無駄な時間
「・・へ?」
ミランは、一連の光景を見て立ち尽くしている。
「い、いたたた・・。」
「はっ!!だ、だんちょー!!箱の中身!!どっか飛んで行っちゃったよお!?」
「や、やってくれましたねえ・・あなたの仕業ですか、グレン会長殿?」
少し苦笑いをしながらグレンを睨むラファー。
「本当に余計な事をしてくれたね・・確かに、今のは私が仕掛けた罠だ。」
「その様子だと、あなた自身、あれが何処に行ったか分からなそうですねえ。」
「もしもの事を考えて、その箱に緊急脱出の魔法をかけておいたが・・幸いにも発揮されて安心したよ。どこに行ったかは、私にも分からないのが難点だが。」
「・・フフフ、フハハハハハ!!」
高らかな笑い声が周囲に鳴り響く。
その笑い声は、どこかしら怒りが滲んでいる様な力強さがあった。
「いいでしょう!ええ、いいでしょう!!あなたの用意周到さが一歩上であった!!悔しいが、無駄な時間を過ごしてしまった!!」
「どうするのー、だんちょー。」
「ああ、口惜しい。ここは一先ず退散しましょう、魔竜も倒された様ですしね。ただ、協会トップを弱らせる事が出来たのは及第点と言ったところ。」
ニヤリとグレンを見下すラファー。
空中に再び時穴が現れる。
「その発言から、この永続魔法は君を殺さない限り発揮され続けるな?」
「ご名答。その呪いは、あなたか私が生きている限り蝕み続けます。」
「・・やってくれたね。」
「それは、お互い様でしょう。」
ラファーとミランの身体は、宙に浮かび上がり時穴へと入っていく。
「今回は痛み分けです。が!次は、完っ璧にっ!・・我々がリードします、争奪戦ですよお。」
そう言葉を言い残して、時穴と共に襲撃者達は消えていった。
それと同時に、グレンの身体は自然と動ける様になった。
「無駄な時間を過ごす事になるのは、こちらもなんだが。・・というわけで、皆には箱の中身を探す旅に出てもらう。」
場面は変わってフレア協会本部。
グレンの一連の話を聞いていた協会の会員一同が啞然としている。
(む、無理矢理すぎる・・!!)
突然の強制的な旅命令に一同の意見は言わずとも満場一致であった。
「会長!いくら何でも急すぎます!!」
「しょうがないだろう。教団が襲いかかってくるなんて誰が予想していた。」
「箱の中身は一体何なんですか!?」
「それは教えられないけど、見つけたら分かるよ・・たぶん。」
「たぶんって言った!この人、適当だ!!」
次々、質問と野次が飛び交いまくる。
前日に起きた暗殺教団の襲撃。
入会試験に加えて多くの出来事が起きた。
新たな会員に加えて、あの場にいなかった会員も当然いるため状況整理がついていない者が多いのだ。
「分かった、分かった。皆、そう騒がないで。何も一人で旅に出ろという訳じゃない。各々パーティーを組んでもらって、しっかり準備してから旅に出て欲しいんだ。もちろん、資金はしっかり出すよ。」
「なら、それを先に言わんかい。口足らず過ぎるわい。」
グレンに対して、ツッコミをするビト。
この場には俺を含めて当事者である協会五強のメンバーなど揃っていた。
「会長、質問があります。」
「君は確か、ミズキ君か。」
「はい。教団の襲撃で、城の方でも負傷者が多数いると聞いています。そうなると、国を守るためにも協会の人間が多数残る必要があると思われますが。」
「うん、良い質問だ。さすがは、ビトのお孫さんだね。それに関して結果から言うと、問題はない。なぜなら、私も含めて選りすぐりの会員を残すつもりではあるからね。」
「なるほど、それなら安心しました。」
「うん、ありがとう。他にも質問がある者がいたら後で・・」
グレンが言い切る前に、ハイハイハイハイ!!と続々と声や手が上がり始めた。
「報酬はどうなっているんですか!」
「ヴァルナ様とペアを組んでもよろしいのでしょうか!?」
「今日のおかずは何でしょうか!!」
質問の嵐。
グレンは丁寧に一人一人に対処している。
あれがトップに立つという事なのだろう、とルパートは思った。
「ルパートさん。」
騒がしい中、アリアが声をかけてきた。
「アリアさん、何ですか?」
「あ、あのですね。え、えっと。」
「・・?」
何か言いたげであるのかモジモジしている。
「わ、私と!」
「僕とパーティーを組んで欲しいのだ!」
「・・ん?」
気づくと、ルパートとアリアの間に黒い服を着た少年が立っていた。
中学生くらいだろうか、背が小さい。
「き、君もフレア協会の会員・・?」
「し、失礼な!こう見えても、成人しているのだぞ!」
「あ、ごめんなさい。」
唐突な乱入者に面食らう二人。
いったい、この子は何なのだ。




