「ああ、ごめんよ。」
ティームが背中に背負っている袋を開ける。
中から子龍が顔を出す。
「そこに入れていたのか。」
「あいつらに怯えていたから袋の中に入れて落ち着かせてたんだ。」
もぞもぞと動く子龍。
「そ、その子。ど、どこで?」
「ん?ああ、俺の頭に卵が降ってきて、さっき孵ったばかりなんだ。そしたら、急に襲われるし。いったい何が何だか。」
「・・・!!」
ティームの言葉に固まるマーサ。
「そういえば、お前の名前をまだつけてなかったな。うーん、渦模様の卵から生まれたから・・ウズタマ!お前の名前は、ウズタマ!」
「キュルルル!!」
名前を貰った事が分かったのか、それとも、ティームの元気な様子を感じ取ったのか。
”ウズタマ”と名付けられた子龍は喜びの鳴き声をあげる。
「う、渦模様の卵!!しかも、さっき孵ったばかり!?」
「さっきからブツブツ何言ってんだ、お前。」
「ティーム君、口調が悪いですよ。」
「うっ・・さ、先程から何を話しているのですか、あなた様は。」
(何だ、その口調・・。)
ルパートは、思わず心の中でツッコミをいれてしまった。
だが、言われてみれば先程からマーサの様子はおかしかった。
「何かあったんですか?」
試しに聞いてみる。
すると、スタスタと早足でティームとウズタマの方へ近づく。
「間違いない!」
「な、なんだよ。」
「この子は、王龍の子!!」
「えっ!?」「えっ!!」
アリアとティームが口をそろえて驚いた。
「お、王龍・・?って何??」
肝心のルパートは、マーサから発された謎の言葉に疑問を浮かべる。
どうやら、凄い子を拾って(正しくは降ってきただが)しまった様だ。
お読みいただき、ありがとうございました!
王龍とは、いったい何ぞや!?
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