会員証授与
「以上で、試験参加者の合否結果の発表を終了とする。」
グレンは、総勢九十四名の試験参加者の合否結果を発表し終えた。
試験合格者は、六十二名であった。
多からず少なからずと言ったところであろう。
「次に、合格者諸君には、フレア協会入会試験の会員証を授与する。」
グレンは右腕を前に出し手を開くと、合格者の胸元がぼんやりと光りだした。
「う、うお!」
唐突な胸元の発光に驚くルパート。
光りは徐々に収縮していき形を成していく。
すると、フレア協会のマークである”炎を吐く龍”のバッジが現れた。
「おお、凄い!これがフレア協会の会員証か!」
授与された会員証に喜びを見せるルパート。
他の合格者達も喜びと興奮に溢れている。
「やったね、ルパート君!今日から僕らも協会会員だ。」
「そうだな!これで、遺跡に行けるぞ。」
「遺跡?」
ルパートの発言した”遺跡”という単語に反応するミズキ。
「そうだった、俺が協会会員になりたい理由を教えてなかったな。実は・・。」
「合格者諸君、静粛に。」
話をグレンに遮られるルパート。
それは当然だ。
今は、大切な式の真っ最中なのだから。
「・・静かになったね。では、改めて。諸君、試験合格おめでとう。観客席の皆様方も長らく試験者を見守り頂きありがとうございます。果敢に挑み、協会会員の証を手にした彼らに拍手をお願い致します。」
グレンの言葉を聞き、コロシアム中に盛大な拍手の音が響き渡る。
・・・おめでとうー!・・・
・・・面白かったぞー!・・・
・・・これから頑張れー!・・・
観客の声が胸に響き渡る。
言葉では説明しづらい何か熱いモノを感じる。
「皆様、盛大な拍手と激励、ありがとうございます。では、協会を統括する私から一言。」
コホン、と咳き込み発言の準備をするグレン。
「この試験を以て、君たちはフレア協会会員だ。この瞬間から、このフレイア王国の秩序を守り、この超大陸グラードの謎を探究する勇者が君達だ。この先、多くの冒険、多くの仲間との出会いと喜福の体験を得るだろう。・・しかし、時は無惨にも君達に試練を与えるかもしれない。・・出会った仲間との別れ。襲い掛かる脅威。自らに絶望する時が来るかもしれない。・・しかし、どんな事があっても諦めるな。自分の目的を忘れるな。君達が選んだ選択を投げ出すな。我々は、どんな試練があっても諦めてはならない。我々は、自分の選択に責任と誇りを抱かなければならない。そうして行動した先に皆の善に繋がるのだ!・・この言葉を、君達の心とバッジに刻みつけて欲しい。」
グレンの熱意ある言葉に胸を打たれる。
ルパートは、思わず胸元にあるバッジを右手で握りしめた。
彼の右手には、汗が滲み出ていた。
ただ、ただ、元のいる世界に帰るために協会会員になろうと考えていたが、同時に大きな責任を抱え込む事となったからだ。
せめて、この世界にいる間は。
自分のため、誰かのために手を伸ばす者であろうと決意した。
「では、これを以て本年のフレア協会入会試験を終了とする。」
グレンの締めの言葉が終わると、観客から拍手が起きた。
フレア協会を統括するグレンに対する民衆からの大きな敬意を払う行為である事は明白であった。
試験参加者も同時に拍手をしている。
コロシアムにいる人間が、グレンという人間の偉大さを感じていた。
その直後であった。
「素晴らしい言葉じゃあないかあ。さすがは、フレア協会のボスだあ。」
響き渡る怪しげな声。
「な、なんだあれ!!」
周囲の人間が空を見上げる。
そこには、見覚えのある穴があった。
穴の中は七色にうごめいている。
間違いない、あれは。
「時穴・・」
ルパートは小さな声で呟く。
唐突な出来事に目が釘付けになっている。
いったい、なぜ?
すると、時穴から人間が出てきた。
拍手をしている。
黒スーツにピエロの様な仮面を着けている人間。
仮面の表情は、唐突な出来事に驚くコロシアム中の者を嘲笑う様な表情をしている。
「おお、おお!皆さん、目を丸くして驚いてくれて嬉しいよお。くっくくく。」
遠くから見ても下品と言える拍手をしている。
笑いながら手を広げてオーバー気味に。
「おっとっと、笑って自己紹介が遅れてしまったあ。初めまして、ご集まりの皆さん。そして・・次元放浪者のルパートさん。」
「え!」
唐突な名指しに驚く。
なんだ、あいつは。
「私、暗殺教団”死神”の団長、ラファーと申します。以後、お見知りおきを。」




