目覚め
突然現れた、二人目の暗殺者マークによって攻撃されたルパートとアリア。
アリアはルパートだけでも逃がそうと奮闘するが・・・。
事態は最悪だ。
また新たな暗殺者が来た。
「いや、いや。まさか、こんな事になってるなど思いもしませんでしたよ。なぜ、ターゲットが檻から出ているのか。実に困ったものだ。ねー?次元放浪者さん?」
人差し指をくねくねしながら、俺に指さす。
「まぁ、協会の5強である‟ 智賢のビト ”が来ているなら致し方無いですがね。今もリスキーは、さぞ大変でしょうね。」
そんな独り言を言いながら、ゆっくりと、こちらに近づいて来る。
俺の隣には、アリアさんがいるが、さっきの吹き飛ばしで完全にひるんでしまっている。
俺もそのせいで、左手を痛めた。
気分は最悪、状況も最悪。
いったいどうすればいいのか。
「ル・・パート・・・さん・・・。」
(!)
「アリアさん!無理して喋らないで!」
「逃げ・・て。」
「え?」
(「逃げて」だと・・・?)
「そんな訳にはいかない!君だけでも・・・」
「私が時間を稼ぐ・・・から。だから・・逃げて。」
「っつ!!でも!!」
アリアさんが体を起こす。
ボロボロの体なのに、頭を打っているのに、・・・それでも立ち上がる。
「ほう?」
暗殺者マークが止まる。
「いったいどうするのです?あなた、もうボロボロでしょうに。」
笑いながら、マークは喋りを続ける。
「もう安らかに、行かせてあげますから、無理はしないでください。くくく・・私の胸が苦しくなってしまいます。」
笑う。
「あなたがもう何もしなければ、丁寧に、手際よく、天国へ旅立つことができるのですよ?さぁ、だから無駄な事をせず・・」
「うるさい!!」
アリアさんが叫ぶ。
「なぜ、あなたは容易く、そんな残忍な事を喋れるんですか?」
「それはですねー・・」
「なぜ、あなたは、そう笑いながら人を傷つける事ができるのですか?」
「ふむ・・・」
「なぜ、あなたは、人を殺す事に・・・。楽しみを持っているのですか?」
彼女は、泣きながら喋り続ける。
「私は・・・。私は!この世界に生まれた人間です!!どんな事があっても!私は生きなければいけない!!生きたいのです!!!」
「・・・。」
マークは黙り、聞き続ける。
「こんな体でも、・・・こんな私でも!・・私は誰かの為になっているのです。だから!私はあなたに立ち向かう!ルパートさんには傷一つつかせない!!」
「アリアさん・・・。」
何も言葉をかける事が出来ない。
俺は、ただ彼女を見続けるしか出来なかった。
「ふふ・・・。」
マークが口を開く。
「あっはははははははははははは・・・。はぁ・・・。・・・笑わせるなよ。」
笑い声から、冷たい声に変わる。
「私は、殺し屋です。人を殺す事を専門とした‟人間"です。残念ながら、あなた方の様に、必死に生きようとしているわけではありません。死ぬ時は死ぬ。生きる時は生きる。それが続いて結局、現状生きて、今に至るのです。」
俄然とした態度をとり喋る。
「殺し屋にとって、唯一の楽しみは、殺しです。それが好きだから、こうしてあなた達と向かい合っているのです。」
無情な言葉を淡々と喋る。
「だから、おかしくて仕方がない!私は必死に生きようとしているあなた達、人間が!可笑しくて仕方がない!!私は、殺しという、娯楽を、楽しむのです!!」
意味が分からない。
こんな人間がいたとは。
「狂ってる・・・。」
アリアさんが悲しい顔をして言う。
俺も同じ気持ちだ。
あんなやつに殺されるなんて・・・絶対嫌だ。
「もういいです。あなたとは分かち合う事は出来ないようです。」
アリアさんは、攻撃の姿勢を構える。
「別に、あなた達と分かち合う事はしたくありません。なぜなら・・・」
マークも構える。
「退屈なのだから。」
戦闘が始まる。
アリアさんは、得意の火魔法を駆使して対抗する。
一方、マークはそれを問題なく受け流しながら持っているナイフを荒く、俊敏にアリアさんに振り回す。
「今のうちに!!逃げて!!」
アリアさんが叫ぶ。
狭い道をアリアさんの援護で守られながら、上への階段へと向かう。
が、その時だった。
目の前に、突然槍が現れた。
空気でできた槍。
一瞬の出来事。
それが俺の腹目がけて一直線に飛んできた。
俺はなすすべもなく、刺された・・・はずだった。
痛みがない、当たり前だ。
俺には刺さらなかった。
彼女が代わりに受けたのだから。
「アリアさん!!!」
アリアさんを抱える。
刺された、腹から血がじわじわと流れる。
「くそ!!なんで!!なんで俺を!!」
血が止まらない。手で必死に腹を抑えるが止まることはない。
「自ら刺さりにいくとは愚かだな。」
マークを睨む。
「お前!なんてことを!!」
怒りに溢れている。
こんな感情が震えるのは、初めてだった。
「どうか、頼む・・・!。止まってくれ・・・!」
「ははは。無駄ですよ、腹部に刺さったのです。治癒魔法をかけない限り血は止まりません。」
「そんな!そんな!!」
笑いながら奴は近づく。
「さぁ、フィナーレです。大人しく二人とも安らかに眠りなさい。」
どうか。
どうか、頼む。
この人を助ける力を。
俺を助けてくれたこの人を守る力を。
「頼む、頼む、頼む・・・。」
「ル・・パート・・さん。」
「アリアさん!」
意識がある!だが、弱弱しい!
「ごめん!!逃げる俺をかばって・・・!!」
「私を・・・置いて。・・逃げて・・。」
それが彼女の最後の言葉。
その言葉を聞いた後、彼女は静かに目を閉じた。
「ようやくいきましたか。」
目の前に、マークが立っている。
「愚かで面白い女でした。さぁ、次はあなたの番です!」
その言葉を聞いた時。
「愚か?」
「面白い?」
俺は囁いた。
「ふざけんな。なにが、愚かだ。なにが、面白いだ!!」
叫ぶ。
「何も分からず、この世界に迷い込んでしまった俺を助けてくれた人だ。優しく、強く、美しい。この人をてめえが侮辱していいはずがないんだ!!」
叫ぶ。
「今度は、俺が助ける!俺が、守る!!だから!!力を!俺に!この人を守れる力をーーー!」
無我夢中で叫ぶ俺の思考にある言葉が響いた。
‟「 目覚めよ、時の選光者よ 」”
暗い地下に、眩い光が溢れる。
一瞬の出来事であったが、すぐ理解できた。
どうやら、これが俺に与えられた魔力のようだ。
「がああ!!ま、眩しい!!」
マークがよろける。
「これが、俺の力・・・。」
俺から光が溢れていた。
眩しい。
だけど、俺には、眩しいなんて思わなかった。
「アリアさん。」
アリアさんの傷ついた腹を触る。
すると、意識が研ぎ澄まされ、俺の目に無数の血管が見えた。
「これは!」
そうか。
これで傷ついた場所を探して。
「見つけた。」
傷ついた血管。
その一つ一つに、意識を集中させ、自分の光の魔力を流す。
すると、どうだろう。
腹部の傷が、光始め、血が止まった。
「これでよし。後は・・・」
よろめきながら目を開けようとするマークに、俺は目を移す。
気づけば、俺から溢れる眩い光は、消えていた。
「畜生、見えづらい!こんな事、聞いてないぞ!!」
うじうじ言っているマークの方へ歩いて向かう。
「それは、残念だ。俺にはお前がハッキリ見える。」
「近づくな!!風の斬撃!!」
マークは、斬撃を繰り出す。
普段の俺なら、何もする事は出来ないだろう。
だが、この時の俺は、集中していた。
無意識に、身体と、光に包まれるナイフを前に出して、斬撃ごと暗殺者の首を切り裂き、一気に通過。
「がはっ!!」
マークが倒れる。
首から血が流れ始める。
「があああああああ!!!」
床でマークは、もがき叫ぶ。
「お前は、いずれこうなると分かってたんだろ?自身が体験した娯楽の分だけ苦しめ。」
俺はそう言い残し、アリアさんの方へ歩いていき、抱える。
そして、上へと繋ぐ階段に向かって行った。
後ろから聞こえるマークの叫び声は、少しずつ遠くなっていった。




