始まり
初めての小説執筆です。気軽に読んでくれれば嬉しいです。
「ルパート、落ち着いて聞いて。」
どうしたの?お母さん。
なんで、悲しそうなの?
「お父さんが・・・昨日から、行方不明らしいわ。」
母親の言ったその二言は、十二歳の俺には受け入れなかった。
「は?」
「今、政府の人や警察が動いてくれている。」
「大丈夫よ。きっと見つかる。」
頭が真っ白になった。
こんなの初めてだった。
何も喋れなかった。
何も考えれなかった。
ただ、立っているだけ。
数分後、声を出した。
「生きてるの?」
「生きてるわよ。絶対に。」
母親は、そう言っていたが顔が妙にひきつっている。
それは、俺だってそうだ。
自分も酷い顔になっているに違いない。
ただ、祈ることしかできなかった。
ただ、ただ、ひたすらに。
「父さん。」・・・
声が聞こえる。
・・・「まもなく、エジプト、カイロ国際空港です。後、十分ほどで到着です。」
「んぁ?」
目が覚める。
眠い。もうちょっと寝たい。
でも、あの夢はまた見たくない。
「 起きるか。」
眠気を覚ますために、コーヒーを飲む。
・・・ぬるい。
それはそうだ。
寝る前に飲んでから長時間経っているに決まっている。
現在、俺、ルパート・ジングウ教授は、エジプトに向かい飛行機に搭乗中。
なぜエジプトに?
って?そりゃあ、遺跡調査だ。
最近、世界各地で同年代の遺跡が何個も見つかっている。
それは別に良いのだが、重要なのは、その後。
なんと、その遺跡が、地球上最古の 謎の遺跡 と関係しているということだ。
謎の遺跡とは、十年前に発見された遺跡だ。
年代的に、人類が狩りや採集をしていた新石器時代より、遥か昔に作られたと考えられる遺跡と判明。
発見当時は、大騒ぎだったらしい。
が、困った事に、人が暮らしていた痕跡はおろか、土器のようなものも見つからない。
ただ、分かったことは、遺跡のとある場所に地下があった事だけ。
当時、遺跡発掘調査をしていた考古学者含む調査員十一人がそれを見つけたそうだ。
しかし、発見から一時間後。
突如、地下を発見した調査員十一人が、その地下で行方不明となった。
なぜ行方不明となったのかは誰にも分からなかった。
1時間前まではいたはずだった十一人が突如消えるなど、不気味だ。
その中には俺の父親も・・・。
この話は、やめとこう。
とにかく、全てが謎に包まれてる遺跡というわけだ。
まぁ、謎の遺跡なんて言ってるが名称はある。
発見された地名にそってシンラ遺跡と呼ばれてる。
・・・「到着致しました。荷物を、お忘れなくお持ちください」
到着したようだ。
リュックサックをもって飛行機から出る。
「暑い・・・。」
熱気が俺を襲う。
暑いのは大の苦手だ。
空港でキャリーバッグを受け取り外に出る。
「ルパート・ジングウ教授ですか?」
若い男性が声をかけてきた。
「そうですが、ひょっとして、あなたはカイロ大学の方ですか?」
「はい。サリー・コナーといいます。お迎えに参りました。」
流暢に英語で話してくる。
完璧な英語だ。
「上手ですね、英語。ここまで流暢に話せる海外の方は初めてです。しかも、俺と同じ位の年齢で。」
ちなみに、だ。
俺は、英語、スペイン語、日本語、ドイツ語を喋る事が出来る。
「車で、大学までご案内しようと思いますが、発掘調査責任者のカーン教授が、遺跡に行っています。教授は大学に行っても、遺跡にそのまま来てもらっても構わないと言われてました。どうしますか?」
(うわ、スルーされたよ。聞こえなかったのかなぁ?まぁ、それはともかく。)
「なら、サヘル遺跡に。すぐにでもこの目で調査をしたい。」
「分かりました。ではすぐに行きましょう。教授がお待ちしています。」
テキパキと俺の荷物をトランクに入れていく。
真面目君か。
ちょっと、苦手なタイプだ。
・・・車で何時間か掛けて移動する。
最初は街があったりしたが、今は一面荒野。
「ジングウ教授は若いというのに、もう博士号を取得していらっしゃるのですね。」
いきなり、サリーが声をかけてきた。
「え?ああ、そうなんですよ。この歳で博士号とる奴なんて、そうそう見ないですもんね。」
「そんな事はありません。若い時から偉業をなす方は、今までにたくさんいますよ。教授もその一人に値する方だと思います。」
(なんか、俺の事を凄い評価してくれている。)
「そんな偉業なんてしているつもりないですけどね。サリーさんも、若いのにすご」
「サヘル遺跡に着きました。」
(はい、会話終了ー。)
車から降りる。荒野の中でたくさんの人が発掘調査をしている。みんな汗をかきながら。
「ジングウ教授、こちらです。」
せかせかと案内される。
(もうちょっと、発掘現場見たいんだけど。)
と思いながらも渋々ついていく。
テントの中に入った。すると、
「ルパート君じゃないかー。久しぶりだなー。」
「お久しぶりです、カーン教授。」
まるまるっとした、このおじちゃん教授こそ、カイロ大学カーン・コバート名誉教授だ。
この人は、父親の大の親友であったため、時々会うことがあって、小さいころから可愛いがってもらっていた。
「それにしても、もう教授なのかー。親父とは全く似つかない位、優秀になったなー。おじさん嬉しいぞ。」
「いえいえ。カーン教授が元気そうで何よりです。」
「よせよせ、教授などつけなくていい。カーンでいい。初めて会ったわけではないのだから。」
「そんなわけには・・・。」
「昔のように、カーンおじちゃんでもいいんだぞ。わは、わは、わははっは。」
(もう60超えてるらしいけど、この感じだとまだ大丈夫そうだな。)
「教授、そろそろ。」
とサリーが声を掛ける。
「そうだな。世間話はこれぐらいにしとこう。」
「早速だがついてきてくれ、ルパート君。サリーはここで待っていてくれ。」
「分かりました、教授。」
カーン教授の案内で遺跡に案内されながら、発掘調査の様子も見る。
住居だろうか?
もう全体が見えてるものもあれば、埋まっているものもある。
一生懸命、発掘員が土を掘って発掘をしている。
数分間歩いてサヘル遺跡についた。
外見は何のつくりもない神殿だ。
こんな遺跡が荒野にあったとは。
人が一人入れるぐらいの入口を経由して中に入る。
中は、壁のいたるところに絵が描かれている。
鳥の顔の人間や犬の顔の人間、そして普通の人間が描かれている。
他にも、宙に浮く大地や炎が吹き上がる大地の絵。
他にも色々と描かれている。
数分間、壁画を静かに見つめる。
「ルパート君、こっちに来てくれ。」
カーン教授に呼ばれる。教授は奥の祭壇にいた。
「何です?なんかえらくでかい碑石がありますね。」
「そうなんだ。この碑石の表面に文字が書かれているが、読めんのだよ。」
「文字?」
祭壇の階段を上がる。
「読めるかね?」
碑石の文字を確認する。しかし、
「この文字初めて見るな。」
分からない。
今までたくさんの古代文字などを見てきたが、どの文字にも当てはまらない。
「やはり、君でも無理そうか。」
「ええ、どの文字にも当てはまらない。もしかしたら未知の言語である可能性が高いですね。」
「ふむ。未知の言語か。解読は不可能に近いかのぉ。」
「いずれにせよ、もう少し調べる必要がありそうです。まだ、ここだけに文字があるとは限らない。」
「なるほど。なら人手が必要になるか?」
「そうですね、5人程、呼んでもらえれば嬉しいです。」
「よし、分かった。少し、ここで待っていてくれ。すぐに、呼んでこよう。」
カーン教授が外へ出ていく。
「さて、どうするかねぇ。」
今、遺跡の中には自分だけ。
(とりあえず、また壁画を見てみるか。)
と思い、ぐるーっと、一周して壁画を鑑賞する。
今度は、新しい絵を見た。
黒い翼と二つの角をもつ人間、白い翼をもつ人間、そして眩い光を出す何か。
壁画を、ゆっくり見ていく。
ゆっくり、じっくり、・・・ん?
(何だろう、あれ?)
壁に文字があった。
小さいがしっかり書かれているが、あれは・・・
「は?どういう事だ?」
そこには確かにあった。
書かれてるはずがない文字。
英語が。
「この遺跡って、英語ができるより遥か前の年代だよな?おかしいだろ?どういう事?」
混乱する。
ありえない。
学者の俺は、困惑する。
(誰かのいたずら?いや、そんな事するやついない。そもそも、地面から高さがあり過ぎる。)
自問自答。
考えれば考えるほど分からない。
「いったい?・・・なんて書いてあるんだよ・・・。」
結論をだせず、とりあえず文字を読む。
「A,N,Z,A・・・ANZA?」
声を出したその時だった。
強風が吹く。
だんだん強くなる。
「おわああああああああああ!」
吹き飛ばされる。
強い!いや、これはハリケーン並みだぞ!!
必死に地面に張り付く。
そうしていないと、また吹き飛ばされる。
「とにかく柱の方へ・・・くっ・・・。」
風を受けながら、柱の裏側に身を隠す。
「なんだよこれ、どうなってるん・・・・・・は?」
入口に何かを見た。
今まで見たこともないものだった。
あれが何かは分からない。
だが、1つ言えることがある。
あれは・・・穴だ。
明らかに、あの穴から強風が出てる。
いや、出ているというより、これは吸い込んでるの方が合っているかもしれない。
「どうすれば、どうすればいいんだよ!これ!!」
ただ、身を柱に隠すしかなかった。
助けを待つ以外方法がない。
(でも、ここで待っているわけには・・・)
その時だった。
「しぶといな。」
柱の前から声が聞こえた。男の声だった。聞き覚えがあった。
「いい加減に吸い込まれろ。」
“ バキバキ!!! ”
上で何か音がした。ゆっくり上を見る。
「は?まじかよ・・・」
柱に大きな亀裂がはいる。
亀裂は徐々に広がり、そして
「勘弁してくれよーーーーーーー!」
と本音が漏れる。
柱は壊れ、穴に吸い込まれていく。
柱が壊れた瞬間、人影をみた。
暗くてハッキリしなかったが、見覚えがあった。
「サ・・リー・・・?」
記憶はここで途絶えた。