対戦相手
大声で騒いでしまった(ほとんど俺じゃなくて、ラパン)だが、係員には厳重注意で終わった。
参加停止を言われそうにもなったが、ミズキのおかげで事なきを得た。
「ダメだよ~、大声だしちゃあ。」
「すまない。でも、ほんとに驚いたんだ。まさか、師匠のお孫さんだったとは。」
師匠のビトからは、
「こう見えても、孫がいるぞ!」
とは聞いていたが、ここで会うことになるとは思ってもいなかった。
師匠、何も言ってなかったし。
「じいちゃんは、何かと驚きたせたがりだからね。」
「あ、分かる。修行の時とか、突然「かくれんぼを始める!」って言い出して。」
「ハハ。索敵魔法の練習だね。僕も夜にやったよ。」
「そう。暗い屋敷で、かくれんぼとかイジメだよ。見つけたと思ったらトラップで・・・。」
そんな、平和な話しをしていた時だった。
「試験参加者は、奥の大扉前へ集まる様に!!繰り返す!!試験参加者は、奥の大扉前へ集まる様に!!」
係員のアナウンスが響き渡る。
周りの参加者が、ぞろぞろと奥へ向かいだす。
「どうやら、試験が始まる様だね。行こうか。」
「ああ。」
奥の大扉へ向かうと、既に多くの参加者が群をなしていた。
俺らは最後尾辺りにいる様だ。
「集まった様だな。」
扉前にいる係員の中から、黒布で顔を隠した男が前に出る。
「皆の者、よく集まってくれた。私の名前は、ロア。フレア協会入会試験の運営を任されている者だ。」
待機所全体に響き渡る低い声。
拡声器も無しで、声を響かせるなんて。
これも、魔法だろうか。
「今から、入会試験の対戦相手を決める。勝敗にこだわらないが、全力で挑む事を推奨する。」
空中にスクリーンが現れる。
「今回の参加者は、九十四人か。偶数、分けやすいな。・・・では、各々の対戦相手を映す。」
名前が表示される。
九十四人もいると、探すのが大変だ。
「ルパート君、見つけたよ。一番左上。」
ミズキが教えてくれる。
どれどれ。
|ルパート・ジングウ ー ラパン|
(さっきの奴かよ!!)
運命とは皮肉なものだ・・・。
「お互い、戦うことにならなくて良かったね。」
「あ、そうだな。でも、俺は、ラパンとだよ・・・。嫌だな。」
「彼は、強いけど恐れることないよ。」
「なんで?」
「ルパート君の方が、断然強いだろうからね。」
ミズキは、ルパートの目を真っ直ぐ見て言う。
何も曇りもない表情で、疑うことなど一切無い雰囲気。
「ハッキリ言うんだな。何で、そう言い切れる?師匠から、何か言われてる?」
「うーん・・・言われてはないけど。」
「けど?」
「けど、君の魔力は、光に満ち溢れているから分かりやすいんだ。」
「え?」
(俺の魔法を知っている?)
「師匠から、俺の魔法が何かを聞いているのか?」
「聞いてないよ。じいちゃんは、何に関しても平等である事を一番とするからね。知っているでしょ?」
「それは、知っているけど。」
「試験前に僕が知る事は、平等ではないからね。僕が揺さぶっても言わなかったし。」
「じゃあ、どうして知っている?」
「それは、」
「ルパート・ジングウ、前に出るように。」
名前を呼ばれた。
前には、あのラパンが既にいる。
「左上から試験を始めていく、円滑に進めるため協力してくれたまえ。」
どうやら、ミズキと話している間に説明を聞きそびれた様だ。
「ルパート君、話しはまた後で。いってらっしゃい。」
ミズキに見送られて、人混みを搔き分け対戦相手が待つ大扉の前へ向かう。
「そろったな。・・・では、両選手。ついてきたまえ。」
ーーーガガガ・・ガコン!!!ーーー
大扉が開き始める。
大扉の奥には、左と右で別れているのが分かる。
完全に開ききった状態になってから、ロアが歩き始める。
ルパートとラパンは、言われた通り、ロアの後を追う。
「まさか、相手が異世界人とはな。くくく。」
ラパンが話しかけてくる。
「十秒でけりをつけてやる。覚悟してろ。」
もう、こいつの言う事には無視する事にした。
いちいち聞いていると虫唾が走る。
歩き続けると、ほどなくして別れ道に来た。
左と右にそれぞれ別れた道の先には、上へと続いている階段があった。
「私は、ここまでの引率となる。お互いの最善を尽くせる様に祈っている。」
何も表情を変えずに話し終わる。
このロアという人には、感情があるのか疑問を抱いてしまう。
「・・・では、ルパート・ジングウは、左へ。ラパンは、右へ。」
「ちょっと待って下さい。この先は、どうなっているんですか?」
「左右それぞれの階段を上がりきれ。コロシアム闘技場内へ続く階段となっている。」
(なるほど、そういう仕組みになっているのか。)
「そんな事も知らねえとは、さすが異世界人だな。ハハハ!俺は、先に上で待っているぜ。」
ラパンは、ズカズカと右の道へ歩いて行く。
ムカつく野郎だ。
「俺も行くか。」
左の道へ進み始める。
「武運を、次元放浪者よ・・・。」
ルパートには聞こえない声で、ロアは喋る。
奥へ進むルパートを横目に、ロアは待機所へ戻っていく。
フレア協会入会試験の運営は、ロアが全統括しています。
普段は、フレア協会運営の指揮を執っています。




